業種別の平均年収は、どの統計で見るかで数字が変わります。令和7年賃金構造基本統計調査から年収の目安を出すと、最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の755.4万円、最も低いのは宿泊業,飲食サービス業の402.6万円です。国税庁の令和7年分民間給与実態統計調査では、同じ2つの業種が854.4万円と275.8万円でした。

順位の上と下はおおむね同じですが、額は大きく違います。数字の違いは、誰を数えているか(パートや役員を含むか)、いつの給与か、何を含むかから生まれます。業種の比べ方を誤らないよう、2つの統計の違いと、有価証券報告書の平均年間給与と比べるときの注意をまとめます。

2つの統計と有価証券報告書の違い

項目賃金構造基本統計調査(厚生労働省)民間給与実態統計調査(国税庁)有価証券報告書の平均年間給与
最新の版令和7年(2026年3月24日公表)令和7年分各社の事業年度ごと
対象常用労働者10人以上の民間の事業所で働く労働者。この記事の数字はフルタイムの「一般労働者」民間の事業所で1年を通じて勤務した給与所得者。パート・アルバイトや役員も含む提出会社の従業員。臨時従業員は含まない
給与の期間2025年6月分の月の給与と、2024年1年間の賞与2025年1月〜12月の1年間の支給総額その会社の事業年度の1年間
年収の出し方公表は月の額。年収の目安は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算給料・手当と賞与の合計(通勤手当などの非課税分は含まない)賞与を含む。残業代などの扱いは会社の注記で確かめる
細かく分けられる項目年齢・学歴・男女・会社の規模・職種・都道府県男女・年齢・勤続年数・事業所や企業の規模平均年齢・平均勤続年数

賃金構造基本統計調査の「賃金」は、月の所定内給与額(残業代などを除いた基本の給与)です。年収の目安は、この調査の公表値を使って計算したもので、国が公表している年収ではありません。

業種別の平均年収を2つの統計で並べる

業種賃金構造基本統計調査 年収の目安同 所定内給与額(月)民間給与実態統計調査 平均給与
電気・ガス・熱供給・水道業755.4万円444.0千円854.4万円
金融業,保険業723.9万円437.0千円725.6万円
学術研究,専門・技術サービス業714.1万円440.3千円567.9万円(教育,学習支援業と合わせた値)
情報通信業668.4万円406.0千円681.9万円
鉱業,採石業,砂利採取業648.4万円388.3千円393.7万円(農林水産業と合わせた値)
教育,学習支援業598.0万円379.4千円(学術研究などと合わせて567.9万円)
建設業592.1万円366.3千円590.3万円
不動産業,物品賃貸業592.1万円360.1千円512.5万円
卸売業,小売業562.0万円349.1千円413.4万円
製造業553.6万円330.0千円573.0万円
複合サービス事業516.5万円319.0千円509.5万円
運輸業,郵便業506.1万円312.7千円482.5万円
医療,福祉478.8万円315.7千円424.0万円
生活関連サービス業,娯楽業431.1万円295.2千円(サービス業に含まれる)
サービス業(他に分類されないもの)426.1万円284.9千円401.7万円(国税庁の「サービス業」)
宿泊業,飲食サービス業402.6万円277.2千円275.8万円
全体545.6万円340.6千円486.6万円

(賃金構造基本統計調査は男女計・一般労働者。年収の目安の高い順。民間給与実態統計調査は1年を通じて勤務した給与所得者で、表の千円の値を万円に直しています。業種の分け方は2つの統計で一部違います)

数字が食い違う3つの理由

1. パートや役員を含むかどうか

民間給与実態統計調査は、パート・アルバイトなど正社員以外の人や、会社の役員も含めた平均です。令和7年分では、正社員(正職員)の平均給与が559万円、正社員以外が210万円でした。宿泊業,飲食サービス業や卸売業,小売業のように短い時間で働く人が多い業種では、国税庁の平均が大きく下がります。宿泊業,飲食サービス業では、賃金構造基本統計調査の年収の目安との差が127万円近くあります。

一方、賃金構造基本統計調査の一般労働者は、短時間労働者を除いたフルタイムの人です。労働基準法上の労働者が対象で、代表権や業務執行権を持つ役員は含まれません。

2. 給与の期間と出し方

国税庁の平均給与は、2025年の1年間に実際に支払われた総額です。賃金構造基本統計調査の年収の目安は、2025年6月の1か月の給与を12倍し、前の年(2024年)の賞与を足したものです。賃上げが続いている時期は、6月の月給には今年の昇給が入り、賞与は前の年のままなので、年の途中の変化の入り方が違います。

3. 規模の小さい事業所や、含まれる手当

賃金構造基本統計調査は常用労働者10人以上の事業所が対象で、それより小さい事業所は入りません。国税庁の調査は1〜9人の事業所も含みます。また、賃金構造基本統計調査の月の給与には通勤手当が含まれ、国税庁の平均給与には通勤手当などの非課税分が含まれません。

電気・ガス・熱供給・水道業のように国税庁の数字のほうが高い業種もあります。この業種は国税庁の調査で平均勤続年数が17.7年と全業種の中で長く、平均賞与も163.8万円と多い業種で、1年を通じて勤めた人だけを数える国税庁の集計のほうが、高い水準が出やすいと考えられます。

有価証券報告書の平均年間給与と比べるとき

上場している会社などは、有価証券報告書の「従業員の状況」に平均年間給与を書いています。転職先の候補の数字を業種の平均と比べるときは、次の点を押さえます。

  • 比べる物差しをそろえる:有価証券報告書の数字は臨時従業員を含まない従業員の平均です。パートを含む国税庁の業種の平均より、正社員の平均(令和7年分は559万円)や、賃金構造基本統計調査の一般労働者の数字のほうが近い物差しになります
  • 年齢をそろえる:会社の平均年齢が業種の平均より高ければ、平均年間給与も高く出ます。賃金構造基本統計調査は年齢別の数字があるので、会社の平均年齢に近い年齢の数字と比べます
  • 提出会社だけの数字か確かめる:持株会社の場合、数字が少人数の本社だけのものになっていることがあります

有価証券報告書の読み方そのものは、有価証券報告書の平均年収の読み方と、数字に何が含まれるかを注記から確かめる平均年間給与の意味に詳しくまとめています。

業種を比べる手順

  1. 使う統計を1つ決める:フルタイムの人の水準なら賃金構造基本統計調査、パートや役員も含めた総額なら民間給与実態統計調査。違う統計の数字を並べて順位を付けない
  2. 今の業種と移りたい業種の数字を並べる:同じ統計の中で、2つの業種の差を見ます
  3. 年齢と会社の規模をそろえる:賃金構造基本統計調査は、業種ごとに年齢別・規模別の表があります。自分の年齢に近い数字で比べます
  4. 応募先の数字を確かめる:求人票の給与、前年度の賞与の実績、上場している会社なら有価証券報告書の平均年間給与と平均年齢を見ます
  5. 転職で実際に変わる幅を知る:業種の平均の差は、転職した人の給与の変化とは別の数字です。転職で年収が上がる割合で、転職した人の実際の変化を確かめます

業種ごとに働き方の数字も比べたいときは、Mixumの会社名鑑のランキングを業種で絞れます。たとえば情報通信業で有給休暇の取得率が高い会社のように、会社が公表している数字を業種ごとに一覧できます。

読み違えやすい点

  • 違う統計のランキングを混ぜる:賃金構造基本統計調査の年収の目安と国税庁の平均給与は、対象も期間も違います。同じ表の中で比べます
  • 業種の平均を職種の給与と思う:同じ業種でも、営業・技術・事務などの職種で給与は違います。職種で見るときは、職種別の表を使います
  • 中央値と取り違える:どちらの業種別の数字も平均です。高い給与の人に引き上げられ、真ん中の人の給与より高く出ます
  • 業種の分け方の違いを見落とす:国税庁の調査は学術研究と教育を1つにまとめ、「サービス業」の範囲も広く取っています
  • 年の違う数字を並べる:有価証券報告書は会社の決算期ごと、統計は調査年ごとです。何年の数字かをそろえます

まとめ

  • 業種別の平均年収は、賃金構造基本統計調査と民間給与実態統計調査で額が大きく違う
  • 賃金構造基本統計調査の年収の目安(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与)は、電気・ガス755.4万円から宿泊・飲食402.6万円まで
  • 国税庁の令和7年分の平均給与は、電気・ガス854.4万円から宿泊・飲食275.8万円まで。パートや役員を含む
  • 差は、対象(パート・役員・小さな事業所)、給与の期間、含む手当の違いから生まれる
  • 有価証券報告書の平均年間給与と比べるときは、正社員やフルタイムの人の数字を物差しにし、年齢をそろえる

参考資料