中小企業のボーナスは、大企業より少なく、払わない会社も混ざります。厚生労働省の毎月勤労統計調査では、2025年の年末賞与は、賞与を支給した従業員5人以上の事業所で1人平均424,889円、30人以上の事業所で490,695円でした。賃金構造基本統計調査では、従業員10〜99人の企業で働く一般労働者の年間の賞与は65万3,300円で、1,000人以上の企業(140万5,200円)の半分ほどです。
ただし、3つの統計は「支給した会社だけの平均」か「受け取らなかった人も含めた平均」かが違い、同じ物差しではありません。この記事では、統計ごとの数字と前提を並べ、求人票の賞与の欄を確かめる順番を整理します。
毎月勤労統計調査|2025年の夏と年末の賞与
毎月勤労統計調査は、賞与を支給した事業所について、常用労働者1人あたりの平均を毎年2回まとめています。規模は会社全体ではなく事業所(支店や工場の単位)の人数で分けています。パートタイム労働者も含みます。
| 項目 | 2025年 年末(5人以上) | 2025年 年末(30人以上) | 2025年 夏季(5人以上) | 2025年 夏季(30人以上) |
|---|---|---|---|---|
| 1人平均の支給額 | 424,889円(前年比2.8%増) | 490,695円(同2.6%増) | 426,337円(同2.9%増) | 496,889円(同3.8%増) |
| 支給した事業所の割合 | 76.5% | 92.8% | 73.4% | 91.2% |
| 支給月数 | 1.08か月 | 1.22か月 | 1.02か月 | 1.17か月 |
1人平均は、支給した事業所の常用労働者全員で割った値です。その事業所で受け取らなかった人も分母に入ります。支給月数は、事業所ごとに「賞与÷きまって支給する給与」を出して平均したものです。
5人以上の事業所の平均は30人以上より低く、支給した事業所の割合は年末で16.3ポイント低くなっています。5人以上の数字には30人以上の事業所も含まれるので、5〜29人の事業所だけを取り出すと、差はさらに開くと読めます。
業種による差も大きく、2025年の年末賞与(5人以上)では、製造業571,854円、卸売業・小売業364,408円、医療・福祉314,546円、飲食サービス業等90,551円でした。飲食サービス業等は支給した事業所の割合も51.3%にとどまります。
賃金構造基本統計調査|企業規模ごとの年間の賞与
賃金構造基本統計調査(令和7年)は、常用労働者10人以上の民営事業所で働く一般労働者(短時間労働者を除く)について、前年1年間(2024年)の「年間賞与その他特別給与額」を集計しています。この値は労働者1人あたりの平均で、賞与を受け取らなかった人も含めて割っています。規模は企業全体の常用労働者数です。
| 企業規模 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与その他特別給与額 | 年収の目安 | 賞与がきまって支給する給与の何か月分か |
|---|---|---|---|---|
| 計 | 370.5千円 | 1,009.6千円 | 545.6万円 | 2.72か月分 |
| 1,000人以上 | 424.1千円 | 1,405.2千円 | 649.4万円 | 3.31か月分 |
| 100〜999人 | 355.4千円 | 919.2千円 | 518.4万円 | 2.59か月分 |
| 10〜99人 | 325.7千円 | 653.3千円 | 456.2万円 | 2.01か月分 |
年収の目安は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で出した値です。きまって支給する現金給与額は残業代などの超過労働給与を含み、それを除いた所定内給与額とは別の値です。右の列は、表の値を割り算した目安です。月給は2025年6月分、賞与は2024年1年間の値なので、時点はそろっていません。
10〜99人の企業の賞与は、1,000人以上の企業の46%ほどです。月給の差(77%ほど)より、賞与の差のほうが大きく開いています。年齢が上がるほど差は広がり、35〜39歳では1,000人以上が1,404.0千円、10〜99人が705.8千円、45〜49歳では1,723.7千円と791.5千円でした。
東京都の中小企業の賃金事情|支給した会社の平均と中央値
東京都の「中小企業の賃金事情」(令和7年)は、都内の従業員10〜299人の企業を対象にした調査です。641社が回答し、過去1年間(2024年7月〜2025年6月)に賞与を支給した企業は80.0%、支給しなかった企業は15.6%でした。
| 従業員の規模 | 支給した企業の平均支給額(年間) | 支給しなかった企業の割合 |
|---|---|---|
| 調査産業計 | 981,862円 | 15.6% |
| 10〜49人 | 846,493円 | 19.2% |
| 50〜99人 | 1,092,184円 | 9.1% |
| 100〜299人 | 1,407,504円 | 9.9% |
調査産業計の内訳は、2024年の年末一時金が428,585円、2025年の夏季一時金が437,526円、それ以外の賞与が115,751円です。支給した企業の中央値は808,371円で、平均値の981,862円より17万円ほど低くなっています。金額の大きい会社が平均を押し上げているので、「ふつうの中小企業」の感覚に近いのは中央値のほうです。
労働組合のある企業の平均は1,310,644円、ない企業は940,881円でした。
賞与の決まり方|規定と査定
賞与を払うかどうか、いくら払うかは、会社ごとの決まりによります。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の解説では、臨時の賃金等(退職手当を除く)は、会社で定めをする場合には就業規則に書かなければならない「相対的必要記載事項」とされています(労働基準法第89条)。就業規則は、労働者に周知しなければなりません(同法第106条第1項)。
東京都の調査では、賞与の規定の中身は次のとおりでした。
| 賞与の規定 | 企業の割合 |
|---|---|
| 支給時期のみ定めている | 67.9% |
| 支給時期及び額を定めている | 12.0% |
| 賞与規定なし | 17.6% |
額まで決めている会社は1割ほどで、多くの会社は業績や査定でその年の額を決めています。同じ年齢・同じ職階の人の間で査定による差があるかを聞いた質問(回答した499社)では、「10%未満」が32.3%、「10%以上20%未満」が23.8%、「査定等を行っていないため格差なし」が21.0%でした。
求人票と面接で確かめる順番
求人票の賞与の欄は、次の順に確かめます。
- 「前年度実績」か「規定」か:「賞与 年2回 計○か月分(前年度実績)」は過去の結果で、その年の額の約束ではありません。
- 何の何か月分か:基本給の○か月分なのか、手当を含む月給の○か月分なのかで額が変わります。
- 入社1年目の扱い:算定期間の途中で入った人の最初の賞与をどう計算するかを確かめます。
- 支給の条件:支給日に在籍していることなど、受け取るための条件が定められているかを確かめます。
- 書面で確かめる:内定の後に、労働条件通知書と就業規則(賃金規程)の賞与の条文を見せてもらいます。
求人票全体の読み方は求人票の見方、年収の交渉で賞与を含めた額を話す時期は転職の年収交渉で整理しています。
賞与は勤続や年齢とともに増える傾向があるので、長く勤める人が多い会社かどうかもあわせて見ておくと判断しやすくなります。正社員の平均継続勤務年数は、Mixumの会社名鑑の平均勤続年数が長い会社で一覧できます。厚生労働省「しょくばらぼ」で会社が公表している数字をMixumの会社名鑑で集計(2026年10月1日時点。公表値は2026年9月18日に取り込み)すると、2,755社の中央値は11.9年でした。公表している会社だけの値で、業種全体の平均ではありません。
読み違えやすい点
- 「支給した会社の平均」と「全員の平均」を混ぜない:毎月勤労統計調査と東京都の調査は、支給した事業所・企業だけの平均です。払わない会社は数字に入っていません。賃金構造基本統計調査は、受け取らなかった人も含めた平均です。
- 事業所の規模と企業の規模は別:毎月勤労統計調査の「5人以上」は事業所の人数です。大企業の小さな支店も含まれます。
- 平均と中央値は違う:東京都の調査では、平均981,862円に対して中央値は808,371円でした。
- パートを含むかどうか:毎月勤労統計調査はパートタイム労働者を含み、賃金構造基本統計調査は一般労働者だけです。
- 東京都の数字は東京の値:都内の企業だけの調査で、全国の中小企業の平均ではありません。
中小企業がどの範囲の会社を指すかは大企業・中堅・中小企業の違いで、上場していない会社の情報の集め方は中小企業の情報の調べ方で説明しています。
支払われないときの相談先
就業規則や賃金規程で額や計算の方法が決まっているのに支払われない、支給日の後なのに入金がないといったときは、都道府県労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーで無料で相談できます。労働基準法の違反が疑われるときは、労働基準監督署にも相談できます。就業規則の写し、雇用契約書や労働条件通知書、給与明細を手元に用意しておきます。
まとめ
- 2025年の年末賞与は、支給した5人以上の事業所で1人平均424,889円、30人以上で490,695円(毎月勤労統計調査)
- 支給した事業所の割合は、5人以上で76.5%、30人以上で92.8%。小さい事業所ほど払わない会社が混ざる
- 企業規模別の年間の賞与は、10〜99人で653.3千円、1,000人以上で1,405.2千円(賃金構造基本統計調査、2024年分)
- 東京都の10〜299人の企業では、支給した企業の平均981,862円、中央値808,371円
- 額まで規定で決めている会社は12.0%。求人票の「○か月分」は前年度の実績として読む
- 支払われないときは、総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談できる
参考資料
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和8年2月分結果速報等」(2025年の年末賞与の特別集計を掲載)
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年9月分結果速報等」(2025年の夏季賞与の特別集計を掲載)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査 令和7年 一般労働者 産業大分類」
- 東京都「中小企業の賃金事情(令和7年版)」の調査結果(報道発表)
- 東京都産業労働局「中小企業の賃金事情 令和7年版」
- 厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
- 厚生労働省「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」(会社名鑑の集計に使った公表値は2026年9月18日時点)