「3年は辞めるな」には、守らないと不利になる法律や制度上の決まりはありません。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(2025年10月24日公表)では、令和4年(2022年)3月に大学を卒業して就職した人の 33.8%が、3 年以内に最初の職場を離れています。3 年たたずに辞めることは、例外的な選択ではありません。

一方で、「待てば変わる悩み」を抱えたまま急いで辞めると、次の職場で同じことが起きます。決めるときに見るのは年数ではなく、辞めたい理由が、時間や社内での働きかけで変わるものかどうかです。あわせて、雇用保険や有給休暇のように、実際に勤続の長さで扱いが変わる区切りを確かめておきます。

「3年」の数字が表しているもの

3 年以内の離職率は、1 年目がいちばん高い

厚生労働省は毎年、新しく学校を卒業して就職した人のうち、就職後 3 年以内に離職した人の割合を公表しています。事業所がハローワークに出す雇用保険の加入の届出から、新卒で就職した人を推定し、その人たちがいつ離職したかを数えたものです。最新の令和4年3月卒業者の結果は次のとおりです。

学歴3 年以内の離職率うち 1 年目2 年目3 年目
大学33.8%12.1%11.9%9.9%
高校37.9%17.9%11.5%8.5%
短大等44.5%19.3%13.7%11.5%

(1 年目〜3 年目の内訳は同資料の別紙から。四捨五入のため合計と一致しないことがあります)

大学卒の 3 年以内の離職率は、平成31年3月卒の 31.5%から令和4年3月卒の 33.8%まで、直近 4 年分はいずれも 3 割台です。「3 人に 1 人が 3 年以内に辞める」状態が続いています。この数字は会社の規模や業種で大きく違い、会社ごとの数字の調べ方は早く辞める人が多い会社の見分け方で詳しく扱っています。

「3年」は統計の区切りで、制度の区切りではない

「3 年以内」は、この統計が新卒の定着を見るために置いている区切りです。3 年勤めると法律上の扱いが変わるわけではありません。実際に勤続の長さで扱いが変わるのは、次のような区切りです。

区切り内容根拠
6 か月継続勤務し、全労働日の 8 割以上出勤すると、年次有給休暇が 10 日与えられる労働基準法第39条
12 か月離職の日以前 2 年間に雇用保険の被保険者期間が通算 12 か月以上あると、基本手当(いわゆる失業手当)の受給要件を満たす雇用保険(ハローワークの案内)
会社ごと退職金の最低勤続年数、賞与の算定期間や支給日の在籍の扱い各社の就業規則・退職金規程

年数の目安が気になるなら、「3 年」という言葉ではなく、この表の区切りのどこにいるかを確かめるほうが役に立ちます。

辞めたい理由には、待てば変わるものと変わらないものがある

早く辞める人ほど「人間関係」を理由に挙げている

厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査」(2024年9月公表)では、初めて勤務した会社をやめた理由(3 つまで回答)は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%、「人間関係がよくなかった」26.4%、「賃金の条件がよくなかった」21.8%、「仕事が自分に合わない」21.7%の順でした。

勤続期間別に見ると、1 年未満でやめた人では「人間関係がよくなかった」が最も多く、1 年〜10 年未満では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が最も多くなっています。

ここから分かるのは、辞める理由には性質の違うものが混ざっているということです。特定の上司との関係は、異動や配置替えで変わることがあります。一方、会社全体の労働時間や休日の設定は、1 人が何年待っても変わりにくいものです。「3 年は辞めるな」という助言は、この 2 種類を区別せずに、一律に「待て」と言ってしまうところに無理があります。

理由ごとの見分け方

辞めたい理由を書き出し、次の表のどの行に当たるかを確かめてください。

辞めたい理由待つと変わるか確かめ方
仕事を覚えきれない、ついていけない変わりうる半年前と比べて、1 人でできる業務が増えているか
特定の上司・先輩との関係異動で変わりうる異動の時期と、希望を出す手続きがあるか
希望と違う部署・職種に配属された制度しだい部署の異動や職種の転換の実例が社内にあるか
残業が多い、休みが取れない変わりにくい自分の部署だけか、会社全体の実績か(会社が公表する月平均の残業時間など)
賃金が低い見通せる賃金規程や昇給の仕組み、数年上の先輩の等級
会社の将来が不安自分では変えられない業績の公表資料、事業の縮小や撤退の有無
違法な扱い、ハラスメント、心身の不調待つ理由にならない相談先と医療機関(下の「落とし穴」を参照)

「変わりうる」の行が多いなら、期限を決めて社内で試す価値があります。「変わりにくい」「変えられない」の行が多いなら、年数を待つ理由は弱くなります。

辞めるかどうかを決める手順

1. 理由を書き出して、上の表で分ける

「なんとなく合わない」のままでは判断できません。「月の残業が 50 時間を超える月が半年で 4 回あった」「配属から 1 年、希望の業務に一度も関われていない」のように、事実として書きます。

2. 社内で変えられるかを、期限を決めて 1 回試す

「変わりうる」理由があるなら、上司や人事に具体的に相談します。「辞めたい」ではなく「〇〇の業務を担当したい」「〇〇の働き方を見直したい」と、望む状態を伝えます。そして「次の人事異動の時期まで」「3 か月後の評価面談まで」のように、待つ期限を自分で決めます。期限のない我慢は、年数だけが増えていく原因になります。

3. 勤続の区切りと、お金の見通しを確かめる

辞める時期を決める前に、次を確かめます。

  • 雇用保険の被保険者期間。 基本手当は、原則として離職の日以前 2 年間に被保険者期間が通算 12 か月以上必要です(倒産・解雇などによる特定受給資格者と、特定理由離職者は、離職の日以前 1 年間に 6 か月以上)。前の会社を辞めてから 1 年以内に次の会社で雇用保険に加入し、その間に基本手当などを受け取っていなければ、前の会社の期間も通算されます。
  • 自己都合で辞めた場合の給付制限。 厚生労働省の案内では、退職日が 2025年4月1日以降なら、受給手続きの日から 7 日たった翌日から原則 1 か月は基本手当を受け取れません(退職日からさかのぼって 5 年間に、正当な理由のない自己都合退職で 2 回以上受給資格の決定を受けている場合は 3 か月)。
  • 有給休暇。 転職すると、次の会社では原則として勤続がゼロから数え直しになり、入社から 6 か月たつまで年次有給休暇が与えられないことがあります。残っている日数と、使う時期を考えておきます。
  • 会社の規程。 退職金の最低勤続年数、賞与の支給日に在籍している必要があるかを、就業規則で確かめます。

4. 次の職場の見当をつけてから辞める

辞めたい理由が「残業が多い」なら、次の職場を選ぶときに残業の実績を確かめなければ、同じことが起きます。理由を裏返したものが、次の職場の条件になります。比べる物差しを先に数字で決める方法は20代の転職の軸の決め方で整理しています。

在籍が短い職歴を応募書類でどう伝えるかは、短期離職の職務経歴書の書き方にまとめています。

5. 伝える時期と方法を決める

期間の定めのない雇用であれば、民法第627条により、解約の申入れの日から 2 週間を経過すると雇用は終了します。ただし就業規則で申し出の時期が定められていることも多く、引き継ぎを含めて会社と調整するのが通常です。伝え方の実務は、残るか動くかの判断基準を扱った記事の後半で扱っています。

判断するときの落とし穴

  • 「3年」を目標にして、理由を放っておく。 3 年たったときに同じ理由で辞めることになり、年数だけが増えます。待つなら、何を待っているのかを決めておきます。
  • 理由を分けずに、勢いで辞める。 「人間関係」が理由だったのに、次の職場を給与だけで選ぶと、理由と選び方がずれます。
  • 心身の不調を、年数の問題として扱う。 眠れない、朝に体が動かない、食欲が落ちたといった状態が 2 週間ほど続くなら、仕事の判断より先に、かかりつけ医や心療内科、会社の産業医に相談してください。厚生労働省の「こころの耳」には、働く人向けの電話・SNS・メールの相談窓口がまとめられています。
  • 違法な扱いを、我慢で済ませる。 残業代が払われない、ハラスメントを受けているといった場合は、辞めるかどうかとは別に、総合労働相談コーナー(都道府県労働局や労働基準監督署の中にあり、無料で予約なしで相談できる)や労働基準監督署、弁護士に相談できます。
  • 1 年目の離職率の高さを、自分への言い訳にも脅しにも使う。 数字は集団の傾向で、あなたが辞めるべきかどうかは教えてくれません。判断の材料は、上の表に書き出した自分の理由です。

転職や退職の判断に関するほかの記事は、キャリア・転職の一覧から探せます。

出典

  • 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月24日公表)
  • 厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(2024年9月25日公表)
  • 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
  • 厚生労働省「青少年雇用機会確保指針」
  • 労働基準法(第39条)、民法(第627条)(e-Gov法令検索)