兵庫県に本店がある会社の数字は、会社の公表値では残業が短めなのに、国の統計では県内の残業が長いという、向きの違う結果が並びます。Mixum の会社名鑑で、従業員101人以上の会社が公表している数字を集計すると、法定時間外・休日労働の月平均の中央値は11.0時間(全国12.0時間)でした。一方、令和7年賃金構造基本統計調査では、兵庫県の事業所で働く人の超過実労働時間は月13時間で、愛知県と並んで47都道府県で最も長い値です。

この記事では、なぜ2つの数字の向きが違って見えるのか、医療・福祉が多い兵庫県の業種の構成、男性の育休の差、国の認定と給与の数字を整理し、神戸や県内で応募先を比べる手順をまとめます。

集計の条件

会社ごとの数字は、厚生労働省の「しょくばらぼ」と「女性の活躍推進企業データベース」で会社が自ら公表しているものです。Mixum の会社名鑑で、本店の所在地が兵庫県で従業員101人以上の会社を集計しました(2026年9月18日に取り込んだ公表値を、2026年10月2日に集計)。率の指標は100%以下の値、残業時間は0より大きい値だけを使っています。

数字を公表している会社だけの値で、兵庫県の会社全体の平均ではありません。総合点や会社の順位は付けず、指標ごとに働きやすさを数字で比べます。会社名鑑に載っている従業員101人以上の会社のうち、兵庫県に本店があるのは1,287社です。

業種の構成:医療・福祉が2割、情報通信は全国の5分の1

業種兵庫県の割合全国の割合
製造29.6%24.1%
医療・福祉20.3%15.5%
卸売・小売12.9%14.6%
その他のサービス12.9%13.5%
運輸・郵便6.0%6.5%
宿泊・飲食サービス3.8%3.7%
教育・学習支援3.2%2.1%
建設3.0%4.2%
情報通信1.2%6.1%

製造が3割近くを占めるうえ、医療・福祉も全国の約1.3倍の20.3%あります。教育・学習支援も全国の約1.5倍です。反対に情報通信は15社で1.2%と、全国の割合の5分の1ほどにとどまります。IT系の会社を県内の本店で探すと候補が少ないため、本店が大阪府や東京都の会社の、県内の拠点も含めて探すことになります。

5つの数字の中央値

指標公表している社数兵庫県の中央値全国の中央値業種の構成をならした差
有休取得率468社72.8%72.2%±0
法定時間外・休日労働(月平均)425社11.0時間12.0時間−0.5時間
男性の育休取得率521社52.4%66.7%−7.2
女性管理職比率977社11.1%10.5%−0.5
男女の賃金の差異(男性=100)872社71.172.1−1.1

「業種の構成をならした差」は、会社ごとに「その会社の数字」と「同じ業種の全国の中央値」の差を出し、その差の中央値を求めたものです。有休と残業、女性管理職は全国とほぼ同じで、全国との差がはっきり出るのは男性の育休です。

残業:会社の公表値と国の統計で向きが違う

会社の公表値では、残業の中央値は11.0時間で、月10時間以下の会社が46.6%、月30時間以上の会社は2.8%でした。製造(167社)の中央値は13.8時間で、全国の製造業の14.0時間とほぼ同じです。

一方、国の統計では、兵庫県の事業所で働く人の超過実労働時間は月13時間(全国11時間)、男性に限ると月16時間(全国13時間)で、どちらも47都道府県で最も長い値に並びます。

向きが違って見えるのは、2つの数字の対象と数え方が違うためです。

  • 対象:会社の公表値は、本店が兵庫県にある会社の、会社全体の数字です。国の統計は、本店がどこであれ、兵庫県にある事業所で働く人の数字です
  • 数え方:会社の公表値は法定時間外・休日労働の月平均、国の統計は所定外の超過実労働時間です
  • 会社の数:会社の公表値は、残業時間を公表している425社の中央値です

どちらかが誤りというわけではありません。県内で働く場所を探すなら、本店が県内の会社か県外の会社かにかかわらず、応募先の数字と配属先の部署の残業を確かめるのが確実です。残業の少ない会社の探し方は残業が少ない会社の探し方にまとめています。

男性の育休:その他のサービスで差が大きい

男性の育休取得率の中央値52.4%は、公表している会社が50社以上ある45都道府県の中で低いほうから14番目で、業種をならした差も−7.2でした。取得率0%の会社は27.6%、100%の会社は26.5%と、ほぼ同じ割合で両端に分かれています。

業種兵庫県の中央値全国の業種の中央値
その他のサービス(71社)20.0%57.1%
運輸・郵便(32社)36.2%50.0%
製造(179社)69.6%74.2%
卸売・小売(69社)50.9%55.0%
医療・福祉(90社)60.0%61.2%

とくにその他のサービスは、71社の中央値が20.0%で、全国の同業より37ポイント低い値でした。製造や医療・福祉は全国の同業に近く、差の大きい業種が限られています。育休を考えている人は、業種で判断せず、兵庫県で男性の育休取得率が高い会社のように会社ごとの数字を確かめてください。取得率の読み方は男性の育休取得率が高い会社で扱っています。

女性管理職:30%以上の会社が3割近く

女性管理職比率の中央値は11.1%で全国とほぼ同じですが、30%以上の会社が28.8%あり、全国の23.1%より多くなっています。女性の管理職が多くなりやすい医療・福祉の法人が多いためで、医療・福祉(214社)の中央値は50.0%でした。業種をならすと全国との差は−0.5です。

反対に、運輸・郵便は56社の中央値が0.8%で、全国の同業の4.3%を下回りました。女性の登用を重視する人は、業種によって差が大きい点に注意します。

国の認定と給与

厚生労働省の一覧(2026年7月末時点)では、兵庫県のくるみんは168社で、東京都、大阪府、愛知県、神奈川県に次いで5番目に多くなっています。プラチナくるみんは16社、くるみんプラス・プラチナくるみんプラスは2社です。プラチナくるみんの社数をくるみんの社数で割ると9.5%で、全国(913社÷5,979社=15.3%)を下回ります。

令和7年賃金構造基本統計調査(兵庫県にある事業所で働く人の数字)は次のとおりです。

項目兵庫県全国
平均年齢44.9歳44.4歳
平均勤続年数12.9年12.7年
超過実労働時間(月)13時間11時間
所定内給与額334.9千円340.6千円
年間賞与その他特別給与額1,026.0千円1,009.6千円

所定内給与額は全国をわずかに下回る一方、賞与は全国を上回り、東京都、愛知県、神奈川県に次いで4番目に多い値です。年収の目安は545.5万円で、47都道府県の中で5番目です(都道府県別の平均年収)。女性の所定内給与額は男性の76.3%(男性366.0千円、女性279.2千円)で、全国の76.6%とほぼ同じです。

神戸・兵庫で応募先を比べる手順

  1. 一覧で候補を出す:会社名鑑の兵庫県の会社の一覧から、業種と所在地で候補を絞ります。神戸市、阪神間、播磨など、通勤できる範囲で見ます
  2. 残業は会社の数字と配属先で確かめる:会社の公表値が短めでも、県内の事業所の残業は長めに出ています。応募先の公表値に加え、配属先の部署の残業と繁忙期を面接で尋ねます
  3. 男性の育休は会社ごとに見る:0%の会社と100%の会社が、どちらも3割近くあります。取得率と取得日数を確かめます
  4. IT系は県外の本店も含める:情報通信の会社は県内の本店が少ないため、勤務地で絞り込みます

読み違えやすい点

  • 会社の公表値と国の統計を同じものと思う:残業の向きが違うのは、対象と数え方の違いによるものです
  • 県の中央値を応募先に当てはめる:男性の育休は会社ごとの差が大きく、中央値は手がかりになりにくい指標です
  • 本店の所在地を勤務地と思う:会社全体の数字で、県外の支店や工場で働く人も入っています
  • 医療・福祉の多さを見落とす:女性管理職比率の高い会社の多さは、業種の構成によるところが大きい数字です

まとめ

  • 兵庫県に本店がある従業員101人以上の会社は1,287社で、製造29.6%、医療・福祉20.3%。情報通信は1.2%と少ない
  • 会社の公表値の残業は月11.0時間と短めだが、国の統計の超過実労働時間は愛知県と並んで最も長い
  • 男性の育休取得率は52.4%で全国より低く、その他のサービスの中央値は20.0%
  • 女性管理職比率30%以上の会社が28.8%と全国より多いのは、医療・福祉の多さによる
  • くるみんは168社で全国5番目、プラチナくるみんの割合は9.5%(2026年7月末時点)
  • 国の統計では賞与が全国4番目、年収の目安は5番目

参考資料