中小企業の情報が見つかりにくいのは、上場企業に義務づけられている有価証券報告書を、多くの中小企業は出していないからです。ただし、情報がまったくないわけではありません。法律の公表の義務は、会社の規模(常時雇用する労働者の数)と会社の形(株式会社かどうか)で決まっているので、応募先がどの線の上にいるかが分かれば、どこに何が出ているかの見当がつきます。
たとえば常時雇用する労働者が101人以上の会社は、2026年4月から男女の賃金の差異と女性管理職比率の公表が義務になりました。株式会社は、会社法で決算公告も求められています。
上場企業と中小企業で、公開の義務はどう違うか
| 公開の仕組み | 対象 | 何が出るか | どこで見るか |
|---|---|---|---|
| 有価証券報告書(金融商品取引法) | 上場している会社など | 従業員の状況、財務諸表、事業のリスクなど | EDINET |
| 女性活躍推進法の情報公表 | 常時雇用する労働者101人以上 | 男女の賃金の差異、女性管理職比率など | 女性の活躍推進企業データベース、しょくばらぼ |
| 育児・介護休業法の公表 | 常時雇用する労働者300人超 | 男性の育児休業等の取得率 | 両立支援のひろば、しょくばらぼ |
| 若者雇用促進法の情報提供 | 新卒者などを募集する会社 | 平均勤続年数、所定外労働時間、有給休暇の取得日数などから選んだ項目 | 若者雇用促進総合サイト、しょくばらぼ |
| 決算公告(会社法) | 株式会社(有価証券報告書を出す会社を除く) | 貸借対照表(大会社は損益計算書も) | 官報、日刊新聞、会社のホームページ |
有価証券報告書は、金融商品取引法第24条により、上場している会社などが事業年度が終わってから3か月以内に出すものです。上場していない会社にも出す義務がある場合はありますが、多くの中小企業は対象外です。そのため、中小企業を調べるときは、下の段の仕組みを順に当たることになります。
規模で決まる公表の義務
女性活躍推進法(2026年4月1日から)
2025年6月に改正された女性活躍推進法が、2026年4月1日に施行されました。常時雇用する労働者の数によって、公表の義務が次のように分かれます。
| 規模 | 行動計画 | 公表の義務 |
|---|---|---|
| 301人以上 | 義務 | 男女の賃金の差異と女性管理職比率を含む計4項目 |
| 101〜300人 | 義務 | 男女の賃金の差異と女性管理職比率を含む計3項目 |
| 100人以下 | 努力義務 | 努力義務 |
301人以上の会社には、2022年7月から男女の賃金の差異の公表が義務づけられていました。今回の改正で、その義務が101人以上の会社に広がりました。公表は、事業年度が始まってからおおむね3か月以内に行うこととされています。公表できる項目の選択肢には「残業時間の状況」や「有給休暇取得率」もあるので、会社によってはこれらの数字も出ています。
育児・介護休業法(2025年4月1日から)
男性の育児休業等の取得率の公表の義務は、2025年4月1日から、常時雇用する労働者が1,000人を超える会社から、300人を超える会社に広がりました。
若者雇用促進法
新卒者などを募集する会社は、「募集・採用」「職業能力の開発・向上」「雇用管理」の3つの区分について情報を提供する仕組みがあります。中途採用だけの会社は対象になりませんが、新卒も採る会社であれば、平均勤続年数や月平均の所定外労働時間が公表されていることがあります。
株式会社なら決算公告を探す
会社法第440条の決まり
株式会社は、定時株主総会のあと遅れなく、貸借対照表を公告しなければなりません。資本金5億円以上か負債200億円以上の大会社は、損益計算書も公告します。公告の方法が官報か日刊新聞の場合は要旨だけで足り、ホームページなどの電磁的な方法を選んだ場合は、5年間載せ続けます。有価証券報告書を出している会社は、この公告をしなくてよいことになっています。
公告を怠ると100万円以下の過料の対象になります。ただ、会社のホームページや官報を探しても、見つからないことはあります。また、合同会社などの持分会社は第440条の対象ではないため、決算公告はありません。
官報での探し方
公告の方法を定款で決めていない会社は、官報で公告します。2025年4月1日から官報は電子化され、内閣府の「官報発行サイト」で見られます。発行から90日間は全文を無料で読め、その後も個人の情報に配慮が必要な記事を除いて見られます。決算公告は定時株主総会の後に出るので、応募先の決算の月から数か月後の号を探します。
決算公告の要旨からは、資産・負債・純資産の合計や当期純損益が分かります。数字の読み方は、転職先の経営状態の調べ方で説明しています。
調べる手順
架空の例で流れを追います。Eさん(38歳)は、従業員約150人の株式会社の求人を見つけました。
- 会社の形と規模を確かめる:求人票で「株式会社」であること、従業員数が約150人であることを確かめる。女性活躍推進法の公表の義務がある規模だと分かる
- 公表の義務がある数字を探す:女性の活躍推進企業データベースやしょくばらぼで、男女の賃金の差異、女性管理職比率、選ばれた項目(残業・有給など)を見る
- 新卒の募集の有無を見る:新卒も採っていれば、若者雇用促進法の項目が出ていないかを探す
- 決算公告を探す:会社のホームページの「決算公告」のページ、官報の順に探す
- 見つからなかった項目を質問に回す:残業・休日・賃金の決め方など、公開情報で分からなかった点を面接で尋ねる
公表されている残業や休みの数字の比べ方は、残業が少ない会社の探し方にまとめています。上場企業の有価証券報告書の使い方は、有価証券報告書で年収を確かめる方法にあります。
調べるときの注意
- 求人票の従業員数で義務の有無を決めつける:義務は「常時雇用する労働者」の数で決まり、グループ会社の人数や派遣社員の数え方で違ってきます
- 公表のない項目を悪いしるしと読む:選択肢の中から会社が選ぶ仕組みなので、載っていない項目があるのは普通です
- 年度の違う数字を並べる:データベースの数字は、会社ごとに更新の時期が違います。何年度の数字かを確かめます
- グループの親会社の数字で判断する:親会社が上場していても、子会社の働き方は子会社の数字で見ます
求人の内容と実際の労働条件が違うときは、求人を受け付けたハローワークや、総合労働相談コーナーで相談できます。30代からの転職で使える記事は、30代からの転職の一覧にまとめています。
まとめ
- 多くの中小企業は有価証券報告書を出していないので、規模と会社の形で決まる別の仕組みを当たる
- 2026年4月から、常時雇用する労働者101人以上の会社は、男女の賃金の差異と女性管理職比率の公表が義務
- 男性の育児休業等の取得率は、2025年4月から300人超の会社に公表の義務がある
- 株式会社は会社法で決算公告が求められ、官報やホームページで探せる。合同会社は対象外
- 見つからない項目は、面接や労働条件通知書で直接確かめる