IT業界(情報通信業)の残業は、国の統計では全産業よりやや長めです。厚生労働省の毎月勤労統計調査の2025年の確報で、情報通信業のフルタイムの人(一般労働者)の所定外労働時間は月16.5時間と、調査産業計の13.2時間を3.3時間上回りました。
一方、会社が自ら公表している数字では、法定時間外・休日労働の月平均を公表している情報通信業の1,299社の中央値が12.0時間で、月30時間以上の会社は1.8%にとどまります。二つの数字の差は、数える範囲の違いと、公表している会社の偏りから生まれます。業界の平均に振り回されず、応募先の数字を定義をそろえて比べるのが確実です。
国の統計で見る情報通信業の労働時間
毎月勤労統計調査は、常用労働者5人以上の事業所を対象に、厚生労働省が毎月行う調査です。2025年の年平均(確報)の一般労働者の数字を並べます。
| 業種 | 総実労働時間 | 所定内労働時間 | 所定外労働時間 |
|---|---|---|---|
| 運輸業,郵便業 | 175.3時間 | 151.2時間 | 24.1時間 |
| 電気・ガス業 | 156.9時間 | 140.0時間 | 16.9時間 |
| 情報通信業 | 160.5時間 | 144.0時間 | 16.5時間 |
| 製造業 | 162.3時間 | 147.6時間 | 14.7時間 |
| 建設業 | 164.3時間 | 150.8時間 | 13.5時間 |
| 調査産業計 | 160.5時間 | 147.3時間 | 13.2時間 |
| 医療,福祉 | 153.6時間 | 146.9時間 | 6.7時間 |
情報通信業は、所定内の労働時間が短めで、所定外が長めという形です。総実労働時間は調査産業計と同じ160.5時間でした。
所定外労働時間は、会社が決めた所定の労働時間を超えて働いた時間です。所定が1日7時間30分の会社なら、8時間までの30分も所定外に入ります。法律の上限の対象になる「法定時間外」より広い数え方です。
会社が公表している数字の中央値
会社ごとの数字は、厚生労働省の「しょくばらぼ」と「女性の活躍推進企業データベース」で、会社が自ら公表しています。Mixum の会社名鑑で、情報通信業の会社の公表値を集計しました(2026年9月18日に取り込んだ公表値を、2026年10月2日に集計)。
| 項目 | 公表している社数 | 4分の1の会社 | 中央値 | 4分の3の会社 |
|---|---|---|---|---|
| 法定時間外・休日労働の月平均 | 1,299社 | 7.2時間 | 12.0時間 | 17.5時間 |
| 有給休暇の取得率 | 1,223社 | 66.0% | 74.0% | 81.0% |
| 正社員の有給休暇の取得日数 | 261社 | 10.0日 | 12.4日 | 14.3日 |
法定時間外の月平均が10時間以下の会社は41.0%、20時間以下は84.7%でした。全業種の中央値(11.0時間)とほぼ同じ水準です。従業員101人以上の会社に絞ると中央値は13.9時間で、規模の大きい会社のほうがやや長めでした。
これは数字を公表している会社だけの値で、情報通信業全体の平均ではありません。公表している会社は、働き方の改善に取り組んでいる会社に偏りうるため、国の統計より短めに出ている可能性があります。
国の統計と会社の数字が違う理由
| 違い | 毎月勤労統計調査 | 会社の公表値 |
|---|---|---|
| 数える範囲 | 所定外(会社の所定を超えた分すべて) | 法定時間外と法定休日の労働 |
| 対象 | 常用労働者5人以上の事業所の一般労働者 | 公表している会社の対象者(範囲は会社の注記による) |
| 期間 | 2025年の年平均 | 会社ごとの公表年度 |
数える範囲が違えば、同じ働き方でも数字は変わります。応募先どうしを比べるときは、同じ出典の、同じ定義の数字で比べてください。
IT業界の数字を読むときの注意
情報通信業はITだけではない
日本標準産業分類の情報通信業には、ソフトウェアや情報処理サービスのほか、通信、放送、新聞・出版、映像の制作なども入ります。「IT業界」としてイメージする会社だけの数字ではない点に注意が必要です。
裁量労働制の会社は「みなし」の時間
システムエンジニアの仕事(情報処理システムの分析・設計の業務)は、専門業務型裁量労働制の対象になりえます。この制度では、労使協定で決めた時間を働いたものとみなすため、実際に働いた時間と残業の数字の関係が見えにくくなります。2024年4月からは、適用に本人の同意が必要になり、同意しなかった人を不利益に扱うことは禁じられました。求人票や面接で、裁量労働制が適用されるか、みなし時間は何時間かを確かめます。
平均では繁忙期は分からない
公表される残業時間は月の平均です。リリースの前やシステムの切り替えの時期に集中する残業は、平均では薄まります。
応募先の残業を確かめる手順
- 業界の目安を知る:情報通信業の会社の法定時間外の中央値は12.0時間。国の統計の所定外は16.5時間
- 応募先の数字を探す:しょくばらぼで法定時間外の月平均を見る。会社名鑑の情報通信業の残業が少ない会社の一覧からも探せる
- 制度を確かめる:裁量労働制・固定残業代の有無と、その時間数を求人票で見る
- 配属の形を聞く:自社での開発か、客先への常駐か、繁忙期はいつかを面接で尋ねる
- 休暇と並べる:有給休暇の取得率と取得日数も並べ、休める会社かを合わせて見る
公開データ全体の探し方は残業が少ない会社の探し方に、有給休暇の数字の読み方は有給取得率の平均と読み方にまとめています。
読み違えやすい点
- 国の統計と会社の数字を直接比べる:所定外と法定時間外では、数える範囲が違います
- 業種の中央値を応募先に当てはめる:同じ業種でも、半数の会社が7〜18時間の範囲に散らばっています
- 裁量労働制の会社の数字を実労働時間と思う:みなし時間の扱いを確かめます
- 会社全体の平均を配属先に当てはめる:常駐先やプロジェクトで働き方が変わります
30代からの転職で使える記事は、30代からの転職の一覧にまとめています。
まとめ
- 2025年の毎月勤労統計調査で、情報通信業の一般労働者の所定外労働時間は月16.5時間(調査産業計13.2時間)
- 会社名鑑で法定時間外を公表している情報通信業1,299社の中央値は12.0時間。月30時間以上は1.8%
- 二つの数字の差は、数える範囲(所定外か法定時間外か)と公表している会社の偏りによる
- システムエンジニアは裁量労働制の対象になりえるので、みなし時間と適用の有無を確かめる
- 応募先どうしは、同じ出典・同じ定義の数字で比べる