昇給の平均は、厚生労働省の「令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査」で、1人平均賃金の改定額が13,601円、改定率が4.4%でした。常用労働者100人以上の企業が対象で、規模が小さいほど上がり幅は小さく、100〜299人の企業では10,264円・3.6%です。
この数字は「会社全体の平均の月給がいくら上がったか」で、一人ひとりの昇給額そのものではありません。この記事では、統計ごとの数字と前提を並べ、自分の昇給と比べるときの読み方と、就業規則で確かめる点を整理します。
賃金引上げ等の実態に関する調査|企業規模ごとの改定額と改定率
調査は毎年7〜8月に行い、令和7年は3,643社を抽出して1,847社から有効回答を得ています。9〜12月の予定を含めた2025年中の賃金の改定の状況です。
| 企業規模 | 1人平均賃金の改定額(令和7年) | 改定率(令和7年) | 改定額(令和6年) | 改定率(令和6年) |
|---|---|---|---|---|
| 計 | 13,601円 | 4.4% | 11,961円 | 4.1% |
| 5,000人以上 | 16,784円 | 5.1% | 15,121円 | 4.8% |
| 1,000〜4,999人 | 15,859円 | 5.0% | 12,317円 | 4.1% |
| 300〜999人 | 12,308円 | 4.0% | 10,618円 | 3.8% |
| 100〜299人 | 10,264円 | 3.6% | 10,228円 | 3.7% |
「1人平均賃金」は所定内賃金の1か月1人あたりの平均額です。諸手当を含みますが、時間外・休日手当や深夜手当などの割増手当、慶弔手当などの特別手当は含みません。改定額は改定後と改定前の差額、改定率は改定額を改定前の1人平均賃金で割った割合です。
100〜299人の企業は、改定額が前年とほぼ同じで、改定率は前年より0.1ポイント下がっています。1,000人以上の企業との差は、前年より広がりました。
1人平均賃金を引き上げた・引き上げる企業の割合は、計で91.5%、100〜299人で89.7%でした。
業種による差もあり、建設業20,724円(5.9%)、製造業15,952円(5.2%)、卸売業・小売業12,183円(4.2%)、宿泊業・飲食サービス業10,177円(3.6%)、医療・福祉5,589円(2.3%)でした。
労働組合のある企業は15,229円・4.8%、ない企業は11,980円・4.0%です。
定期昇給とベースアップの違い
同じ調査では、賃金の改定を次のように分けています。
| 区分 | 調査の定義 |
|---|---|
| 定期昇給(定昇) | 労働協約や就業規則などで定めた制度に従い、一定の時期に毎年増額すること。年齢・勤続年数による自動昇給のほか、能力・業績評価に基づく昇給を含む |
| ベースアップ(ベア) | 賃金表の改定により賃金水準を引き上げること |
| 諸手当の改定 | 各種手当の改定(割増手当や特別手当を除く) |
定期昇給の制度がある企業は81.2%で、100〜299人では78.7%でした。制度の中身(複数回答)は「自動昇給」が27.5%、「その他(業績評価など)」が72.4%です。評価で決める会社が多いので、同じ会社でも人によって昇給額は変わります。
定期昇給を行った・行う企業は76.8%、100〜299人では73.4%でした。定期昇給の制度がある企業のうち、ベアを行った・行う企業は57.8%で、100〜299人では53.3%、5,000人以上では85.2%です。
2026年の春の賃上げ|大企業と中小の組合
2026年の数字は、賃金引上げ等の実態に関する調査がまだ出ていないため、春の労使交渉の集計で見ます。どちらも労働組合のある企業の数字です。
| 集計 | 対象 | 2026年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」 | 資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上で労働組合のある企業428社 | 18,167円・5.18% | 18,629円・5.52% |
| 連合 最終回答集計(平均賃金方式・規模計) | 5,368組合 | 16,400円・5.01% | 16,356円・5.25% |
| 連合 同(300人未満の中小組合) | 3,831組合 | 12,866円・4.69% | 12,361円・4.65% |
| 連合 同(99人以下) | 2,321組合 | 11,124円・4.26% | 10,922円・4.36% |
連合の数字は定期昇給に当たる分を含んだ「定昇相当込み賃上げ計」です。賃上げ分が明確に分かる組合だけで見ると、300人未満の中小組合(2,385組合)の賃上げ分は9,840円・3.51%でした。定期昇給に当たる分を除くと、上がり幅は3%台になります。
東京都の中小企業|定期昇給とベアを実施した企業の割合
東京都の「中小企業の賃金事情」(令和7年)は、都内の従業員10〜299人の企業641社の回答です。過去1年間に定期昇給を実施した企業は74.4%、実施していない企業は23.6%でした。ベースアップを「実施」と答えた企業は56.6%、「現状維持」は36.2%です。
100人未満の企業は、国の賃金引上げ等の実態に関する調査の対象外です。小さな会社の昇給の様子を見るときは、こうした地域の調査や連合の99人以下の集計を合わせて見ます。
自分の昇給を比べる手順
- 昇給額を月の所定内賃金で出す:残業代を除き、基本給と毎月の手当で前年と比べます。統計の「1人平均賃金」と同じ範囲にそろえるためです。
- 率に直す:昇給額を昇給前の所定内賃金で割ります。額だけで比べると、もとの月給の高さの違いが混ざります。
- 会社の規模と業種の行で比べる:計の13,601円ではなく、自分の会社に近い規模・業種の行と比べます。
- 定期昇給とベアに分ける:給与明細や会社の通知で、どこまでが定期昇給でどこからが賃金表の改定かを確かめます。
- 就業規則の昇給の条文を読む:時期・方法・評価との関係が書かれています。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の解説では、「昇給に関する事項」は就業規則に必ず書かなければならない「絶対的必要記載事項」とされています(労働基準法第89条)。就業規則は、配付や職場への掲示・備付けなどの方法で労働者に周知しなければならない決まりです(同法第106条第1項)。
役職や業種で賃金がどのくらい変わるかは給料が上がらない理由で、転職で年収が上がった人の割合は転職で年収が上がる割合で整理しています。賞与の規模ごとの差は中小企業のボーナスの平均で扱っています。
昇給の大きさだけでなく、休みの取りやすさも会社選びの条件になります。有給休暇の取得率は、Mixumの会社名鑑の有給休暇の取得率が高い会社で一覧できます。厚生労働省「しょくばらぼ」で会社が公表している数字をMixumの会社名鑑で集計(2026年10月1日時点。公表値は2026年9月18日に取り込み)すると、14,249社の中央値は71.7%でした。公表している会社だけの値で、業種全体の平均ではありません。
読み違えやすい点
- 会社の平均と個人の昇給は違う:改定額は会社全体の1人平均の差額で、常用労働者数による加重平均です。評価や年齢で一人ひとりの額はばらつきます。
- 対象の労働者が限られる:この調査の常用労働者は期間の定めのない人だけで、有期契約で更新している人は含みません。
- 100人未満の企業は入っていない:賃金引上げ等の実態に関する調査の最小の区分は100〜299人です。
- 春の賃上げの集計は組合のある企業:厚生労働省の民間主要企業の集計も連合の集計も、労働組合のある企業の数字です。
- 予定を含む:令和7年の調査は9〜12月の予定を含みます。
約束どおりに昇給しないときの相談先
就業規則や労働条件通知書に書かれた昇給の定めどおりに賃金が上がらないときは、都道府県労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーで無料で相談できます。就業規則の昇給の条文、労働条件通知書、前年と今年の給与明細をそろえておくと、状況を説明しやすくなります。
まとめ
- 令和7年の1人平均賃金の改定額は13,601円・4.4%(常用労働者100人以上の企業)
- 100〜299人の企業は10,264円・3.6%で、5,000人以上(16,784円・5.1%)との差は大きい
- 2026年の春の賃上げは、連合の300人未満の中小組合で12,866円・4.69%、定期昇給に当たる分を除いた賃上げ分は9,840円・3.51%
- 定期昇給は制度に沿った毎年の増額、ベアは賃金表の改定。定昇の制度がある企業の72.4%が業績評価などで決める方式(複数回答)
- 自分の昇給は、所定内賃金の率に直し、近い規模・業種の行と比べる
- 昇給に関する事項は就業規則に必ず書かれている。約束と違うときは総合労働相談コーナーに相談できる



