転職先の経営状態は、無料で見られる公開情報だけでも、かなりのところまで確かめられます。上場している会社なら有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」と「事業等のリスク」、上場していない株式会社なら官報などに載る決算公告が中心の資料です。どちらの会社でも、国税庁の法人番号公表サイトで会社の名前や所在地の変わり方を、経済産業省のgBizINFOで国とのかかわりの記録を確かめられます。
見るべきなのは、1年分の数字の大小ではなく、数年の動きと、会社自身が書いているリスクです。
どの会社に、どの資料があるか
| 資料 | 対象の会社 | 分かること | どこで見るか |
|---|---|---|---|
| 有価証券報告書 | 上場している会社など | 5年分の経営指標、事業等のリスク、財務諸表 | 金融庁のEDINET |
| 決算公告 | 株式会社(有価証券報告書を出す会社を除く) | 貸借対照表の要旨、当期純損益 | 官報、日刊新聞、会社のホームページ |
| 法人番号公表サイト | 法人番号を持つすべての法人 | 名前・所在地・法人番号、変更の履歴、閉鎖の有無 | 国税庁 |
| gBizINFO | 国が情報を持っている法人 | 届出・認定、表彰、補助金、調達、特許、財務、職場情報など | 経済産業省 |
上場していない会社にどの公開の仕組みがあるかは、中小企業の情報の調べ方で規模と会社の形ごとに整理しています。
上場している会社:有価証券報告書の2つの欄
主要な経営指標等の推移
有価証券報告書の最初のほうにある「主要な経営指標等の推移」には、売上高、経常利益、当期純利益、純資産額、総資産額、従業員数などが5年分並んでいます。1年ごとに開かなくても、この表で5年の動きが分かります。
見るのは次の3つです。
- 売上高と利益が、同じ向きに動いているか
- 純資産額が減り続けていないか
- 従業員数が大きく増えたり減ったりしていないか
事業等のリスク
「事業等のリスク」の欄には、会社が自ら、業績に影響しうるリスクを書いています。ここで特に大事なのが重要事象等の記載です。会社が事業を続けていくという前提(継続企業の前提)に重要な疑いを生じさせるような事象や状況がある場合は、その内容と、それを解消・改善するための対応策をこの欄に書くことになっています。
この記載があれば、会社自身が経営の先行きに課題を認めているということです。応募を取りやめる理由になるとは限りませんが、面接で対応策の進み具合を尋ねる材料になります。
上場していない株式会社:決算公告の読み方
株式会社は、会社法により、定時株主総会のあとに貸借対照表を公告します。官報などに載る要旨には、資産・負債・純資産の区分ごとの金額と、当期純損益の金額が載ります。継続企業の前提に関する注記がある場合は、それも載せる決まりです。
架空の会社の要旨で読み方を見ます。
| 項目 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|
| 資産の部 合計 | 8億円 | 8億5千万円 |
| 負債の部 合計 | 5億円 | 5億8千万円 |
| 純資産の部 合計 | 3億円 | 2億7千万円 |
| 当期純損益 | 2千万円の利益 | 3千万円の損失 |
この例では、当期に損失が出て純資産が減り、負債が増えています。純資産を資産で割った割合(自己資本比率)は、前期の37.5%から当期は約31.8%に下がりました。1期だけで判断はできませんが、次の年の公告でも同じ動きが続くかどうかを見る価値があります。
要旨を読むときの目安は次のとおりです。
- 純資産がマイナス:負債が資産を上回る状態(債務超過)で、要注意のしるし
- 損失が何期も続く:純資産が年ごとに減っていく
- 継続企業の前提に関する注記がある:会社自身が事業の継続に重要な疑いがあると示している
官報は2025年4月から電子化され、官報発行サイトで発行から90日間は全文を無料で読めます。会社がホームページで公告している場合は、5年分をさかのぼれます。
どの会社でも使える公的サイト
法人番号公表サイト(国税庁)
法人番号公表サイトでは、会社の名前、本店の所在地、法人番号の3つと、その変更の履歴が見られます。閉鎖した法人も調べられます。名前や本店所在地が短い期間に何度も変わっている場合は、理由を確かめておくと安心です。合併や事業の再編、事務所の移転など理由はさまざまなので、履歴そのもので良い悪いは決まりません。
gBizINFO(経済産業省)
gBizINFOは、国が持っている法人の情報を、法人番号をもとにまとめて無料で見られるサイトです。届出・認定、表彰、補助金、調達、特許、財務、職場情報、決算情報の8つの区分があります。国の認定や表彰の記録、国の調達を受けた記録などから、会社がどのような活動をしているかが分かります。
調べる手順
- 法人番号公表サイトで会社を特定する:同じ名前の会社と取り違えないよう、所在地と法人番号を控える
- 有価証券報告書か決算公告を探す:上場していればEDINET、上場していなければ会社のホームページと官報
- 3〜5年分の動きを見る:売上・利益・純資産の向き、損失が続いていないか
- リスクの記載を読む:事業等のリスクの重要事象等や、継続企業の前提に関する注記の有無
- gBizINFOで活動の記録を見る:認定・表彰・補助金・調達などの記録
- 分からない点を面接で尋ねる:公開情報で読み取った動きを示して、今後の見通しを聞く
経営の数字と合わせて、給与や働き方の数字も確かめるなら、有価証券報告書で年収を確かめる方法と平均年齢と平均勤続年数から会社を見る方法が使えます。
読み違えやすい点
- 1年の赤字で決める:投資の時期の一時的な損失もあります。数年の動きで見ます
- 売上の大きさを安定と思う:売上が大きくても、純資産が減り続けていれば余裕は小さくなっています
- 親会社の数字で子会社を判断する:応募先が子会社なら、その会社の決算公告を探します
- 公的サイトに記録がないことを問題と思う:gBizINFOの記録は国とのかかわりがあった分だけです。記録がないのは珍しくありません
30代からの転職で使える記事は、30代からの転職の一覧にまとめています。
まとめ
- 上場している会社は、有価証券報告書の5年分の経営指標と、事業等のリスクの重要事象等を読む
- 上場していない株式会社は、決算公告の要旨で純資産と当期純損益の動きを見る
- 純資産のマイナスや継続企業の前提に関する注記は、会社自身が示す要注意のしるし
- 法人番号公表サイトで会社を特定し、gBizINFOで認定・補助金・調達などの記録を見る
- 1年分で決めず、数年の動きを確かめ、分からない点は面接で尋ねる