飲み会に出ないと評価に響くかどうかは、会社の評価制度と、評価する人の見方で決まります。一律に「響く」とも「響かない」とも言えません。ただし、確かめる順番ははっきりしています。
まず、評価シートや就業規則など、書かれた基準に飲み会への参加が入っているかを見ます。入っていなければ、制度として参加が評価の対象になっているわけではありません。それでも「響く」と感じるなら、考えられる原因は、飲み会の席で流れる仕事の情報や、評価する人との接点の差です。これは、業務の場で情報を取りに行くことで小さくできます。参加しないことを理由に仕事を外される、不利な扱いを示唆されるといったことが起きたら、記録を取り、社内外の窓口に相談します。
「評価に響く」と言われる理由
評価には、書かれた基準と、評価する人の判断の両方がある
多くの会社の人事評価は、評価シートの項目に沿って、上司などの評価者が点を付けたりコメントを書いたりする形です。項目が「売上」「期限の順守」のように数字で測れるものなら、飲み会に出たかどうかが入り込む余地は小さくなります。一方で、「協調性」「チームワーク」「積極性」のように幅のある項目は、評価者が日ごろ目にしている場面から判断することになります。
このとき評価者の手元にある材料は、仕事ぶりだけとは限りません。会話の多い人ほど、評価者はその人の考えや働きぶりを多く知っている状態になります。制度に飲み会の項目がなくても、評価者が知っている情報の量に差が出ることが、「響く」と言われる理由の1つです。
飲み会の席で仕事の話が進むことがある
異動の希望、次の担当の割り振り、部署の方針の変更など、正式に決まる前の話が、飲み会の雑談の中で出ることがあります。出ていない人は、決まったあとで知ることになります。評価そのものより、仕事の情報や機会が届くのが遅れるほうが、実際の影響としては大きい場合があります。
「響くよ」という言葉が、誘いの圧になっている
「来ないと評価に響くよ」と言う人が、評価の仕組みを知ったうえで話しているとは限りません。冗談半分の誘い文句のこともあれば、評価する立場の人が本気で言っていることもあります。言葉だけで判断せず、誰が、どんな立場で言ったのかを分けて考えます。
「響く」の中身を3つに分ける
「評価に響く」には、性格の違う3つが混ざっています。どれに当たるかで、取る行動が変わります。
| 種類 | 中身 | 確かめるもの | 取る行動 |
|---|---|---|---|
| 制度の上の影響 | 評価項目に参加や懇親が入っている | 評価シート、就業規則・賃金規程、人事制度の説明資料 | 項目の中身と、なぜ入っているかを人事に聞く |
| 情報と接点の差 | 飲み会で流れる話や、評価者との会話の量に差が出る | 自分に届いていない情報があるか | 業務の場で情報を取りに行く、面談で伝える |
| 不利益な扱い | 参加しないことを理由に、仕事を外される、低く評価すると言われる | いつ、誰に、何を言われ、何をされたか | 記録し、社内外の窓口に相談する |
自社の状態を確かめるチェックリスト
- 評価シートの項目を、自分で見たことがある
- 項目に「懇親会への参加」「社内行事への協力」のような語が入っていない
- 評価面談で、点数の根拠として具体的な仕事の場面が示される
- 飲み会は有志の集まりで、会費は各自の負担、出欠を上に報告していない
- 異動や担当替えの話は、正式な場(面談、会議、通知)で伝えられる
チェックが少ないほど、評価の中身が見えにくい職場です。飲み会に出るかどうかより先に、評価の基準を確かめることが必要になります。
確かめ方と、影響を小さくする手順
1. 書かれた基準を読む
評価シートの項目と、人事制度の説明資料を読みます。あわせて就業規則も確かめます。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使う会社に就業規則の作成と届け出を義務づけ、その記載事項に「賃金の決定、計算及び支払の方法」や「昇給に関する事項」を挙げています。同法第106条は、就業規則を労働者に周知することを会社に義務づけています。評価の方法は、賃金規程や人事評価の規程など別の文書に書かれていることもあるので、見当たらなければ人事に「評価の基準が書かれた資料はどれですか」と聞きます。
評価の項目そのものが、測りやすいものに偏っていないかという視点は、評価制度が手段の目的化を生む理由で整理しています。
2. 飲み会で流れる情報を、業務の場で取りに行く
情報と接点の差は、飲み会に出る以外の方法でも埋められます。
- 上司との定期の面談や1on1で、「来期の担当の見込みで、決まっていることはありますか」と聞く
- 部署の方針の変更は、会議の議題に入れてもらうか、議事録で確かめる
- 異動や担当の希望は、面談の場で自分から伝え、文字でも残す
- 昼休みや業務中の短い雑談など、勤務時間内の接点を意識して持つ
飲み会の席で決まった話が正式な場に出てこない職場なら、それは参加者だけが得をする決め方になっているということです。個人の努力で追いかけ続けるより、「決まったことは会議か文書で共有してほしい」と上司に頼むほうが根本的な対策になります。
3. 幅のある評価項目には、日中の仕事で材料を出す
「協調性」「チームワーク」のような項目は、評価者の印象で決まりやすい項目です。印象に任せず、材料を出します。ほかの人の作業を手伝った、引き継ぎの資料を作った、部署をまたぐ調整をまとめたといった事実を、日付と一緒に短く記録しておき、評価面談の前に上司に渡します。
4. 参加するかどうかは、自分の基準で決める
出ないと決める必要も、全部出る必要もありません。「歓送迎会のような節目の会だけ出る」「一次会だけ出る」「月1回まで」のように、自分で基準を決めておくと、誘われるたびに悩まずに済みます。断るときの言い方と、職場の決まりにしてもらう手順は職場の同調圧力の断り方にまとめています。会社の行事として開かれる会で、準備まで任される場合の考え方は飲み会の幹事を押し付けられるときの線引きを参照してください。
5. 気になるなら、評価面談で基準を聞く
「評価に響く」と言われて不安が残るなら、評価面談で直接確かめます。責める形ではなく、基準を聞く形にします。
「協調性」の項目について、どんな場面を見て判断されているか教えていただけますか。次の期に向けて、何を増やせばよいかを知りたいです。
答えに飲み会が出てこなければ、それが基準です。飲み会への参加が理由として挙がった場合は、その日のうちに、言われた言葉をそのまま記録しておきます。
法律や指針で確かめられること
勤務時間外の懇親の場でも「職場」に当たることがある
厚生労働省のパンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」(2022年4月からの全企業への義務化に合わせたもの)は、勤務時間外の「懇親の場」であっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に当たるとしています。その判断は、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して、個別に行う必要があるとしています。
また、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年)は、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間に当たるとし、参加が業務上義務づけられている研修などの時間を例に挙げています。会社が事実上参加を義務づけている会であれば、任意の飲み会とは扱いが変わる可能性があります。
参加しないことを理由にした扱いは、個別に判断される
参加しないことを理由に評価を下げることが、それだけで違法になるかどうかは、評価制度の中身や経緯によって変わるため、この記事では言い切れません。
ただし、同じパンフレットと、厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は、パワーハラスメントの類型の1つに「人間関係からの切り離し」を挙げ、該当すると考えられる例として、自身の意に沿わない労働者に対して仕事を外し、長期間にわたり別室に隔離することや、同僚が集団で無視をし、職場で孤立させることを示しています。
パワーハラスメントは、「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つをすべて満たすものとされ、言動の目的や経緯、頻度や継続性などを総合的に考慮して判断されます。飲み会を断ったあとに、仕事を外される、会話から外される状態が続くなら、一人で判断せず相談してください。
実行するときの落とし穴
「評価に響く」を確かめないまま、全部に出続ける。 基準を知らないまま参加を増やしても、評価が上がるとは限りません。時間と体力だけが減ります。先に書かれた基準を確かめます。
出ないことを、正しさの主張にする。 「飲み会は無駄」と周りに言って回ると、出ている人との関係が悪くなり、日中の仕事の連携にも響きます。出ないことは自分の選択として淡々と伝え、他人の参加には口を出しません。
情報の差を、飲み会のせいだけにする。 業務の場で聞けば分かることを聞かずにいると、差は広がります。面談や会議で自分から聞く回数を増やすのが先です。
言われたことを記録しない。 「来ないなら評価は期待するな」のような言葉は、その場では流してしまいがちです。日時、場所、言った人、言葉をその日のうちに残しておくと、相談するときに状況を正確に伝えられます。
相談できる窓口
- 社内の相談窓口・人事部門:事業主には、パワーハラスメントの相談に応じる体制を整えることが義務づけられています(労働施策総合推進法。中小企業も2022年4月から)。同法は、相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いも禁じています
- 総合労働相談コーナー:各都道府県労働局や労働基準監督署の中にあり、職場のいじめ・嫌がらせを含む労働問題を無料で相談できます
- 労働基準監督署:参加が義務づけられた会の時間が労働時間として扱われていないなど、労働時間や賃金の問題のとき
- 弁護士:評価や処遇について、法的な判断や手続きが必要なとき
飲み会に出ないと評価に響くかどうかは、まず書かれた基準を読むことで半分は分かります。残りの半分は、飲み会の席で流れる情報を、業務の場で取りに行けるかどうかです。職場の人間関係との距離の取り方は、対人関係・調整の記事一覧からも探せます。
参考資料
- 厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」(パンフレット)
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年)
- 労働基準法 第89条・第106条(e-Gov 法令検索)



