飲み会の幹事を「若手だから」「前回もやったから」という理由で毎回任される。店探し、日程の調整、出欠の催促、集金、立て替えと、終わってみると数時間が消えている。こうした押し付けに困ったときは、まずその飲み会が「業務の延長」なのか「任意の私的な集まり」なのかを分けて考えます。

任意の集まりなら、幹事は断って構いません。会社として開く会で、準備を指示されているなら、それは仕事の一部として時間と費用の扱いを確かめる対象になります。どちらの場合も、引き受けるなら作業を定型にして手間を減らし、「誰がやるか」を毎回の空気で決めない決まりを職場に作ってもらうのが、押し付けを繰り返さない近道です。

幹事の押し付けが起きる理由

誰の仕事でもない作業は、断りにくい人に集まる

職場の飲み会の幹事は、多くの場合、業務の分担表にも評価の項目にも載っていません。誰の担当でもない作業は、「頼みやすい人」「断りにくい人」に流れていきます。入社年次が浅い人、異動してきたばかりの人、断ると角が立つと感じている人に集まりやすいのは、そのためです。

一度引き受けると「前回うまくやってくれたから」と次も頼まれ、いつの間にか固定の担当になります。本人が得意だからではなく、決め方の仕組みがないことが原因です。

作業量が見えていない

頼む側は、幹事の作業を「店を予約するだけ」と考えていることがあります。実際には、次のような作業が連なっています。

作業手間が増えやすいところ
日程の調整候補日を出しても返事が揃わず、個別に聞き直す
店選び・予約人数・予算・場所・苦手な食べ物の条件がそろわない
出欠の管理締め切りを過ぎても返事がない、直前の増減がある
会費の決定と集金役職ごとの差額の決め方、未払いの催促
立て替え店への支払いを個人のカードや現金で先に出す
当日の進行席の案内、乾杯やあいさつの段取り、二次会の手配
事後の精算差額の返金、領収書の扱い

作業の多くは「返事を待つ」「人に催促する」ことで、時間がかかるわりに成果が見えません。頼む側に見えていないので、負担の大きさが伝わらず、交代の話も出てきません。

業務の延長か、任意の集まりかを見分ける

幹事を断れるかどうか、準備の時間をどう扱うかは、その飲み会の性格で変わります。判断の手がかりは、厚生労働省の資料に示されています。

厚生労働省が示している考え方

厚生労働省のパンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」(2022年4月からの全企業への義務化に合わせたもの)では、パワーハラスメントが問題になる「職場」について、勤務時間外の「懇親の場」であっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当するとしています。そのうえで、その判断は職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して、個別に行う必要があるとしています。

また、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省、2017年)は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間に当たるとしています。労働時間に当たるかどうかは、就業規則などの定めではなく、義務づけられていたか、余儀なくされていたかといった状況から個別に判断されます。

ここから言えるのは、「飲み会だから私的」「勤務時間外だから仕事ではない」とは一律に決められない、ということです。逆に、「上司に頼まれたから必ず業務」とも言い切れません。

自分の職場の飲み会を確かめるチェックリスト

次の項目のうち、当てはまるものが多いほど、業務の延長に近い集まりと考えられます。

  • 会社や部署の費用(会議費・交際費など)で開かれる
  • 取引先や顧客が参加する
  • 会社の行事(歓送迎会、キックオフ、表彰など)として案内される
  • 上司から「幹事をやるように」と業務の指示として割り振られた
  • 準備を就業時間中にするよう求められている、または就業時間中でないと終わらない量がある
  • 参加が事実上の必須で、欠席の理由を聞かれる、出欠が上に報告される

反対に、有志の集まりで、会費は各自の負担、参加も自由で、誰でも幹事を断れる雰囲気があるなら、任意の私的な集まりに近いと考えられます。

パワーハラスメントの考え方との関係

厚生労働省の「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)は、パワーハラスメントの代表的な類型の1つとして「過大な要求」を挙げ、該当すると考えられる例に「労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること」を含めています。

ただし、同じ指針は、パワーハラスメントを「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3つをすべて満たすものとし、個別の事案は言動の目的、経緯、頻度や継続性などを総合的に考慮して判断するとしています。飲み会の幹事を一度頼まれたことが、そのままパワーハラスメントに当たるわけではありません。断っても立場を背景に繰り返し強いられる、断ったことで不利な扱いを受けるといった状況が続くときは、一人で判断せず、後で挙げる相談先に話してください。

押し付けを減らす手順

任意の集まりなら、代わりの案を添えて断る

任意の集まりの幹事は、断って構いません。断るときは、理由を長々と説明するより、できないこと・できることをはっきり分けるほうが角が立ちません。

今回の幹事は、業務の締め切りと重なるためお引き受けできません。前回の店の情報と案内文の下書きはお渡しできますので、次の方にお使いいただければと思います。

幹事は前回担当しましたので、今回はほかの方にお願いできますか。持ち回りにしていただけると助かります。

嘘の予定を理由にすると、後で辻つまが合わなくなります。「今回は引き受けられない」とだけ伝え、引き継げる材料を渡すほうが、長く見て楽です。

業務の延長なら、準備を仕事として扱ってもらう

会社の行事として開く会で幹事を指示された場合は、断るより、仕事として位置づけてもらうほうが現実的です。上司に次の3点を確かめます。

  1. 準備を就業時間中に行ってよいか(他の仕事の締め切りをどう調整するか)
  2. 費用は会社の経費として精算できるか、立て替えが必要か
  3. 担当はいつまでか(今回だけか、今後も続くのか)

確かめるときは、感想ではなく事実で伝えます。「大変です」ではなく、「前回は日程調整から精算まで合計で約4時間かかりました」のように、かかった時間と作業を示すと、上司も判断しやすくなります。伝え方の整理は事実と解釈を分けて伝える方法が参考になります。

引き受けるなら、作業を定型にする

引き受けると決めたら、毎回ゼロから考えずに済むよう、作業を型にします。

作業型にする方法
日程の調整候補日を3つに絞り、日程調整用のツールや共有の表で一度に集める。返事の締め切りを最初に書く
出欠の管理出欠・アレルギーや苦手な食べ物・二次会の参加を、1つのフォームでまとめて集める
店選び条件(人数、1人あたりの予算、駅からの距離、個室の要否)を先に決め、条件に合う店を2つだけ示して選んでもらう
会費と集金会費を案内文に先に書く。支払いは当日現金か、事前の送金かを決め、立て替えをしない
取り消し「前日以降の取り消しは会費をいただきます」のように、案内文に一文入れておく
引き継ぎ案内文、フォーム、店の候補、会費の計算を1つの資料にまとめ、次の幹事に渡す

個別に声をかけて催促する作業がいちばん時間を食います。締め切りと取り消しの扱いを最初の案内に書いておけば、後から一人ひとりに連絡する回数を減らせます。

持ち回りの決まりを、職場に作ってもらう

同じ人に幹事が集まり続けるのは、決め方がないからです。個人で断り続けるより、決め方そのものを変えてもらうほうが根本的な対策になります。上司や、行事をまとめる担当者に、次のような決まりを提案します。

  • 幹事は名簿の順に持ち回りにする(役職に関係なく回す、または一定の年次以上も含める)
  • 会の目的と予算の上限を、開く側が先に決める
  • 参加は任意と明記し、欠席の理由を聞かない
  • 会社の行事として開く会の準備は、業務として扱う
  • 案内文やフォームの型を共有の場所に置き、誰が幹事になっても同じ手順で済むようにする

提案は「自分がやりたくない」ではなく、「特定の人に作業が偏ると、本来の仕事の時間が削られる」という形で出します。若手のうちに雑務ばかりが回ってくる職場の見分け方は下積みで力がつく職場との違いで整理しています。

実行するときに気をつけたいこと

立て替えを引き受けない

幹事の負担でいちばん重くなりやすいのが、店への支払いを個人で立て替えることです。未払いが出ると、回収の手間と気まずさがすべて幹事に残ります。会費は先に集めるか、会社の経費の手続きに乗せるか、どちらかにして、個人の立て替えを前提にしないようにします。

欠席した人の名前を上に報告しない

「誰が来なかったか教えて」と頼まれることがあります。任意の集まりの欠席者を記録して上に渡すと、参加を事実上の義務にする手伝いをすることになります。出欠は人数の把握と店の予約のためだけに使い、それ以上の報告は求められても控えるのが無難です。

お酒を勧める役まで引き受けない

幹事は場の段取りをする役で、参加者にお酒を勧めたり、飲めない人に無理をさせたりする役ではありません。飲み放題の店を選ぶときも、ソフトドリンクが選べることを確かめ、案内文にも書いておくと、飲まない人が参加しやすくなります。

断ったあとの扱いを記録しておく

断ったあとに、仕事を外される、無視される、評価で不利な扱いを示唆されるといったことが起きた場合は、いつ、誰に、何を言われたかを、その日のうちに記録します。記録があると、相談するときに状況を正確に伝えられます。

飲み会の話だけで終わらせない

幹事の押し付けが続く職場では、ほかの雑務や、愚痴の聞き役のような役割も同じ人に偏りがちです。会話の場での境界線の引き方は職場の愚痴や悪口との距離の取り方で整理しています。

相談できる窓口

自分で断っても状況が変わらない、断ったことで不利な扱いを受けたというときは、次の窓口に相談できます。

  • 社内のハラスメント相談窓口:事業主には、パワーハラスメントの相談に応じる体制を整えることが義務づけられています(中小企業も2022年4月から)。
  • 総合労働相談コーナー:厚生労働省の案内によると、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などの378か所に設置され、いじめ・嫌がらせ、パワハラを含むあらゆる分野の労働問題を対象に、予約不要・無料で相談できます。
  • 労働基準監督署:業務として指示された準備の時間が労働時間として扱われていない、賃金が払われていないといった、労働時間・賃金の問題の相談先です。
  • 弁護士:個別の事案で法的な判断が必要なときは、弁護士に相談します。

飲み会の幹事は、断れる場合もあれば、仕事として扱うべき場合もあります。まずは次に頼まれたとき、その会が業務の延長か任意の集まりかをチェックリストで確かめ、引き受けるなら「どこまでやるか」と「次は誰か」をその場で決めてください。対人関係・調整の記事一覧では、ほかの場面の境界線の引き方も整理しています。

参考資料