若手が育つ職場かどうかは、研修の豪華さだけでは決まりません。統計から見えるのは、教える人と時間が確保されていること、そして若手が辞めずに経験を積み続けられることの2つが条件だということです。
厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査では、人材育成に何らかの問題があるとした事業所が80.1%にのぼり、その理由の上位は「指導する人材が不足している」「人材を育成しても辞めてしまう」「人材育成を行う時間がない」でした。育成に熱心な会社でも、この壁にぶつかっています。この記事では統計から会社側の実情を読み、応募の前に確かめられる5つの条件に整理します。
会社は若手をどう育てているか
令和5年若年者雇用実態調査によると、若年正社員の育成を行っている事業所は77.9%でした。育成の方法(複数回答)は次のとおりで、仕事をしながら教えるOJTが中心です。
| 若年正社員の育成方法 | 実施している事業所の割合 |
|---|---|
| OJT(仕事をしながら指導) | 69.8% |
| OFF-JT(仕事を離れた研修) | 35.2% |
| 自己啓発への支援 | 33.1% |
| ジョブローテーション | 24.0% |
OJTが中心だということは、配属された職場の先輩や上司が、どれだけ教える余裕を持っているかで、育ち方が大きく変わるということです。研修の制度が整っていても、配属先に教える人がいなければ、日々の仕事から学ぶ機会は限られます。
育成の壁は「教える人」と「時間」
能力開発基本調査で、人材育成に問題があるとした事業所が挙げた理由(複数回答)は次のとおりです。
| 人材育成の問題点 | 割合 |
|---|---|
| 指導する人材が不足している | 59.5% |
| 人材を育成しても辞めてしまう | 51.6% |
| 人材育成を行う時間がない | 45.5% |
| 鍛えがいのある人材が集まらない | 27.5% |
| 育成を行うための金銭的余裕がない | 14.3% |
| 人材育成の方法がわからない | 10.0% |
上位の3つは互いにつながっています。教える人が足りず、忙しくて時間が取れない職場では、若手が十分に育たないまま辞め、残った人の負担がさらに増える、という循環が起きやすくなります。反対に言えば、残業に余裕があり、若手が定着している職場は、教える側にも時間があると考えられます。
お金が理由だとする事業所は14.3%と少なく、育成の差は予算より「人と時間」から生まれていることが分かります。
会社が取り組んでいる定着の対策
同じ若年者雇用実態調査で、若年正社員の定着のための対策を行っている事業所は73.7%でした。対策の中で最も多かったのは「職場での意思疎通の向上」(59.7%)で、「採用前の詳細な説明・情報提供」(58.4%)、「本人にあった配置」(55.6%)が続きます。
大きく伸びたのが「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」で、前回の平成30年調査の37.8%から52.9%に増えました。働き方を整えることが、若手の定着の対策として位置づけられてきています。
一方で、過去1年間に自己都合で辞めた若年労働者がいた事業所は40.9%(若年正社員に限ると28.4%)でした。また、初めての会社を1年未満で辞めた若者は、辞めた理由に「人間関係がよくなかった」を挙げた割合が最も高くなっています。入社してすぐの時期に、相談できる相手がいるかどうかが大きいことがうかがえます。
応募前に確かめられる5つの条件
統計から見えた点を、応募の前に確かめられる形にすると、次の5つになります。
| 条件 | なぜ大事か | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 1. 指導の担当者が決まっている | OJT中心の育成では、教える人の有無が育ち方を左右する | 「配属先で指導を担当する方は決まっていますか」 |
| 2. 独り立ちまでの目安がある | 計画のない「見て覚える」から区別できる | 「独り立ちするまでの期間と、その間の流れを教えてください」 |
| 3. 教える側に時間の余裕がある | 忙しさが育成の壁の上位 | 配属先の月平均の残業、繁忙期の様子 |
| 4. 上司以外の相談役がいる | 1年未満の離職は人間関係の理由が多い | メンター制度、キャリアの相談の仕組み |
| 5. 若手が残っている | 「育てても辞める」職場では教える人も育たない | 新卒者等の採用者数と離職者数、若手の在籍人数 |
1と2は、研修制度の書き方から読み取れることもあります。読み方と質問の例は研修制度のある会社の見分け方にまとめています。
4の相談の仕組みについては、能力開発基本調査で、正社員に対してキャリアコンサルティングを行う仕組みがある事業所は48.4%でした。半数に満たないので、ある会社ではそれ自体が材料になります。若者雇用促進法の青少年雇用情報でも、メンター制度とキャリアコンサルティングの制度の有無は示される項目です。
5は数字で確かめられる条件です。探し方は新卒の離職率を企業ごとに調べる方法で説明しています。
会社の仕組みと、自分でできることを分けて考える
育つかどうかを、すべて会社のせい、あるいは本人の努力のせいにすると、判断を誤ります。統計を見ると、両方に手がかりがあります。
会社の仕組みの側では、キャリアコンサルティングを行う仕組みは規模が大きいほど整っている傾向があり、1,000人以上の企業では正社員に仕組みがある事業所が72.6%でした。一方、労働者1人あたりの自己啓発支援への支出は平均0.4万円、OFF-JTへの支出は平均2.0万円(いずれも令和6年度に費用を支出した企業の平均)でした。
自分の側では、令和7年度の同じ調査で、令和6年度の1年間にOFF-JTを受けた正社員は44.5%、自己啓発を行った正社員は43.3%でした。正社員でも、会社を通した研修を受けていない人のほうが多いのが実情です。
| 分けて考えること | 会社の仕組みの問題 | 自分で取れる行動 |
|---|---|---|
| 教える人がいない | 指導の担当を決めていない、人手が足りない | 何を教わりたいかを具体的にして、上司に相談する |
| 学ぶ時間がない | 残業が多く、育成の時間を取れない | 所定外労働の多い職場かどうかを、入社前に数字で確かめる |
| 学ぶ機会が少ない | 研修や自己啓発の支援がない | 公的な職業訓練や資格の勉強など、社外の機会も含めて探す |
入社前にできるのは、会社の仕組みの側を数字と質問で確かめることです。入社後に自分でできることは、その上に積み上げるものと考えると、会社選びで見るべき点がはっきりします。
見落としやすい点
- 研修の日数の長さを、育成の手厚さと取り違える:集合研修が長くても、配属後の指導が手薄なことがあります。見るべきは配属後です
- 「若手が多い」を「若手が育つ」と読む:若手が多いのは、入れ替わりが多い結果のこともあります。平均年齢と平均勤続年数を並べて確かめます
- 会社全体の制度と、配属先の実態を混同する:制度は会社全体、育成の実際は部署ごとです。配属先の話を聞けるかどうかが分かれ目です
育つ職場かどうかは、最終的には若手が残っているかどうかに表れます。定着の見方全体は早期離職が少ない会社の見分け方にまとめています。
まとめ
- 若年正社員の育成を行う事業所は77.9%で、方法はOJTが69.8%と中心(令和5年若年者雇用実態調査)
- 育成に問題がある事業所の理由の上位は、指導する人材の不足(59.5%)、育てても辞める(51.6%)、時間がない(45.5%)(令和7年度能力開発基本調査)
- 育成の差は予算より「教える人と時間」から生まれる
- 定着の対策として、労働時間の短縮・有給休暇の取得奨励が52.9%に増えた
- 応募前には、指導の担当者、独り立ちの目安、教える側の余裕、相談役、若手の定着の5つを確かめる
若手の会社選びのほかの記事は、若手・第二新卒の会社選びの一覧から探せます。