求人票の「研修制度あり」は、法律で書くことが決まっている項目ではありません。職業安定法の施行規則が募集のときに示すよう求めているのは、仕事の内容、契約期間、試用期間、就業場所、労働時間、賃金、社会保険などで、研修はそこに入っていないため、書き方も中身も会社によってばらばらです。
見分けるときの材料は2つあります。1つは若者雇用促進法の青少年雇用情報で、研修の有無と内容、自己啓発の支援、メンター、キャリアコンサルティング、社内検定の5項目が決まった形で示されます。もう1つは国の能力開発基本調査で、会社の規模によって研修の実施率に差があることが分かります。この2つを使った確かめ方を説明します。
求人票の研修の欄は、会社が任意で書いている
職業安定法第5条の3と施行規則第4条の2第3項は、労働者を募集する会社が示さなければならない事項を並べています。
| 必ず示す事項(施行規則の項目) | 研修との関係 |
|---|---|
| 従事する業務の内容(変更の範囲を含む) | 入社直後の業務が研修なのか配属先の業務なのかを読む手がかり |
| 契約期間、試みの使用期間 | 研修期間と試用期間は別のもの。試用期間は必ず示される |
| 就業の場所(変更の範囲を含む) | 研修の場所と配属の場所が違う場合がある |
| 労働時間、賃金、社会保険など | 研修期間中の条件が違う場合は、ここに書かれるはず |
研修の内容は必須の項目ではないので、「研修制度あり」の一言だけの求人も、研修の日程まで書いた求人もあり得ます。一言だけの求人を「研修がない」と決めつけることも、「充実している」と受け取ることもできない、という前提で読みます。
公開データで決まった形で見られる5項目
若者雇用促進法の施行規則第3条は、青少年雇用情報のうち「職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況」として、次の5項目を挙げています。新卒者等の募集をする会社が、採用ページやハローワークの求人票、しょくばらぼなどで示していることがあります。
| 項目 | 何が分かるか | あわせて確かめたいこと |
|---|---|---|
| 研修の有無と内容 | 入社時・その後の研修があるか、何を学ぶか | 期間、対象者(新卒だけか中途も含むか)、仕事を離れて受けるか |
| 自己啓発の支援の有無と内容 | 通信教育・資格取得などへの補助 | 補助の上限、対象の資格、受けるための条件 |
| メンター制度の有無 | 新卒者に、上司とは別の相談役を付ける仕組み | 誰が担当するか、期間はどれくらいか |
| キャリアコンサルティングの制度の有無と内容 | 自分のキャリアについて相談できる機会 | 定期的に行うのか、求めたときだけか |
| 社内検定などの制度の有無と内容 | 仕事に必要な知識・技能を社内で認定する仕組み | 昇格や手当と結びついているか |
応募者から求められた場合、会社は3つの分野から1つ以上を示せば足りるので、この分野からは1項目だけが示されることもあります。ユースエール認定企業は青少年雇用情報をすべて公表しているため、5項目がそろって見られます。認定の中身はユースエール認定の基準と探し方にまとめています。
統計で見る、研修の実施率の差
厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査では、正社員に仕事を離れて行う研修(OFF-JT)を実施した事業所は70.9%、日常の業務の中で計画を立てて指導する「計画的なOJT」を実施した事業所は60.6%でした。
会社の規模別に見ると、はっきりした差があります。
| 企業規模 | 正社員へのOFF-JTを実施 | 正社員への計画的なOJTを実施 |
|---|---|---|
| 30〜49人 | 53.0% | 44.4% |
| 50〜99人 | 65.5% | 51.3% |
| 100〜299人 | 79.6% | 70.4% |
| 300〜999人 | 85.2% | 69.8% |
| 1,000人以上 | 85.4% | 78.4% |
規模の小さい会社ほど、研修を体系立てて行っている割合は下がります。ただしこれは事業所単位の平均で、小さい会社でも先輩が付いて丁寧に教える職場はあります。小さい会社では、研修の「制度」より、誰がどれくらいの期間教えてくれるかを具体的に聞くほうが実態に近づけます。
また、計画的なOJTを正社員の職層別に見ると、新入社員に実施した事業所が52.3%で、中堅社員(38.7%)や管理職層(24.9%)より高くなっています。入社してすぐの時期の育て方が、会社ごとの差が出やすいところです。
求人票の書き方ごとの読み方
架空の求人票の書き方を例に、読み取れることと、確かめたいことを並べます。
| 書き方の例 | 読み取れること | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 「研修制度あり」 | 何らかの研修がある | 内容・期間・対象。一言だけなら中身を尋ねる |
| 「OJTで丁寧に指導します」 | 仕事をしながら教える | 教える担当者は決まっているか、計画や到達の目安はあるか |
| 「入社後2週間の集合研修(ビジネスマナー・商品知識)」 | 仕事を離れた研修がある | 集合研修のあと、配属先での指導はどう続くか |
| 「資格取得支援制度(受験料補助)」 | 自己啓発の支援がある | 補助の上限、合格が条件か、在籍の条件があるか |
| 「メンター制度あり」 | 新卒に相談役が付く | 相談役は同じ部署の人か、期間はどれくらいか |
「OJTで丁寧に指導」は、制度というより教え方の説明です。能力開発基本調査の「計画的なOJT」は、教育訓練の計画にもとづいて期間や内容などを具体的に定め、段階的・継続的に行うものを指しており、配属先で見よう見まねで覚えることとは区別されています。
面接・説明会で確かめる4つの質問
- 「入社後、独り立ちするまでの期間の目安と、その間の流れを教えてください」
- 「配属先で指導を担当する方は決まっていますか」
- 「昨年入社された方は、今どのような仕事を担当されていますか」
- 「研修の内容は、中途で入社した場合も同じですか」
3つ目の質問は、研修の成果を具体的な姿で聞くものです。研修の話と定着の話は重なるところが多く、育成の仕組みを統計から見た話は若手が育つ職場の条件で扱っています。
落とし穴
- 研修期間と試用期間を混同する:研修が終わっても試用期間が続くことも、その逆もあります。試用期間と、その間の条件は求人票で確かめます
- 研修の長さだけで比べる:長い集合研修が、配属先での指導の手厚さを意味するとは限りません
- 新卒と中途で同じだと思い込む:第二新卒で入る場合、新卒向けの研修には入らないことがあります
研修の話は定着の話の一部です。離職の数字や勤続年数を含めた全体の見方は、早期離職が少ない会社の見分け方にまとめています。
まとめ
- 研修は、職業安定法で募集時に示すよう決まっている項目ではない。求人票の書き方は会社ごとに違う
- 決まった形で見られるのは、青少年雇用情報の5項目(研修・自己啓発支援・メンター・キャリアコンサルティング・社内検定)
- 令和7年度の能力開発基本調査では、正社員へのOFF-JTの実施は70.9%、計画的なOJTは60.6%。規模が小さいほど低い
- 小さい会社では、制度の有無より、誰がどのくらいの期間教えるかを具体的に聞く
- 研修期間と試用期間を分け、新卒向けと中途向けの違いも確かめる
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