「月平均残業◯時間」という数字は、何を超えた時間を数えたのかで意味が変わります。会社の決めた勤務時間を超えた時間(所定外労働時間)と、法律の1日8時間・週40時間を超えた時間(法定時間外労働)は別のもので、同じ働き方でも数字が違って出ます。
比べるときは、まず数字の種類をそろえます。そのうえで、国の統計(一般労働者の所定外労働時間は月13.2時間、2025年分の毎月勤労統計調査)や、公表している会社の中央値と並べ、最後に平均では見えない繁忙期の残業を確かめます。固定残業代の時間数は、実際の残業の平均とは別物です。順に説明します。
「残業」の数字は少なくとも2種類ある
所定外労働時間と法定時間外労働
労働基準法第32条は、休憩時間を除いて1週40時間、1日8時間を超えて働かせてはならないと定めています。これが法定労働時間です。一方、会社ごとに就業規則で決めた勤務時間が所定労働時間で、法定労働時間より短く決めている会社もあります。
| 数字の種類 | 何を超えた時間か | 主に出てくる場所 |
|---|---|---|
| 所定外労働時間 | 会社が決めた所定労働時間 | 若者雇用促進法の青少年雇用情報(月平均の所定外労働時間)、毎月勤労統計調査 |
| 法定時間外労働(休日労働を含むことがある) | 法定の1日8時間・週40時間 | 女性活躍推進法にもとづく公表(月平均の残業時間)、36協定の上限の管理 |
しょくばらぼでは、「月平均の所定外労働時間」と「月平均の残業時間(法定時間外・休日労働)」の両方が載っていることがあり、名前が似ているので混同しやすいところです。
後者は、女性の活躍推進企業データベースの説明では、1年間の法定時間外労働と法定休日労働の合計を12か月と対象の人数で割って求めます。管理監督者、事業場外みなし労働時間制や裁量労働制の人、短時間労働者は計算から除かれるので、管理職の長い残業はこの数字には表れません。
計算例:同じ働き方で数字が倍違う
架空の会社で、所定労働時間が1日7時間30分、ある社員が毎日8時間30分働き、月に20日出勤したとします。
| 数字の種類 | 1日あたり | 月20日の合計 |
|---|---|---|
| 所定外労働時間(7時間30分を超えた分) | 1時間 | 20時間 |
| 法定時間外労働(8時間を超えた分) | 30分 | 10時間 |
同じ働き方なのに、所定外で数えると20時間、法定時間外で数えると10時間になります。所定労働時間が短い会社ほど、所定外の数字は法定時間外より大きく出ます。会社どうしを比べるときは、同じ種類の数字で比べます。
求人票の「残業 月平均◯時間」はどちらか
求人票や採用ページの「残業 月平均◯時間」は、所定外なのか法定時間外なのか、会社全体か募集する職種だけか、が書かれていないことがよくあります。しょくばらぼに同じ会社の数字があれば、並べてみます。
| 見比べた結果 | 考えられること | 確かめること |
|---|---|---|
| ほぼ同じ | 同じ集計をもとにしている可能性が高い | どの年度の数字か |
| 求人票のほうが大きい | 募集する職種や部署の数字を載せている、または所定外で数えている | 数字の対象と種類 |
| 求人票のほうが小さい | 集計の時点が違う、残業の少ない部署を含めた全社の平均である | 募集する職種の数字 |
どちらが正しいかを決めるためではなく、数字の対象を尋ねるきっかけとして使います。「求人票の月平均◯時間は、募集している職種の数字でしょうか」と聞けば、答えにくい質問にはなりません。
目安になる数字
国の統計
厚生労働省の毎月勤労統計調査(2025年分結果確報、事業所規模5人以上)では、一般労働者の所定外労働時間は月13.2時間でした。この調査の所定外労働時間には、早出・残業・臨時の呼出・休日出勤などの実労働時間が含まれます。産業による差は大きく、次のとおりです。
| 産業(一般労働者) | 所定外労働時間(月) |
|---|---|
| 運輸業、郵便業 | 24.1時間 |
| 情報通信業 | 16.5時間 |
| 製造業 | 14.7時間 |
| 建設業 | 13.5時間 |
| 卸売業、小売業 | 11.3時間 |
公表している会社の中央値
Mixum の会社名鑑に載せている会社のうち、月平均の所定外労働時間を公表している2,760社の中央値は7.7時間、月平均の残業時間(法定時間外・休日労働)を公表している14,702社の中央値は11.0時間でした(いずれも厚生労働省「しょくばらぼ」の公表値、2026年10月1日の集計)。
計算例とは逆に法定時間外のほうが大きく出ていますが、2つは公表している会社の顔ぶれが違い、休日労働を含むかどうかも違うため、直接は比べられません。また、どちらも数字を公表している会社だけの値で、業種全体の平均ではありません。公表しているのは比較的規模の大きい会社や、開示に積極的な会社に偏っている可能性があります。
国の統計より公表企業の中央値が小さいのは、この偏りに加え、調査の対象や時点が違うためと考えられます。どちらか1つを「普通の水準」と決めつけず、幅として見るのが安全です。
平均では見えないもの
繁忙期と、残業が偏る人
月平均は1年間をならした数字です。決算期や繁忙期に月40時間を超え、ほかの月はほとんどない職場でも、平均は小さく出ます。また、部署や人による偏りも平均からは分かりません。
ユースエール認定の基準が、月平均の所定外労働時間20時間以下に加えて「法定時間外労働が月平均60時間以上の正社員が1人もいないこと」を求めているのは、この偏りを除くためです。認定の中身はユースエール認定の基準と探し方で扱っています。
固定残業時間は「平均」ではない
求人票に「固定残業代(月20時間分)」とあっても、それはその時間分の割増賃金を定額で払うという賃金の決め方で、実際の残業の平均ではありません。若者雇用促進法にもとづく指針は、固定残業代を採る場合に、次の3つをすべて示すよう求めています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法
- 固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働には、割増賃金を追加で支払うこと
3つのうち欠けているものがあれば、応募の前に確かめます。
確かめる手順
- 数字の種類を確かめる:所定外か、法定時間外か、休日労働を含むか
- 対象を確かめる:正社員だけか、全従業員か。青少年雇用情報は、正社員の募集では正社員の数字を示す決まりです
- 期間を確かめる:どの事業年度の平均か
- 幅を聞く:「一番多い月はどのくらいでしたか」「配属予定の部署の平均はどのくらいですか」
- 所定労働時間を確かめる:所定外の数字を見るときは、1日の所定労働時間も一緒に見る
1社目で残業に困った人が次の会社を比べる手順は、第二新卒の会社選びで見る数字にもまとめています。定着の見方全体は早期離職が少ない会社の見分け方をご覧ください。
まとめ
- 残業の数字には、所定外労働時間(会社の勤務時間を超えた分)と法定時間外労働(1日8時間・週40時間を超えた分)がある
- 所定労働時間が短い会社ほど、所定外の数字は大きく出る。比べるときは種類をそろえる
- 国の統計では、一般労働者の所定外労働時間は月13.2時間(2025年分)。運輸業・郵便業は24.1時間
- 公表している会社の中央値は、所定外7.7時間、法定時間外・休日労働11.0時間(顔ぶれが違うため直接は比べない)
- 固定残業時間は賃金の決め方で、実際の平均ではない。平均に隠れる繁忙期は面接で聞く
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