平均勤続年数が短いというだけで、「人が辞めやすい会社」とは決められません。今いる人の在籍年数の平均なので、設立から間もない会社、最近たくさん採用した会社、社員が若い会社では、辞める人が少なくても短く出ます。

目安になるのは、国の統計で一般労働者の平均勤続年数が12.7年(令和7年賃金構造基本統計調査)であることと、しょくばらぼで数字を公表している会社の中央値が11.9年であることです。これより短いときは、平均年齢・設立からの年数・採用の人数の3つを並べてから判断します。この記事では、その読み方を順に説明します。

平均勤続年数が短くなる4つの理由

平均勤続年数は「辞めた人の在籍年数」ではなく、調べた時点で在籍している人が、入社してから何年たったかを平均したものです。国の賃金構造基本統計調査でも、勤続年数は「その企業に雇い入れられてから調査対象期日までに勤続した年数」として数えられています。そのため、次のような事情で短くなります。

理由何が起きているか見分けるための材料
設立が新しい一番古い社員でも在籍が数年しかない設立年
採用を急に増やした入社1〜2年の人が多数を占める直近の採用者数、従業員数の推移
社員が若い新卒の割合が高く、在籍の年数がまだ短い平均年齢
辞める人が多い数年で入れ替わるため、長く在籍する人が増えない新卒者等の離職者数、中途採用の多さ

表の4つ目だけが「定着していない」ことを示しています。ほかの3つは会社の成り立ちや成長の結果で、働き方の良し悪しとは別の話です。

目安として使える数字

国の統計(賃金構造基本統計調査)

令和7年の賃金構造基本統計調査では、一般労働者(短時間労働者以外)の平均勤続年数は12.7年、平均年齢は44.4歳でした。男性は14.2年、女性は10.4年です。

産業ごとには大きな差があります。平均年齢とあわせて見ると、勤続年数の短さが若さによるものかどうかの見当がつきます。

産業平均勤続年数平均年齢
電気・ガス・熱供給・水道業17.6年43.1歳
製造業15.3年44.1歳
卸売業、小売業14.5年44.3歳
建設業13.7年45.5歳
運輸業、郵便業12.9年48.7歳
情報通信業12.3年40.2歳
医療、福祉9.9年44.0歳
宿泊業、飲食サービス業9.6年43.1歳

運輸業・郵便業は平均年齢が48.7歳と高い一方、勤続年数は12.9年で全体とほぼ同じです。年齢の割に勤続が短い形で、ほかの仕事を経て入る人が一定数いることがうかがえます。反対に情報通信業は平均年齢が40.2歳と若く、勤続年数の短さの一部はその若さで説明できます。医療・福祉と宿泊業・飲食サービス業は、平均年齢が全体とほぼ同じでも、勤続年数は10年を切っています。

しょくばらぼで数字を公表している会社の中央値

Mixum の会社名鑑に載せている会社のうち、正社員の平均継続勤務年数を公表している2,755社の中央値は11.9年でした(厚生労働省「しょくばらぼ」の公表値、2026年10月1日の集計)。真ん中の半分の会社は8.3年から15.1年の間に入っています。

業種公表している会社の数中央値下から4分の1上から4分の1
全業種2,755社11.9年8.3年15.1年
製造業572社13.8年11.0年16.0年
建設業1,042社13.0年10.0年16.2年
情報通信業269社7.3年4.0年11.0年
医療、福祉202社9.0年6.2年10.9年

これは数字を公表している会社だけの値で、業種全体の平均ではありません。公表しているのは比較的規模の大きい会社や、職場の情報の開示に積極的な会社に偏っている可能性があります。国の統計と見比べて、おおよその位置を知るために使ってください。

表の「下から4分の1」は、公表している会社を短い順に並べたとき、4分の1の会社がその値以下に入るという意味です。気になる会社の数字がこの値を下回っていれば、同じ業種の公表企業の中では短い側に入ります。ただしそれは「確かめる理由がある」という印で、すぐに避ける理由にはなりません。次の手順で背景を確かめます。

短く見えたときに確かめる順番

架空の会社で考えます。社員数80人、平均継続勤務年数5.0年、情報通信業の会社です。

  1. 業種の目安と比べる:情報通信業の公表企業の中央値は7.3年、下から4分の1が4.0年です。5.0年は短めですが、この業種では珍しい水準ではありません
  2. 平均年齢を見る:平均年齢が30歳前後なら、多くの人は社会に出てまだ8年ほどです。勤続5年は短すぎるとは言えません
  3. 設立年を見る:設立から7年の会社なら、最長でも7年しか在籍できず、平均が5年なら古くからの社員がよく残っていることになります
  4. 採用と離職の実数を見る:新卒者等の採用者数と離職者数が分かれば、「若いから短い」のか「入れ替わりが多いから短い」のかを分けられます。探し方は新卒の離職率を企業ごとに調べる方法で説明しています

逆に、平均年齢が40代なのに勤続が3〜4年という組み合わせは、中途で入って数年で辞める人が多い可能性があり、辞める理由を確かめる価値があります。

数字の定義を確かめる質問

公表されている数字だけでは、何を平均したのかが分からないことがあります。説明会や面接で聞くなら、次のように定義を確かめる聞き方が答えてもらいやすくなります。

確かめたいこと聞き方の例
対象「公表されている平均継続勤務年数は、正社員だけの数字でしょうか」
時点「いつ時点の在籍者で計算した数字でしょうか」
中途入社の多さ「社員のうち、中途で入社された方はどのくらいの割合でしょうか」
若手の在籍「入社3年目までの方は、配属予定の部署に何人ほどいらっしゃいますか」

「辞める人は多いですか」と正面から聞くより、数字の定義を尋ねるほうが、具体的な答えが返ってきやすく、比べる材料にもなります。

長ければ安心、とも言えない

平均勤続年数が長い会社にも、読み方の注意があります。

  • 若手が少ない会社では、ベテランの長い在籍が平均を押し上げます。新卒採用を長く止めていた会社では、若手が定着しているかは平均からは分かりません
  • 正社員だけの数字の場合、契約社員として入る人の定着は反映されていません
  • グループ内の転籍の扱いで、勤続年数を通算しているかどうかが会社によって違います

平均は「その会社にいる人全体」の姿です。自分が入る年代や職種で人が残っているかは、若手の離職の数字や、若手が育つ職場の条件にある育成の仕組みとあわせて確かめます。平均継続勤務年数を含む定着の見方の全体は、早期離職が少ない会社の見分け方にまとめています。

まとめ

  • 平均勤続年数は今いる人の在籍年数の平均で、辞めた人の在籍年数ではない
  • 設立の新しさ・採用の急増・社員の若さでも短くなる。定着していないことを示すのは4つの理由のうち1つだけ
  • 目安は、国の統計で一般労働者12.7年(令和7年)、公表している会社の中央値11.9年
  • 業種の差が大きい。情報通信業は公表企業の中央値7.3年、製造業は13.8年
  • 短いときは、業種の目安 → 平均年齢 → 設立年 → 採用と離職の実数の順に確かめる
  • 長くても、若手が少ない・正社員だけの数字などの場合は、若手の定着は別に確かめる

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参考資料