会社ごとの「新卒3年以内の離職率」という率そのものを、公表する義務はありません。そのかわり、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)で、新卒者等の募集をする会社は、直近3事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数などを、応募者から求められたら示す仕組みがあります。

探す順番は、①会社の採用ページや求人票、②厚生労働省の「しょくばらぼ」、③それでも見つからなければ会社に書面やメールで提供を求める、の3段です。ただし、求めても採用者数と離職者数が出てくるとは限らない点に注意が必要です。理由と、受け取った数字の読み方まで順に説明します。

会社ごとの離職の数字は、どういう仕組みで出てくるのか

法律が定めているのは「率」ではなく「情報提供」

若者雇用促進法第13条は、学校卒業見込者等を条件にした募集を行う会社に、青少年雇用情報を提供するよう努めることを求めています。さらに、応募した人や応募しようとしている人から求めがあったときは、提供しなければなりません。ハローワークや職業紹介事業者に新卒者等の求人を出す場合も、第14条で同じ扱いです。

示す情報は、施行規則第3条で3つの分野に分かれています。採用者数と離職者数は、その1つ目の分野に入っています。

分野施行規則に書かれている項目
① 募集・採用に関する状況直近3事業年度の新卒者等の採用者数と離職者数、男女別の採用者数、平均継続勤務年数
② 職業能力の開発・向上に関する取組研修、自己啓発の支援、メンター、キャリアコンサルティング、社内検定
③ 職場への定着の促進に関する取組月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育休の取得状況、役員・管理職の女性の割合

求めても、離職者数が出てくるとは限らない

ここが一番の落とし穴です。応募者が求めた場合、会社が示すのは3つの分野それぞれから1つ以上です(施行規則第4条第3項)。①の分野から「平均継続勤務年数」だけを示すことも、法律上は認められています。

つまり「離職者数を教えてほしい」と求めても、別の項目が返ってくる場合があります。そのときは、改めて採用者数と離職者数を尋ねるか、ほかの材料(平均継続勤務年数、しょくばらぼの数字、ユースエール認定の有無)と組み合わせて判断することになります。

数字を探す3つの場所

1. 会社の採用ページと求人票

新卒採用のページや募集要項に「直近3年間の新卒採用者数・離職者数」の表を載せている会社があります。ハローワークの新卒者向けの求人票にも、青少年雇用情報を書く欄があります。まずはここを見ます。

2. しょくばらぼ(職場情報総合サイト)

厚生労働省の「しょくばらぼ」は、会社が登録した職場の情報を横断して見られるサイトです。会社名で探すと、新卒者等の採用者数と離職者数、平均継続勤務年数、所定外労働時間などが載っている場合があります。登録していない会社は出てこないので、見つからなくても「数字を隠している」とは言えません。

3. 会社に提供を求める

公開されていなければ、会社に求めます。施行規則第4条第2項で、求めるときに明らかにする事項が決まっています。

  • 氏名
  • 住所またはメールアドレス
  • 学校名と卒業(見込み)年月、または修了(見込み)年月
  • 青少年雇用情報の提供を求める旨

メールで尋ねる場合は、たとえば次のような書き方になります。架空の応募者の例です。

件名:青少年雇用情報のご提供のお願い(〇〇大学 〇〇学部 202X年3月卒業見込み 架空花子) 新卒採用ご担当者様 貴社の202X年度新卒採用に応募を検討しております、〇〇大学の架空花子と申します。若者雇用促進法に基づく青少年雇用情報のうち、直近3事業年度の新卒者等の採用者数および離職者数についてご提供いただけますでしょうか。連絡先は本メールのアドレスです。

受け取った数字の読み方

国の統計とは数え方が違う

厚生労働省が毎年公表する「新規学卒就職者の離職状況」は、雇用保険の加入の届けをもとに、就職した事業所を離れた人を、理由を問わず数えた推計です。直近の令和4年3月卒業者では、就職後3年以内の離職率は大学卒で33.8%でした。会社が示す数字と並べるときは、違いを知っておく必要があります。

比べる点国の統計(新規学卒就職者の離職状況)会社の青少年雇用情報
単位事業所(雇用保険の適用事業所)会社
期間卒業年の3月末から3年後の3月末まで会社の事業年度ごと
対象その春に新卒で就職した人会社が「新卒者等」として採用した人
離職の数え方その事業所の雇用保険を離れた人(理由を問わない)会社の集計による(転籍・出向の扱いは会社によって違う)
公表毎年、全国・規模別・産業別に公表会社ごとに、公開または求めに応じて提供

国の数字は「世の中の目安」、会社の数字は「その会社の実績」です。桁の近さだけで良し悪しを決めず、数え方の違いを踏まえて見ます。

年度ごとに分けて見る

会社の表は、事業年度ごとに採用者数と離職者数が並ぶ形が多く見られます。架空の会社の例で考えます。

事業年度採用者数離職者数
3年前10人3人
2年前8人1人
前年12人0人

3年分を足すと30人中4人で約13%ですが、前年に入った人はまだ1年ほどしか働いていません。入社から時間がたっている年度ほど、離職者が多くなるのは自然です。見るべきなのは、一番古い年度(この例では10人中3人)です。また、「いつの時点までに辞めた人か」は表だけでは分からないことが多いので、気になるときは尋ねます。

確かめておきたい4つの点

  • 正社員の数字か:正社員の募集では正社員の数字を示す決まりです(施行規則第3条第2項)。契約社員の採用と混ざっていないかを確かめます
  • 事業年度の区切り:4月始まりとは限りません。決算期が違う会社どうしを比べると、期間がずれます
  • グループでまとめて採用していないか:採用はグループ一括、配属は各社という形だと、どの会社の数字かを確かめる必要があります
  • 採用ゼロの年がないか:採用がない年は離職者も0人になり、定着しているように見えます

採用人数が少ない会社で1人辞めると率が大きく動く点は、早期離職が少ない会社の見分け方でも触れています。

数字だけで決めないための組み合わせ

離職者数は「結果」の数字で、辞めた理由までは分かりません。ほかの数字と組み合わせると、背景が見えやすくなります。

  • 同じ①の分野の平均継続勤務年数。読み方は平均勤続年数の読み方にまとめています
  • ③の分野の月平均の所定外労働時間。求人票の残業の数字との違いは月平均残業時間の読み方を参考にしてください
  • ユースエール認定。認定の条件に「直近3事業年度の新卒者等の正社員の離職率が20%以下」が入っているため、認定企業は離職率の水準がある程度分かります。詳しくはユースエール認定の基準と探し方をご覧ください

情報提供を求めても応じてもらえない、示された数字が明らかに実態と違うと感じる、といったときは、ハローワークや都道府県労働局に相談できます。

まとめ

  • 会社ごとの「3年以内離職率」の公表義務はなく、あるのは若者雇用促進法の青少年雇用情報の提供の仕組み
  • 探す順は、採用ページ・求人票 → しょくばらぼ → 会社に提供を求める
  • 求めた場合も、会社が示すのは3分野から各1つ以上。離職者数が出てこないこともある
  • 国の統計(大学卒33.8%、令和4年3月卒)とは単位・期間・数え方が違う
  • 年度ごとに見て、一番古い年度の採用者数と離職者数を重く見る
  • 平均継続勤務年数・所定外労働時間・ユースエール認定と組み合わせる

若手の会社選びに使える記事は、若手・第二新卒の会社選びの一覧にまとめています。

参考資料