「若手がすぐ辞める会社には入りたくない」。そう思っても、会社説明会で「離職率は高いですか」とは聞きにくいものです。

実は、若手の定着の度合いは、会社自身が法律にもとづいて出している情報から、かなりのところまで確かめられます。この記事では、全国の平均値で相場をつかんだうえで、会社ごとに確かめられる 5 つの項目と、その読み方を整理します。

まず相場を知る:新卒の 3 年以内の離職率

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」(2025 年 10 月 24 日公表)では、就職後 3 年以内の離職率は次のとおりでした。

学歴3 年以内の離職率前年との差
大学33.8%1.1 ポイント低下
高校37.9%0.5 ポイント低下
短大等44.5%0.1 ポイント低下

大学を出て就職した人の、およそ 3 人に 1 人が 3 年以内に職場を離れています。ただし、この数字は会社の規模と業種で大きく変わります。

事業所の規模(大学卒)3 年以内の離職率
5 人未満57.5%
5〜29 人52.0%
30〜99 人41.9%
100〜499 人33.9%
500〜999 人31.5%
1,000 人以上27.0%

業種では、大学卒で離職率が高い順に、宿泊業・飲食サービス業 55.4%、生活関連サービス業・娯楽業 54.7%、教育・学習支援業 44.2%、医療・福祉 40.8%、小売業 40.4%でした。

会社の数字を見るときは、全体の 33.8% ではなく、同じくらいの規模・同じ業種の平均と比べるのが公平です。

会社ごとの数字は「青少年雇用情報」にある

2016 年 3 月に施行された若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)により、新卒者等を募集する会社は、職場の情報を提供することになっています。これが「青少年雇用情報」で、次の 3 つの類型に分かれています。

類型主な項目
1. 募集・採用に関する状況過去 3 事業年度の新卒者等の採用者数・離職者数、男女別の採用者数、平均継続勤務年数
2. 職業能力の開発・向上の取組研修の有無と内容、自己啓発支援、メンター制度、キャリアコンサルティング制度、社内検定等の制度
3. 職場への定着の促進の取組前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得者数、役員・管理職に占める女性の割合

ただし、義務は3 つの類型のそれぞれで 1 項目以上を提供することです。すべての項目が載っているとは限りません。求人票や会社の採用ページのほか、厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」や「若者雇用促進総合サイト」で見られることがあります。

ここから、定着の度合いを確かめるのに使う 5 つの項目を順に見ていきます。

1. 新卒の採用者数と離職者数

いちばん直接の手がかりです。過去 3 事業年度の採用者数と離職者数が分かれば、おおまかな割合を自分で出せます。

たとえば、3 年間の採用者数が合計 20 人、離職者数が合計 4 人なら 20% です。全国の 3 年以内の離職率(大学卒 33.8%)や、同じ規模の平均と比べてみてください。

気をつけたいのは、採用者数が少ない会社です。3 年で 2 人しか採用していなければ、1 人辞めただけで 50% になります。割合だけを見ず、元の人数を必ずあわせて確かめます。また、採用したばかりの年度は、まだ辞める時間がたっていないぶん離職者数が少なく出ます。

2. 平均継続勤務年数と平均年齢

平均継続勤務年数は、雇われてから今までに勤めた年数の平均です。長ければ、長く働いている人が多い会社だといえます。

ただし、短いからといって辞める人が多いとは限りません。創業して間もない会社や、ここ数年で採用を増やした会社では、辞める人が少なくても平均は短くなります。平均年齢とあわせて見ると読み違いを防げます。平均年齢が若く、平均継続勤務年数も短いなら、若い人を多く採っている段階かもしれません。平均年齢が高いのに平均継続勤務年数が短い場合は、中途採用が多い会社か、人の入れ替わりが多い会社か、どちらかの可能性があります。

3. 月平均の所定外労働時間

いわゆる残業の時間です。青少年雇用情報では、前事業年度の実績を出します。求人票の「残業月 20 時間程度」のような見込みではなく、実際にどれだけ働いたかの平均なので、比べる材料として確かです。

なお、この平均には管理職を含めなくてよいことになっています。部署や職種で大きく違うこともあるので、応募する職種の実態は面接などで確かめてください。

4. 有給休暇の平均取得日数

前事業年度に、1 人あたり何日の年次有給休暇を取ったかの平均です。休みを取りやすい職場かどうかの目安になります。取得率(付与された日数のうち取った割合)で出している会社もあります。

参考までに、ユースエール認定の要件は「前事業年度の正社員の有給休暇の取得率が平均 70%以上、または年間の取得日数が平均 10 日以上」です。

5. 育成の仕組み(研修・メンター・キャリアコンサルティング)

数字ではありませんが、入社してから誰に何を教わるのかは、定着に直結します。青少年雇用情報では、研修の有無と内容、メンター制度(新しく入った人の相談に乗る先輩を割り当てる制度)の有無、キャリアコンサルティングの制度の有無などを出します。

「研修あり」とだけ書かれている場合は、誰を対象に、いつ、何を行うのかを確かめると、実態が見えてきます。

ユースエール認定という手がかり

ユースエールは、若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業(常時雇用する労働者が 300 人以下)を厚生労働大臣が認定する制度です。主な要件は次のとおりです。

  • 直近 3 事業年度の新卒者等の正社員の離職率が 20%以下(採用者数が 3〜4 人なら離職者 1 人以下)
  • 人材育成方針と教育訓練計画を作っている
  • 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が 20 時間以下で、月平均の法定時間外労働が 60 時間以上の正社員が 1 人もいない
  • 有給休暇の取得率が平均 70%以上、または取得日数が平均 10 日以上
  • 直近 3 事業年度で男性の育児休業等の取得者が 1 人以上、または女性の取得率が 75%以上
  • 青少年雇用情報の全項目を公表している

認定を受けた会社は、認定のあとも毎年、基準に合っているかの確認を受けることになっています。離職率 20%以下は、全国の大学卒の 33.8% と比べてもかなり低い水準です。対象は中小企業だけなので、大企業にはこの認定はありません。

まとめ

若手の定着の度合いは、次の順に確かめると迷いません。

  1. 相場を知る:大学卒の 3 年以内の離職率は 33.8%。同じ規模・同じ業種の平均と比べる
  2. 新卒の採用者数と離職者数:割合だけでなく元の人数を見る
  3. 平均継続勤務年数:平均年齢とあわせて読む
  4. 残業と有給休暇:前事業年度の実績の平均を見る
  5. 育成の仕組み:研修・メンターの中身を確かめる

公表されていない項目は、公表していないこと自体が悪いわけではありません。応募の前後に尋ねる材料にしてください。

出典

  • 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和 4 年 3 月卒業者)」(2025 年 10 月 24 日公表)
  • 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「青少年雇用情報シートの書き方のポイント」
  • 厚生労働省「ユースエール認定制度」