退職が決まると、最終出社日までに担当業務を引き継ぐことになります。引継ぎは「時間が足りなくて終わらない」ことが多い作業です。最終出社日から逆算して計画を立て、口頭だけでなく資料として残すと、終わらせやすくなります。
この記事では、引継ぎの進め方の手順、引継ぎ書に書く項目、後任が決まらないときや期限までに終わらないときの進め方を整理します。
退職日と引継ぎについて決まっていること
最初に、退職日と引継ぎの関係で押さえておきたい決まりを確かめます。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 退職の申し出 | 期間の定めのない雇用なら、会社の承認がなくても、退職を申し出た日から原則として14日を過ぎると退職となる(民法第627条第1項) |
| 退職前の有給休暇 | 退職日に有給休暇の権利は消えるため、会社は退職前の有給休暇を別の日に変えられない |
| 退職日を延ばす打診 | 会社が引継ぎなどのために退職日を遅らせるよう打診することはあるが、応じるかどうかは働く人に委ねられている |
| 就業規則 | 退職の申し出の時期などを就業規則で決めている会社が多い。自分の会社の決まりを確かめる |
引継ぎは、法律で日数が決まっているものではありません。だからこそ、退職日と有給休暇の消化から最終出社日を決め、その日までに終える計画を自分で作ることが大切です。有給休暇を使い切る日程の組み方は退職前の有給消化にまとめています。
引継ぎを進める手順
1. 担当業務を洗い出す
まず、自分が担当している仕事をすべて書き出します。抜けやすいのは、次のような仕事です。
- 月末・四半期・年1回など、周期の長い仕事(決算の資料、契約の更新、年1回の届出など)
- 自分しか持っていないアカウントや権限が必要な仕事
- 社外の取引先と自分が窓口になっているやり取り
- 頼まれて引き受けている、担当表に載っていない仕事
過去1年分の予定表とメールの送信履歴を見返すと、周期の長い仕事を拾いやすくなります。
2. 仕事ごとに引継ぎの方法を決める
| 仕事の種類 | 引継ぎの方法 |
|---|---|
| 手順が決まっている定型の仕事 | 引継ぎ書に手順を書き、後任が一度やってみる |
| 判断が要る仕事 | 判断の基準と過去の例を書き、後任と一緒に一度やる |
| 社外とのやり取り | 後任と一緒にあいさつし、連絡先を引き継ぐ |
| 期限の近い仕事 | 自分で終わらせるか、どこまで進めて渡すかを上司と決める |
3. 最終出社日から逆算した予定表を作る
最終出社日から逆に、「後任が一人でやってみる」「一緒にやる」「引継ぎ書を作る」の順に日程を置きます。後任が一人でやってみる期間を、自分がまだ出社している間に取るのが要です。分からない点が出ても、その場で答えられます。
4. 上司と後任と合意する
洗い出した業務の一覧と予定表を上司に見せ、後任と、引継ぎの順番を決めてもらいます。決まったことは、メールやチャットで文字に残します。
引継ぎ書に書く項目
引継ぎ書は、自分がいなくなったあとに、後任が読んで動けることを目指して書きます。仕事ごとに、次の項目をそろえると抜けが減ります。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 仕事の名前と目的 | 何のための仕事か。だれが結果を使うか |
| 時期と頻度 | 毎日・毎週・毎月・年1回のどれか。締め切り |
| 手順 | 順番に番号を付けて書く。画面の名前やボタンの名前もそのまま書く |
| 判断の基準 | 迷いやすい場面と、これまでどう判断してきたか |
| 使うファイルとシステム | ファイルの置き場所、システムの名前、権限の申請先 |
| 関係者 | 社内・社外の相談先と連絡先 |
| よくあるトラブル | 過去に起きたことと、そのときの対応 |
| 進行中の案件 | いまどこまで進んでいて、次に何をするか |
ファイルの置き場所は、「共有フォルダのどこか」ではなく、開ける形で書きます。置き場所を一覧にする台帳の作り方は引き継ぎで「ファイルどこ?」を防ぐ台帳、Excel のマクロなど作った人しか分からない仕組みの棚卸しはExcelマクロの属人化にまとめています。
引継ぎが終わらないとき
後任が決まらない
後任が決まらなくても、引継ぎ書は作れます。後任がだれでも読める形で書き、上司に「いつまでに、どなたに渡せばよいか決めていただけますか」と頼みます。最終出社日が近づいても決まらないときは、引継ぎ書と資料の置き場所を上司に渡し、受け取ってもらったことをメールなどで残します。
期限までに終わらない
量が多くて終わらないときは、優先順位を上司と決め直します。期限の近い仕事と、自分しか分からない仕事を先に引き継ぎ、手順の決まった仕事は引継ぎ書で残します。
退職日を延ばすよう頼まれた
応じるかどうかは自分で決められます。応じる場合は、延ばす日数と、その間に何を終えるかを先に決めます。転職先の入社日が決まっているなら、入社日は動かさないことを前提に話します。引き止めとして延ばすよう求められているときの返し方は、退職の引き止めがしつこいときにまとめています。
読み違えやすい点
- 口頭で説明すれば引継ぎが終わると思う:聞いたことは忘れます。後任が一人でやってみるまでが引継ぎです
- 引継ぎ書を最終週に書く:書きながら抜けに気づくので、早めに書き始めます
- 周期の長い仕事を忘れる:年1回の仕事は、引継ぎの期間中に出てこないことが多いです
- 終わらないと辞められないと思う:退職の申し出から14日で退職となるのが原則です。ただ、揉めないためにも計画と記録を残します
まとめ
- 引継ぎは、退職日と有給休暇の消化から最終出社日を決め、そこから逆算して計画を立てる
- 担当業務を洗い出し、仕事ごとに引継ぎの方法を決める。後任が一人でやってみる期間を、自分の在籍中に取る
- 引継ぎ書には、目的・時期・手順・判断の基準・ファイルとシステム・関係者・トラブル・進行中の案件を書く
- 後任が決まらない・終わらないときは、上司と優先順位を決め直し、渡したことを文字で残す



