営業は「早く出したい」、開発は「品質を確かめてから出したい」。上司と取引先の言うことが食い違う。こうした対立の間に立って調整する役割になると、どちらにも気を遣い、どちらからも不満を言われて疲れます。

この記事では、対立を「どちらが正しいか」から「それぞれが守りたい条件は何か」に置き換える整理のしかたと、決める人と決め方の決め方、文書で合意を取る進め方を整理します。

立場ではなく、守りたい条件を聞く

対立している人たちは、多くの場合「〇〇すべきだ」という立場で話しています。立場どうしをぶつけると、どちらかが負けるしかありません。

そこで、立場の奥にある守りたい条件を聞きます。

立場守りたい条件の例
営業「今月中に出したい」取引先との約束の日に間に合わせたい。今期の売上に入れたい
開発「来月まで延ばしたい」不具合で取引先に迷惑をかけたくない。夜間の対応を避けたい

聞き方の例です。

  • 「今月中にこだわるのは、どんな事情があるからですか」
  • 「延ばしたい理由のうち、一番大きいものは何ですか」
  • 「どうなっていれば、この案で進めてよいと思えますか」

条件を並べると、両方を満たす案が見つかることがあります。たとえば上の例なら、「主要な機能だけを今月中に出し、残りは来月に出す」といった案です。

選択肢を表にする

条件が出そろったら、選択肢と、それぞれの条件を満たすかを表にまとめます。

選択肢取引先との約束の日今期の売上不具合の心配夜間の対応
今月中にすべて出す満たす満たす残る増える
来月にすべて出す満たさない満たさない減る減る
主要な機能だけ今月、残りは来月満たす一部満たす一部残る一部

表にすると、議論が「どちらが正しいか」から「どの条件をどこまで満たすか」に変わります。調整する人は、この表を作って双方に見せ、抜けている条件がないかを確かめます。

決める人と決め方を先に決める

調整する人が、すべてを決める必要はありません。決める権限のない人が決めると、あとで覆されます。

  1. だれが決めるか:両方の部署の上に立つ人、契約を持つ人など、決める権限のある人を確かめる
  2. どう決めるか:決める人が表を見て決めるのか、事前に決めた基準(売上を優先する、安全を優先するなど)で選ぶのか
  3. いつまでに決めるか:期限がないと、対立が長引きます

声の大きい人の意見で決まりやすい職場で決め方を先に決める手順は声が大きい人の意見が通る職場、判断の基準を決裁者とそろえる手順は企画が通らない原因にまとめています。

会議を開かずに文書で合意を取る

関係者が多いと、会議の日程を合わせるだけで時間がかかります。対立が感情的になりやすい場合も、文書のほうが落ち着いて考えてもらえます。

  1. 条件と選択肢の表を、文書で送る:「〇〇の件で、双方の条件を整理しました。抜けている条件があれば〇日までに教えてください」
  2. 返事を表に反映する:抜けていた条件を足す
  3. 決める人に判断を頼む:表と、調整する人としての見立てを添えて、期限を決めて判断を頼む
  4. 決まったことを全員に送る:決まったこと、理由、だれが何をするかを文書で送る

それでも話がまとまらないときだけ、会議を開きます。会議の進め方は会議で結論が出ない原因にまとめています。

板挟みの立場で気をつけること

  • 片方の言い分だけを伝えない:伝言役になると、どちらからも不満が出ます。条件を両方に同じ形で共有します
  • 悪口や感情は伝えない:条件だけを伝えます
  • 自分の判断で約束しない:「たぶん大丈夫です」と言うと、それが約束として扱われます。決める人の判断を待ちます
  • 記録を残す:だれがいつ何と言ったかを残しておくと、あとで「言った・言わない」になりません

部署どうしの受け渡しで毎回同じ対立が起きるときは、受け渡しの決まりそのものを決める方法を部署間のトラブルを減らすにまとめています。

読み違えやすい点

  • 間を取れば丸く収まると思う:どちらの条件も満たさない案になることがあります
  • 調整役が決めなければと思う:決めるのは権限のある人です。調整役は材料をそろえます
  • 議論に勝とうとする:勝ち負けにすると、負けた側は協力しなくなります
  • 全員の合意を条件にする:1人の反対で止まります。決め方を先に決めます

まとめ

  • 対立は、立場ではなく守りたい条件を聞いて整理する
  • 選択肢と条件を表にまとめ、どの条件をどこまで満たすかで話す
  • 決める人・決め方・期限を先に決める。調整役は材料をそろえる
  • 文書で条件を共有し、決まったことを全員に送る。会議はまとまらないときだけ