職場の飲み会で「まあ一杯だけ」と何度も勧められる。断ると「付き合いが悪い」と言われる。新人の歓迎会で一気飲みを求められる。お酒にまつわるこうした嫌がらせは、アルハラ(アルコール・ハラスメント)と呼ばれます。
この記事では、厚生労働省のe-ヘルスネットの情報をもとに、飲酒の強要の危険、アルハラに当たる言動の例、断り方、職場で続くときの相談先を整理します。
飲酒の強要はなぜ危ないのか
e-ヘルスネットは、急性アルコール中毒について、次のように説明しています。
- 急性アルコール中毒になると、意識のレベルが下がり、嘔吐、呼吸の悪化など危険な状態に陥る
- 若年者・女性・高齢者・飲酒後に顔が赤くなるタイプの人は、アルコールの分解が遅く、リスクが高まる
- 大学生や新社会人では、一気飲みとして飲酒させられ、死亡に至るケースが毎年発生している
- 新人歓迎の行事として、一気飲みと呼ばれる慣習がいまだに残っている
さらに、体調を崩すことが分かっていながら飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた場合は、刑法第205条(傷害致死罪)が適用され、3年以上の懲役が科されることがあるとされています。
飲酒の強要は、場を盛り上げるための冗談では済まない行為です。
アルハラに当たる言動の例
アルハラは、法律で定義された言葉ではありません。ただ、次のような言動は、相手の意思に反して飲酒をさせたり、飲めない人を傷つけたりするものです。
| 言動 | 例 |
|---|---|
| 飲酒の強要 | 断っているのに何度も注ぐ、「飲まないと帰さない」と言う |
| 一気飲みをさせる | 周りではやし立てて、一気に飲み干させる |
| 意図的に酔いつぶす | 酔いつぶれさせることを目的に飲ませる |
| 飲めない人への配慮を欠く | 飲めないと言っている人に飲ませる、飲めないことをからかう |
| 酔ったうえでの迷惑な言動 | 酔って暴言を吐く、絡む、体に触る |
職場の上下関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超え、働く環境を害するものは、パワハラの3つの要素に当てはまるかを考える材料になります。パワハラの定義と類型はパワハラの記録の残し方にまとめています。
角を立てにくい断り方
最初の注文で決める
最初の1杯でソフトドリンクを頼むと、その後に勧められにくくなります。「お酒は飲まないので、ウーロン茶にします」と、理由を詳しく話さずに決めてしまいます。
理由は短く、繰り返す
勧められたら、同じ言葉を短く繰り返します。
- 「ありがとうございます。今日はこれで大丈夫です」
- 「明日早いので、ソフトドリンクにしておきます」
- 「体質的に飲めないので、すみません」
理由を詳しく説明すると、「少しなら大丈夫だろう」と言い返されることがあります。体質や健康の事情は個人の情報なので、話したくなければ話す必要はありません。
グラスを空けない
グラスが空くと注がれやすくなります。少し残しておく、ソフトドリンクのグラスを手元に置いておく、といった工夫も効きます。
早めに帰る
一次会で帰る、終わりの時間を最初に伝えておく、といった方法もあります。飲み会への参加そのものの考え方は、飲み会に出ないと評価に響く?にまとめています。
周りの人が酔いつぶれたとき
e-ヘルスネットは、急性アルコール中毒が疑われる人がいるときの対処として、次を示しています。
- 絶対に1人にしない
- 衣服をゆるめて楽にする
- 体温が下がらないよう、毛布などをかけて暖かくする
- 吐いたものでのどが詰まらないよう、横向きに寝かせる
- 吐きそうになったら、抱き起こさずに横向きのまま吐かせる
無理に吐かせようとすると、吐いたものが逆流してのどに詰まり、窒息するおそれがあるとされています。大いびきをかいて痛みに反応しない、揺すって呼びかけても反応しない、体が冷たい、口から泡を吐いている、呼吸が不安定といったときは、すぐに救急車を呼びます。
職場で続くときは
飲み会のたびに強要される、断ったことで仕事の扱いが変わる、といったときは、記録を残して相談します。
- 記録する:日時、場所、だれに何と言われたか、その場にいた人、断ったときの相手の反応
- 社内に相談する:人事や社内の相談窓口へ。飲み会の幹事や上司の上の人に伝えることも考えます
- 社外に相談する:社内で相談しにくいときは、労働局などにある総合労働相談コーナーに無料で相談できます
飲み会の幹事を押し付けられるときの線引きは飲み会幹事の押し付けへの対処にまとめています。
読み違えやすい点
- 少しくらいなら大丈夫と思う:アルコールの分解の速さは人によって違います。本人が断っているなら勧めません
- 一気飲みを場の盛り上げと考える:死亡に至るケースが毎年発生しているとされています
- 酔いつぶれた人を1人で寝かせておく:絶対に1人にしません
- 飲めない理由を詳しく説明しなければと思う:説明の義務はありません
まとめ
- 一気飲みなどで飲酒させられ、死亡に至るケースが毎年発生している。飲酒を強要して死亡させた場合は傷害致死罪が適用されうる
- 断るときは、最初の注文でソフトドリンクにし、短い理由を繰り返す
- 酔いつぶれた人は1人にせず、横向きに寝かせる。反応がなければすぐに救急車を呼ぶ
- 職場で続くときは記録を残し、社内の窓口や総合労働相談コーナーに相談する


