在宅勤務のスケジュールは、作業の予定より先に、働く時間帯・連絡がつく時間帯・業務から離れる時間の3つを決め、カレンダーと在席表示に出しておくと崩れにくくなります。周りから「いま声をかけてよいか」が見えるようになり、自分も「いつでも応じる」状態から抜け出せます。
ただし、始業・終業をずらせるか、家の用事で離れる時間をどう扱うかは、会社の就業規則や労働時間の制度で決まる部分があり、個人で自由に決められるとは限りません。厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年3月改定)も、労働時間の管理の方法や中抜け時間の取扱い、通常時と緊急時の連絡方法などを、あらかじめ労使で話し合ってルールにしておくことが重要としています。自分で決められる範囲を確かめてから、1日の型を作り、見える形で周りとそろえる順に整理します。
在宅勤務のスケジュールが崩れる理由
仕事と生活の境目が決まっていない
オフィスなら、出社と退社が1日の区切りになります。在宅では、その区切りを自分で作らない限り、朝の連絡から夜の返信までがひと続きになりがちです。
前出のガイドラインも、テレワークでは業務の指示や報告が時間帯にかかわらず行われやすくなり、仕事と生活の時間の区別があいまいになるおそれがあると指摘しています。内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年3月調査)では、テレワークで不便な点として「仕事と生活の境界が曖昧になることによる働き過ぎ」を挙げた就業者が16.3%でした。
いま何をしているかが、相手から見えない
席が近ければ、会議中か、手が空いていそうかは見れば分かります。在宅ではそれが見えないので、声をかける側は「送ってみるしかない」状態になります。送られた側も、相手が待っているかどうか分からないので、とりあえず早く返そうとします。予定が見えないことが、「呼ばれたらすぐ応じる」を既定の状態にしてしまうのです。
離れる時間の扱いがあいまい
在宅では、宅配の受け取りや子どもの迎えなどで、業務から一時的に離れる時間(ガイドラインの言葉では「中抜け時間」)が生まれます。扱いが決まっていないと、黙って離れて連絡に気づかない、あるいは離れた分を夜に取り戻して長時間になる、のどちらかに流れがちです。
自分で決められる範囲を確かめる
1日の型を作る前に、会社の制度でどこまで決まっているかを確かめます。ガイドラインは、労働時間の制度ごとに次のような扱いを示しています。
| 労働時間の制度 | 始業・終業の時刻 | 業務から離れる時間の調整 |
|---|---|---|
| 通常の労働時間制度 | 会社があらかじめ定める。就業規則に定めがあれば、テレワークの日に始業・終業の時刻を変えられる扱いも可能 | 会社の決まりによる |
| フレックスタイム制 | 労働者が自分で決める。コアタイム(必ず働く時間帯)を置くかは会社による | 離れた分だけその日の終業を遅くしたり、清算期間の中の別の日で調整したりできる |
| 事業場外みなし労働時間制 | 労働時間の算定が難しい場合の制度。パソコンなどを会社の指示で常に通信できる状態に置くこととされていない、1日のスケジュールを具体的に指示されていない、などの条件を満たす場合に適用できる | みなした時間が実態に合っているかを、必要に応じて労使で確かめることとされている |
自分がどの制度で働いているかは、雇用契約書や就業規則で確かめられます。あわせて、人事や上司に次の点を確かめておくと、あとで迷いません。
- 始業と終業をどう報告するか。 ガイドラインは、自己申告で把握する方法の例として、1日の終業時に始業・終業の時刻をメールなどで報告させる方法を挙げています
- 離れる時間をどう扱うか。 ガイドラインは、会社が把握する場合は休憩として扱って終業を繰り下げるか時間単位の年次有給休暇とする、把握しない場合は始業から終業までを休憩を除いて労働時間とする、などの扱いを例に挙げ、あらかじめ就業規則などで定めておくことが重要としています
- 通常の連絡と緊急の連絡を、どの手段で受けるか
- 時間外・休日・深夜の連絡やシステムへの接続をどう扱うか。 ガイドラインは、深夜・休日は事前に許可を得ない限り社内システムに接続できないよう会社が設定することを、長時間労働を防ぐ手法の1つとして挙げています
休憩は、労働基準法第34条により、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間与えることとされています。在宅勤務の人については、労使協定によって、休憩を一斉に取る原則の適用を外すことも可能です(前出のガイドライン)。休憩の時刻を自分で選べるかどうかも、確かめておく項目です。
1日の型を作る手順
1. 働く時間帯を決める
会社の制度の範囲で、始業と終業の時刻を決めます。毎日同じ時刻にそろえるほど、周りが覚えやすくなります。
2. 連絡がつく時間帯を決める
勤務時間のすべてを「すぐ応じる時間」にする必要はありません。会議や相談を受けやすい時間帯と、集中して作業する時間帯を分けます。集中の時間帯でも、チームの返信の目安(「当日中」など)は守れるように、確認の時刻を挟みます。確認の時刻の決め方は確認する時刻を決めるタイムボックスの手順にまとめています。
例えば、次のような型です。
| 時刻 | 中身 | カレンダーや在席表示の出し方 |
|---|---|---|
| 9:00 | 始業の連絡、その日の予定を共有 | 在席 |
| 9:15〜11:30 | 集中作業 | 「集中作業(急ぎは電話で)」 |
| 11:30〜12:00 | 連絡の確認と返信 | 在席 |
| 12:00〜13:00 | 休憩 | 「休憩」 |
| 13:00〜15:00 | 会議・相談を受けやすい時間 | 予定を入れず空けておく |
| 15:00〜15:30 | 業務から離れる(家の用事など) | 「不在」 |
| 15:30〜18:00 | 作業と返信 | 在席 |
| 18:00 | 終業の連絡 | 退勤 |
離れる時間の扱い(休憩にするか、終業を遅らせるか)は、会社の決まりに合わせます。
3. カレンダーに勤務時間と予定を入れる
主なカレンダーには、勤務時間を登録しておく機能があります。Microsoft サポート「Outlook で作業の時間と場所を設定する」によると、新しい Outlook と Web 版の Outlook では、設定の予定表の項目にある「作業時間と場所」で曜日ごとの勤務時間と場所を登録でき、会議を入れる人のスケジュール アシスタントに表示されます。Google カレンダーでも、職場や学校のアカウントでは勤務時間を設定できます(Google カレンダー ヘルプ)。
予定は、中身まで見せる必要はありません。周りが知りたいのは「いま声をかけてよいか」なので、「予定あり」「不在」と分かれば調整には足ります。集中作業の時間も予定として入れておくと、空いている時間と区別がつきます。仕事の作業そのものをカレンダーに入れて期限に間に合わせる方法は、タスクとスケジュールを1つにまとめる方法で扱っています。
4. 在席表示のひとことをそろえる
チャットの在席表示には、その日の勤務時間と離れる時間を書いておきます。
本日 9:00〜18:00 勤務です。15:00〜15:30 は離席します。急ぎの件は電話でお願いします。
カレンダーと在席表示の内容が食い違うと、どちらを信じればよいか分からなくなります。朝に1回、両方を見比べてから始業します。
5. 始業と終業の連絡を型にする
終業の連絡には、始業と終業の時刻、離れた時間、翌日の予定を1通にまとめます。
本日の業務を終了します。始業 9:00、終業 18:00、15:00〜15:30 は離席しました。明日は午前に A 社の資料をまとめ、午後は会議です。
会社の決まった報告の手段があれば、そちらに合わせます。記録が実際の働き方と合っているかを自分で確かめる機会にもなります。
6. 週に1回、予定と実際を見比べる
1週間分のカレンダーと実際の終業時刻を並べ、終業が予定より遅れた日、会議を受ける時間帯以外に会議が入った日を数えます。ずれが続くなら、型のほうを直すか、チームに会議の入れ方を相談します。
実行時の落とし穴
予定を分刻みで埋めて、働いている証明に使う。 見えない不安から、カレンダーを細かく埋めたくなることがあります。ただ、予定は周りと調整するためのもので、働きぶりの証明ではありません。ガイドラインは、非対面の働き方では業務の状況が把握しづらいという指摘に対し、上司が部下に求める内容や水準をあらかじめ具体的に示しておくことが望ましいとしています。見えにくさを埋めるのは、予定の細かさではなく、求められる成果のすり合わせです。
離れた時間を申告せず、夜に取り戻す。 記録と実際の働き方がずれていきます。ガイドラインは、自己申告の時刻と、パソコンの使用状況などの客観的な事実との間に大きなずれがあると会社が把握した場合には、労働時間を補正する必要があるとしています。深夜に働けば、深夜労働の割増賃金の対象にもなります。離れた時間は、会社の決まりに沿ってそのまま申告します。
休憩を取らずに机に向かい続ける。 在宅では、昼食を取りながら作業を続けることになりがちです。休憩の時間もカレンダーに入れ、画面から離れます。
同居する家族と共有していない。 会議の時間や集中したい時間を家族が知らないと、そのたびに中断が起きます。1日の型は、家の中でも見える場所に置いておきます。
時間外の連絡を個人の我慢で受け続ける。 夜や休日の連絡への対応は、個人の工夫だけでは減りません。チームで決めておくことは即レスに疲れる原因の切り分けで整理しています。離れる時間の扱いや時間外の対応が労働時間としてどう扱われるか分からないときは、まず人事に確かめ、それでも疑問が残るなら、各都道府県の労働局や労働基準監督署にある総合労働相談コーナー(無料)に相談できます。
在宅でのやり取りの疲れ、特に会議や雑談の少なさから来る疲れについては、リモートのコミュニケーション疲れを減らす見直し方で扱っています。業務効率・IT のほかの記事はこちらの一覧にあります。



