リモートワークのやり取りで疲れる原因は、チャットの量だけではありません。画面越しの会議が続くこと、気軽に聞ける雑談の場がなくなること、働いている様子が相手に見えないこと。この3つが重なると、会議の中では見られ続け、会議の外では「見えていない」不安を埋めるために動き続けることになります。
打ち手は疲れの種類で変わります。会議の負担は自分の設定と会議の組み方で下げられます。雑談と相談の不足は、場を仕組みとして作らない限り戻りません。見えない不安は、報告を増やすより、上司と「何ができていれば十分か」を先にそろえるほうが効きます。チャットの即レスや通知の疲れは即レスに疲れる原因の切り分けと通知を減らすタイムボックスの手順で扱っているので、ここでは会議・雑談・見えない働き方の3つに絞ります。
疲れが生まれる3つの仕組み
1. 画面越しの会議は、見られ続ける時間が長い
オンライン会議の疲れについては、スタンフォード大学のジェレミー・ベイレンソン氏が、学術誌「Technology, Mind, and Behavior」(2021年)の論文で、次の4つの理由を挙げています。
- 近い距離で、長く目が合い続ける。 画面には参加者全員の顔が正面から大きく映り、話していない人にも視線が向き続けます。対面の会議では、聞き手どうしが見つめ合い続けることはまれです
- 表情や身ぶりを読み取る負担が大きい。 画面越しでは相手の反応が伝わりにくく、合図を大きめに送ったり、読み取ったりする手間が増えます
- 自分の顔を見続ける。 自分の映像が一日中表示され、鏡を見ながら働いているような状態になります
- 動けない。 カメラに映る範囲から外れないよう、座ったまま正面を向き続けることになります
ただし、筆者自身が、これらは学術研究に基づく論点であって、まだ科学的に確かめられた結論ではないと断っています。確かめられた事実としてではなく、疲れの理由を考える手がかりとして使うのが適切です。
これに加えて、在宅では会議室への移動がないため、会議と会議のあいだに区切りがなくなることがあります。30分の会議が隙間なく並ぶと、画面から離れる時間がないまま半日が過ぎます。
2. 雑談と「ちょっと聞く」がなくなる
内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年3月調査)では、テレワークで不便な点として最も多かったのが「社内での気軽な相談・報告が困難」(36.0%)で、「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」(30.2%)が続きました。
オフィスなら、通りがかりに「さっきの件、これで合っていますか」と聞けば10秒で済みます。在宅では、同じ質問でも、宛先を選び、文章に整え、送ってよい時間かを考える手間がかかります。小さな質問が「用件」に格上げされるので、聞くのをためらい、ためこみ、行き詰まってから大きな相談になります。雑談がないと、相手がいま忙しいのか、機嫌はどうかといった手がかりもなくなり、声をかけるハードルがさらに上がります。
3. 働いている様子が見えない
厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年3月改定)は、非対面の働き方では、業務の状況や、成果を生み出す過程で発揮される能力を把握しづらいという指摘があることに触れています。また、周りに上司や同僚がいないため、上司と連絡が取りにくい、上司が部下の心身の変化に気づきにくい状況になりやすいとしています。
見えないことへの不安は、見せるための行動を生みます。カメラを一日中オンにする、在席表示を切らさない、関係の薄い会議にも出る、報告の回数を増やす。どれも、本来の仕事とは別に時間と気力を使う行動です。見えない不安を「見せる行動」で埋めようとすると、そのぶん疲れが増えます。
どの疲れが大きいかを見分ける
当てはまるサインから、疲れの種類と打ち手の置き場所を確かめます。
| よくあるサイン | 主な原因 | 自分でできること | チームで決めること |
|---|---|---|---|
| 会議が終わるとぐったりする。会議のあいだに休めない | 会議の負担と詰め込み | 自分の映像を隠す。会議のあいだに空きを作る | カメラを使う場面、会議の長さ |
| 聞きたいことをためこみ、一人で詰まる | 気軽な相談の場がない | 質問をまとめて出す時刻を決める | 質問の場所、相談を受ける時間 |
| 在席表示や反応の速さが気になり、報告を増やしている | 働く様子が見えない不安 | 上司と成果の基準を確かめる | 評価の基準、報告の形を1つに |
| 誰とも話さない日が続き、気分が沈む | 孤立 | 話す予定を意識して入れる。相談先を知っておく | 定期的な短い面談、相談の体制 |
上の3行は、仕組みを変えれば軽くできる疲れです。4行目のように気分の落ち込みが続く場合は、仕組みの見直しと並行して、後で挙げる相談先も使ってください。
打ち手1:会議の負担を下げる
自分の映像を隠す。 多くの会議ツールには、自分の映像を自分の画面に表示しない設定があります(相手には映ったままです)。名称や場所はツールによって違うので、使っているツールのヘルプで確かめてください。前出の論文も、改善策として自分の映像を隠すことを挙げています。
1対1の確認は、音声だけか電話にする。 資料を見せる必要のない確認は、映像なしで足ります。同じ論文は、音声だけの会議を増やし、一部は電話にして体を画面の前から解放することも提案しています。歩きながら、立ちながらでも話せます。
カメラを使う場面をチームで決める。 全員に常時オンを求めるのも、全員オフにするのも極端です。「冒頭のあいさつと議論のときはオン、説明を聞くあいだはオフでよい」のように場面で分けると、表情が必要なときだけ顔が見えます。
会議のあいだに区切りを作る。 30分の会議は25分、1時間の会議は50分で終える予定にして、次の会議までに画面から離れる時間を残します。厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は、パソコン作業について、一連続の作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10〜15分の作業休止時間を設けるよう、事業者が指導することとしています。自宅でのテレワークにはこのガイドラインが一般には適用されませんが、テレワークのガイドラインは、同等の作業環境になるよう会社が教育や助言をすることが重要としています。
会議の数そのものを減らす。 共有だけの会議は、資料を先に回して読んでもらい、会議は決めることがあるときだけにします。会議で決まったことは、その場で担当と期限まで決めておくと、確認のための会議を後から増やさずに済みます。
打ち手2:雑談と相談の代わりを仕組みで作る
質問用の場所を1つ作る。 チャットに「質問・相談」の場を作り、「まとまっていない質問でよい」「答えられる人が答える」と決めておきます。宛先を選ぶ手間がなくなり、小さな質問が用件に格上げされるのを防げます。
相談を受ける時間を決めてもらう。 上司や先輩に、「毎日16時からの30分は相談を受ける」のような時間を決めてもらうと、声をかけるタイミングを探す必要がなくなります。
短い定例を置く。 テレワークのガイドラインに付いている事業者用のチェックリストには、コミュニケーションの活性化の項目として、定期的・日常的なオンラインミーティングの実施などにより、同僚とのやり取りや日常的な業務相談、業務指導を円滑に行う取組がなされているか、という確認項目があります。朝か夕方に10〜15分、その日の予定と困りごとを一言ずつ話すだけでも、相談のきっかけになります。
雑談の場は、参加を任意にする。 雑談のための会議を全員参加にすると、それ自体が新しい会議の負担になります。出たい人が出られる形にとどめます。
打ち手3:見えない不安を、成果の基準で埋める
何ができていれば十分かを、上司と先に合わせる。 テレワークのガイドラインは、上司が部下に求める内容や水準をあらかじめ具体的に示しておき、必要に応じて達成の状況について共通の認識を持つ機会を設けることが望ましいとしています。基準が言葉になっていれば、在席表示や反応の速さで働きぶりを示す必要はなくなります。
見せる手段を1つに絞る。 1日の終わりに「やったこと・明日やること」を数行で送る、週に1回まとめて報告する、のどちらかに決めます。報告の手段がいくつもあると、どれも欠かせない気がして負担が増えます。先回りの報告で細かい確認を減らす書き方は、マイクロマネジメントを先回りの報告で減らす方法で扱っています。
予定を見えるようにする。 集中する時間、離れる時間をカレンダーと在席表示に出しておくと、反応がない理由が周りに伝わります。1日の型の作り方は在宅勤務で連絡がつく時間を決める手順にまとめています。
見直すときの落とし穴
カメラを全員オフにして終わらせる。 会議の負担は減っても、表情が伝わらないぶん誤解が増えることがあります。オフにするかどうかではなく、場面ごとに決めることが大事です。
雑談の不足を、会議の追加で埋める。 交流のための会議を増やすと、会議の疲れが増えます。短く、任意で、目的のはっきりした場にとどめます。
見えない不安を、報告の量で埋める。 報告が増えると、読む側の確認も増え、確認されるからまた報告する、という往復が始まります。量ではなく基準をそろえます。
すべてを文字のやり取りにする。 意見がぶつかっている話、評価や体調のように配慮が要る話は、文字だけだとこじれやすくなります。そうした話は、短くても声で話す時間を取ります。
個人の工夫だけで続ける。 会議の数、カメラの決まり、評価の基準は、チームや会社が決めることです。自分でできる設定を整えたら、変えたい点をチームに提案します。
不調のサインを見過ごす。 眠れない日が続く、休日も会議や連絡のことが頭から離れない、人と話すのがつらいといった状態が続くときは、仕組みの見直しと並行して、社内の産業医や保健師、かかりつけの医師に相談してください。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、電話・SNS・メールで相談を受け付けています。
チャットや非同期のやり取りに関するほかの記事は、業務効率・IT の一覧にまとめています。
参考資料
- Bailenson, J. N. (2021). Nonverbal Overload: A Theoretical Argument for the Causes of Zoom Fatigue. Technology, Mind, and Behavior.
- 内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年4月公表)
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年3月改定)
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」(2019年7月12日、2021年12月1日一部改正)
- 厚生労働省「こころの耳」相談窓口



