共有フォルダがすぐ散らかるのは、使う人の整理が下手だからではありません。誰が上の段にフォルダを作ってよいか、誰が消したり動かしたりしてよいか、終わったものをどこへ移すかが決まっていないので、使う人それぞれが自分の分け方で置いていくのです。
直すには、フォルダを並べ替えるより先に、運用の決まりを作ります。決めるのは5つです。フォルダごとに管理する人、上の段を作れる人、見られる人と直せる人、終わったものの行き先と残す期間、見直しの日。これを1枚の文書にしてフォルダの一番上に置き、3か月ごとに点検します。階層の組み方やフォルダ名の付け方はパソコンのフォルダ分けの記事にまとめているので、ここではチームで決まりを作って守り続ける方法を扱います。
共有フォルダが散らかる仕組み
誰でも上の段を作れる
一番上の段に誰でもフォルダを作れると、人によって分け方が違うので、「営業部」の隣に「田中」「見積書」「2025年度」が並びます。1つのファイルに入れ先の候補がいくつもでき、置く人によって場所が変わります。個人の名前のフォルダは、その人がいなくなると中身を誰も判断できなくなります。
消してよいか、動かしてよいかの線がない
消す権限の線がないと、2つのことが起きます。1つは、誰も消さないこと。消してよいか分からないので、古いものが残り続けます。もう1つは、誰かが善意で動かすこと。動かされたフォルダは、ほかの人のショートカットや手順書に書かれた場所からたどれなくなります。
終わったものと作業中のものが混ざる
終わった案件のフォルダが作業中の案件と同じ段に並び続けると、一覧が長くなり、開くべきフォルダを探す時間が増えます。古い版のファイルを、今の版と取り違える原因にもなります。
管理する人がいない
作った人が異動すると、そのフォルダの由来を知る人がいなくなります。国の行政機関の文書の扱いを定めた「行政文書の管理に関するガイドライン」(内閣総理大臣決定、2025年2月一部改正)は、電子文書を文書管理者の責任において共用の保存場所に保存し、必要に応じてアクセスを制限することとしています。管理者が異動するときは、文書の一覧(行政文書ファイル管理簿)や保存期間表を後任に引き継ぐ手続きも定めています。持ち主のいる場所は散らかりにくく、持ち主のいない場所は散らかります。
いまの共有フォルダを点検する
決まりを作る前に、いまの状態を確かめます。当てはまる行が、決めるべき項目です。
| 見つかった状態 | 起きていること | 決めること |
|---|---|---|
| 一番上の段に人の名前のフォルダがある | 個人の作業場所が共有に混ざっている | 個人の下書きの置き場所 |
| 「新しいフォルダー」「その他」が並んでいる | 誰でも上の段を作れる | 上の段を作れる人 |
| 同じ資料が2か所以上にある | 置き場所が人によって違う | 管理する人と置き場所 |
| 異動や退職した人のフォルダ・権限が残っている | 引き継ぎの手順がない | 異動・退職のときの手順 |
| 何年も開かれていないフォルダが作業中と並ぶ | 終わったものの行き先がない | 完了の移し先と残す期間 |
| 誰がどのフォルダを見られるか分からない | 見られる人の範囲が決まっていない | 見られる人・直せる人 |
最後の行は、見落とされがちですが大切です。情報処理推進機構(IPA)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月)に載っている自社診断の25項目にも、データの共有設定を必要な人に限定しているかという項目があります。
決まりの作り方
1. フォルダごとに管理する人を決める
一番上の段のフォルダごとに、管理する人を1人と、その代わりを1人決めます。管理する人の役目は、その下の構成を決めること、権限の申請を受けること、見直しの日に点検することです。全体を1人で見る必要はありません。
2. 上の段を作れる人を限る
一番上と2段目のフォルダを作ったり名前を変えたりできるのは、管理する人だけにします。3段目から下は、使う人が自由に作ってよいことにします。上の段が固定されていれば、下の段が多少ばらついても、置き場所を探す範囲は限られます。
権限の設定のしかたは、使っている保存先や会社の管理のしかたによって違います。自分で変えられない場合は、情報システムの担当に「どのフォルダを、誰が、作成・編集・閲覧できるようにしたいか」を一覧にして相談します。
3. 見られる人・直せる人を決める
フォルダごとに、閲覧だけの人と、直せる人を分けます。人事や顧客の個人情報を含むフォルダは、見られる人を最初から限ります。IPAのガイドラインは「共有設定を見直そう!」を、どの会社も必ず行う6か条の1つに挙げ、共有範囲を限定すること、従業員の異動や退職のときには速やかに設定を変更(削除)することを対策の例に示しています。
4. 名前の型を決める
フォルダ名とファイル名の型を1つ決めます。型そのものの決め方はフォルダ分けの記事を、版の付け方と「最新」を増やさない方法はファイル名と版の管理の記事を参照してください。決まりの文書には、型を1行と、実例を1つ書けば十分です。
5. 終わったものの行き先と残す期間を決める
案件や年度が終わったら、そのフォルダを「99_完了」のような決まった場所へ移します。移す時期(例:案件の終了月の翌月末)と、そこでどれだけ残すかも決めます。書類の種類によっては、会社の文書管理の規程や法令で残す期間が決まっているものがあるので、その期間を優先し、分からないものは総務や経理の担当に確かめます。
6. 個人の下書きは共有の外に置く
共有フォルダの中に個人の名前のフォルダを作らず、下書きや自分用のメモは、会社が認めた個人の保存先に置きます。人に渡す段階になったら共有に移します。前出の行政文書のガイドラインも、職員が自分の仕事の便宜のために持つ資料は必要最小限にすべきとしています。手元の保存と共有の保存の分け方はローカル保存を禁止する理由の記事で扱っています。
決まりの文書の例
決めたことは、次のような1枚にまとめて、一番上の段に「00_このフォルダの決まり」として置きます。
【営業部 共有フォルダの決まり】(2026年9月 作成)
管理する人:01_取引先=佐藤(代わり:鈴木)
02_社内手続き=高木(代わり:佐藤)
上の2段を作れる人:各フォルダの管理する人のみ
見られる人:営業部全員(02_社内手続き/人事関係は課長以上)
名前の型:日付_相手_内容_版(例:20260927_A社_見積書_v1.0)
終わった案件:終了月の翌月末までに 99_完了 へ移す
個人の下書き:共有には置かない
見直しの日:1月・4月・7月・10月の第1金曜
権限の申請先:各フォルダの管理する人
運用を始める手順
1. 現状を一覧にする
一番上と2段目のフォルダ名、それぞれの最終更新日、分かれば作った人を表にします。この一覧が、どのフォルダを残し、どれを完了へ移すかを決める材料になります。
2. 使っている人と決める
決まりは、管理を任された人が1人で作らず、そのフォルダを使う人たちと30分ほど時間を取って決めます。構成を変えると、ほかの人の手順書やショートカットに影響が出るからです。
3. 切り替える日を決めて告知する
「10月1日から新しい構成で置く」のように日付を決め、1週間前に知らせます。古い構成は「旧_2026年9月まで」のような1つのフォルダにまとめ、直せない設定にして残します。必要なものは、使うときに新しい構成へ移してもらいます。
4. 3か月ごとに点検する
見直しの日には、次の点を管理する人が確かめます。
- 一番上と2段目に、決まりにないフォルダができていないか
- 異動・退職した人の権限が残っていないか
- 終わった案件が作業中の段に残っていないか
- 中身が空、または数件しかないフォルダが並んでいないか
5. 管理する人が替わるときに引き継ぐ
管理する人が異動するときは、決まりの文書と、誰にどの権限を付けているかの一覧を後任に渡し、文書の「管理する人」の欄を書き換えます。
運用でつまずきやすいところ
権限で縛りすぎる。 置いてよい場所が見つからないと、人はデスクトップやメールの添付に戻ります。上の段は固定しても、3段目から下は自由にし、行き先に迷ったものを入れる「00_仕分け待ち」を1つ置いて、管理する人が見直しの日に振り分けます。
階層をなくして検索だけに頼る。 深い階層をやめて浅くするのは有効ですが、フォルダをなくして検索だけで探す形は、ファイル名の型がそろっていないと、検索でも出てきません。浅くすることと、構成を持たないことは別のことです。
消した結果が全員に及ぶことを知らない。 共有フォルダをパソコンのフォルダとして同期していると、1人が消したファイルは全員の手元から消えます。ごみ箱から戻せる期間は保存先の種類や設定で決まっているので、その期間を調べて決まりの文書に書いておくと、消してしまったときに慌てずに済みます。
決めて終わりにする。 決まりは、見直しの日が来なければ半年で元に戻ります。見直しの日を予定表に入れ、管理する人の仕事として割り当てます。これは担当者の心がけではなく、部署として時間を取るべき仕事です。
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