チャットツールの通知疲れを減らすには、通知を種類ごとに3段に分け、確認する時刻を先に決めて、それを周りに伝えるのが近道です。通知を全部切るのでも、鳴るたびに開くのでもなく、「すぐ知るべきもの」だけを残して、残りは決めた時刻にまとめて読みます。これが、確認に使う時間の枠を先に決める「タイムボックス」の考え方です。
疲れの正体は、通知の数そのものより、通知が鳴るたびに「読むか、返すか、後にするか」を決め直す回数にあります。1日に何十回もこの判断を挟むと、本来の作業に戻るたびに頭を切り替え直すことになります。ここでは、自分の設定と時間の使い方だけでできる手順を、準備から見直しまで順に整理します。
通知で疲れる仕組み
通知1回ごとに、小さな判断が3つ起きる
通知が鳴ると、まず「誰から、何の件か」を確かめ、次に「いま返すべきか」を決め、最後に「元の作業のどこまで進んでいたか」を思い出します。1回ずつは数十秒でも、1日に何十回も繰り返せば、まとまった時間と集中が削られます。
しかも、この判断は多くの場合「後でよい」で終わります。後でよいものを確かめるために作業を止めている、というのが通知疲れの典型です。
すべての通知が同じ重さで届く
自分宛ての質問も、全体向けの告知も、自動で流れてくるお知らせも、同じ音と同じ表示で届く設定になっていると、中身を開くまで重さが分かりません。重さが分からない以上、全部開くしかなくなります。
パソコンとスマートフォンの両方で鳴る
同じ通知が2つの端末で鳴ると、席を離れても、勤務が終わっても、確認の判断が続きます。仕事と休む時間の境目がなくなることも、疲れを大きくする原因です。
画面から離れる時間がなくなる
厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2019年7月策定、2021年12月一部改正)は、パソコンなどの作業について、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10〜15分の作業休止時間を設け、連続作業の途中でも1〜2回程度の小休止を設けるよう指導することを求めています。解説では、作業休止時間は目や首、肩などの負担による疲労を防ぐためのもので、画面を注視する作業をいったん中止する時間だとしています。
通知が鳴るたびに画面に戻っていると、作業のあいだも休止のはずの時間も、画面を見続けることになります。
まず通知を棚卸しする
手順に入る前に、いまの通知を種類ごとに分けます。次の表のように、3段のどれにするかを決めてください。
| 通知の種類 | 例 | おすすめの段 |
|---|---|---|
| 自分宛てのメンション・個別メッセージ | 「◯◯さん、確認をお願いします」 | すぐ知る(通知を残す) |
| 担当している案件のチャンネル | 自分が進めている案件の相談 | 確認時刻にまとめて読む |
| スレッドへの返信 | 自分が書き込んだ話題への返信 | 確認時刻にまとめて読む |
| 部署や全社の告知 | 手続きの案内、行事の連絡 | 1日1回まとめて読む |
| 自動で流れる通知 | システムの更新、定型のお知らせ | 通知なし(必要なときに見る) |
| 参加しているだけのチャンネル | 情報収集のために入っている場 | 通知なし |
多くのビジネスチャットには、チャンネルごとに通知を「すべて」「メンションのみ」「なし」から選ぶ設定や、キーワードで通知する設定があります。名称や場所は製品によって違うので、使っているツールのヘルプで確かめてください。
あわせて、1日にチャットを開いた回数を一度数えてみます。紙に正の字を書くだけで構いません。回数が分かると、次の手順で決める確認の時刻が、いまよりどれだけ減るかが見えます。
タイムボックスの組み方
手順1:チームの返信の目安を確かめる
確認の間隔は、自分の都合だけで決めません。チームに「通常の連絡は当日中」などの目安があれば、それに間に合う間隔にします。目安が決まっていないチームでは、自分が守れる目安を先に決めて伝えます(チームで決める項目は即レスに疲れる原因の切り分けで整理しています)。
手順2:確認する時刻を1日4〜6回決める
例えば、次のように置きます。
| 時刻 | やること |
|---|---|
| 始業直後 | 前日の終業後に届いた分をまとめて読む |
| 午前の中ほど | 自分宛てと担当案件を読んで返す |
| 昼休み明け | 同上 |
| 午後の中ほど | 同上 |
| 終業の30分前 | 残りを片づけ、明日に回すものを決める |
間隔は90分〜2時間ほどが目安ですが、仕事の性質で変えて構いません。確認は1回15分など、終わりの時刻も決めます。
手順3:確認の時間の中で処理の順番を決める
確認の時間に入ったら、次の順で片づけます。
- 自分宛てのメンションと個別メッセージ
- 担当案件のチャンネル
- 残りのチャンネル(流し読み)
それぞれの連絡は、その場で3つに振り分けます。
- 2分ほどで返せるもの:その場で返す
- 調べたり考えたりが要るもの:「確認して15時までに返します」と期限だけ先に返し、作業の予定に入れる
- 読むだけでよいもの:決めておいた反応(絵文字など)をつけて終わる
期限を先に返しておけば、相手は待つ見通しが立ちます。いつまでに何を伝えるかを先に決めておく考え方は、報連相の出す条件の決め方とも共通します。
手順4:集中する枠を見えるようにする
確認と確認のあいだの時間は、カレンダーに「集中作業」として入れ、チャットの状態表示にも「◯時まで集中しています。急ぎは電話でお願いします」のように書きます。見えるようにしておくと、返信が遅い理由が周りに伝わります。
手順5:周りに伝える
始める前に、チームに一度だけ伝えます。例えば次のような一文です。
作業に集中する時間を取るため、チャットは10時・11時半・13時半・15時半・17時に確認して返すようにします。当日中の返信は変わりません。急ぎの件は電話でご連絡ください。
「返信が遅くなる」ではなく「いつまでに返すか」を伝えるのがポイントです。相手が知りたいのは、自分の連絡がいつ処理されるかです。
手順6:緊急時の抜け道を決める
通知を絞るときに最も心配なのは、急ぎの連絡を見逃すことです。抜け道を1つだけ決めておきます。
- 急ぎは電話にしてもらう
- 特定の人(上司や顧客の担当者)からの個別メッセージだけは通知を残す
- 「至急」などの語をキーワード通知に登録する
手順7:勤務時間外の通知を止める
スマートフォンのチャットアプリは、勤務時間外に通知を止める設定(通知を止める時間帯や、集中・おやすみの機能)を使います。時間外に対応が必要な役割がある場合は、その扱いをチームで決めてから設定します。
手順8:1週間後に見直す
1週間続けたら、見逃して困った連絡がなかったか、確認の時間が足りていたかを振り返り、時刻や通知の段を直します。最初から完璧な設定を目指す必要はありません。
続けるときの落とし穴
黙って通知を切る
周りに伝えずに通知を切ると、「連絡がつかない」と受け取られ、かえって電話や催促が増えます。伝えることまでが手順です。
確認の時間が延びて、集中の枠を食う
確認の時間に、返信のついでに調べ物や別の作業を始めると、枠がなし崩しになります。調べ物が要る連絡は、期限を返して作業の予定に移します。
スマートフォンで結局見てしまう
パソコンの通知を絞っても、手元のスマートフォンで見ていれば同じです。作業中はスマートフォンを視界から外し、アプリの通知も同じ段に合わせます。
作業休止の時間にチャットを読む
「休憩ついでにチャットを片づける」と、画面から離れる時間がなくなります。前出のガイドラインが求める作業休止は、画面の作業をいったん止める時間です。確認の時間と休む時間は分けて置きます。
個人の工夫で解決しようとし続ける
自分の設定を整えても、依頼に期限が書かれていない、急ぎの経路がない、といったチームの仕組みが変わらなければ、疲れは戻ってきます。その場合は、個人の工夫で埋めずに、チームの決まりとして提案する段階です。気力が落ちている、休日も疲れが抜けないといった状態が続くときは、原因を切り分けて考える仕事のやる気が出ない原因も参考にしてください。
通知疲れは、通知の数ではなく、判断の回数で決まります。まずは今日、通知の設定を表の3段に分け、確認する時刻を5つ決めてみてください。ほかの記事は業務効率・ITの一覧にまとめています。



