期日を落とすのは、忘れっぽいからではありません。多くの場合、タスクの一覧には「いつやるか」が無く、予定表には「作業する時間」が無いという、道具の間の抜けが原因です。一覧を見れば期日は分かり、予定表を見れば会議は分かるのに、その期日までに作業する時間がどこにあるのかは、どちらにも書かれていません。

直し方は、2つを1つの流れにつなぐことです。期日を提出期限・自分の締切・着手日の3つに分け、作業にかかる時間の枠を予定表に置き、週の空き時間と積み上げた量を比べます。はみ出したら、期日の前に調整します。ここでは、期日が落ちる仕組み、点検の項目、つなぐ手順、実行するときの落とし穴を順に説明します。

期日が落ちる仕組み

一覧と予定表が、それぞれ半分しか持っていない

タスクの一覧と予定表は、持っている情報が違います。

道具持っている情報持っていない情報
タスク管理ツール・ToDo 一覧何をやるか、いつまでかいつやるか、どれだけ時間がかかるか
予定表いつ、どこで、誰と会うか会議以外の作業の時間

一覧の期日は「締め切り」でしかなく、その日までに何時間の作業が要るのかは見えません。予定表には会議だけが入り、空いているように見える時間が、実は一覧の作業で埋まっています。予定表の上で空いている時間と、本当に作業に使える時間が違うことが、期日が迫ってから慌てる理由です。

期日が1つしかない

「10 月 9 日提出」という期日しか持っていないと、着手はどうしても遅れます。提出の前に上司の確認や手直しが要るなら、本当の締切はもっと前にあります。作業に6時間かかるなら、着手は3日前には要ります。この2つの日付を持っていないと、提出期限の前日に初めて量に気づきます。

見積もりは、楽観に寄る

かかる時間の見込みは、たいてい短く出ます。カナダの心理学者 Roger Buehler らの 1994 年の研究(Journal of Personality and Social Psychology 誌「Exploring the “Planning Fallacy”」)では、卒業論文に取り組む学生に仕上がるまでの日数を予測してもらったところ、予測の平均は 33.9 日、実際の平均は 55.5 日でした。予測どおりに終えた人は 29.7%で、「すべてが最悪に進んだら」という前提の予測(平均 48.6 日)ですら、実際より短く出ていました。

同じ論文では、人は見積もるときに「これからどう進めるか」の筋書きばかりを考え、過去に同じような作業でどれだけかかったかをあまり使わないことも示されています。過去の経験と結びつけて見積もるよう指示された人たちでは、楽観の偏りが見られなくなりました。見積もりを良くするには、気をつけることより、前回の実績を記録して使うことのほうが効きます。

週の容量を見ていない

1件ずつの期日が守れそうでも、同じ週に重なると足りなくなります。1週間に作業に使える時間には上限があり、そこに積み上げた作業の合計が上限を超えていれば、どれかが落ちます。一覧だけを見ていると、この合計は見えません。

自分の期日管理を点検する

次の項目で、いまのやり方を確かめてください。

  • 期日のある仕事は、すべて1つの一覧に入っている
  • 一覧の仕事ごとに、かかる時間の見込みが書いてある
  • 提出期限とは別に、自分の締切と着手日を決めている
  • 作業の時間を、会議と同じように予定表に入れている
  • 今週の作業の合計時間と、作業に使える時間を比べたことがある
  • 割り込みに備えた空きを、予定表に残している
  • 人の返事を待っている仕事にも、催促する日が決まっている
  • ずれそうなとき、期日の前に相手へ伝えている

期日は、次の3つに分けて持ちます。

期日の種類意味決め方
提出期限(納期)相手と約束した日時依頼を受けたときに、日付と時刻で確かめる
自分の締切自分の作業を終える日時提出期限から、確認・手直し・予備の時間を引く
着手日作業を始める日自分の締切から、かかる時間の分をさかのぼる

タスクと予定表を一つの流れにつなぐ手順

1. 期日のある仕事を、1つの一覧に集める

メール、チャット、会議のメモ、口頭の依頼と、仕事の入り口はばらばらです。入り口ごとに管理すると、見落としが出ます。期日のある仕事は、受けた日のうちにタスク管理ツールの一覧に移し、1件ごとに提出期限とかかる時間の見込みを書きます。見込みは、前回の同じような仕事の実績を目安にします。

2. 自分の締切と着手日を逆算する

例で考えます。

提出期限:10 月 9 日(金)15 時 かかる時間:6 時間(前回の実績は5時間半) 上司の確認と手直し:1日

→ 自分の締切:10 月 8 日(木)12 時 → 作業の枠:2 時間 × 3 回(5 日・6 日・7 日の午前)

一覧には、提出期限に加えて自分の締切を書きます。通知を使う場合は、提出期限ではなく自分の締切と着手日に届くようにします。

3. 作業の枠を、予定表に置く

逆算した作業の時間を、予定表に会議と同じように入れます。枠の名前には、一覧のタスク名をそのまま使います。何の枠か後で分かり、終わったかどうかを一覧と突き合わせられます。

枠は1〜2時間程度のまとまりにします。30 分未満の小さな作業は1件ずつ枠にせず、「メール・小さな作業」の枠を1日に1つ作ってまとめて片づけます。

4. 週の容量と比べる

週の初めに、作業に使える時間と、置いた枠の合計を比べます。

週の勤務時間 40 時間 − 会議 12 時間 − 割り込みに備える空き 8 時間 = 作業に使える時間 20 時間

割り込みに備える空きは、先週どれだけ割り込みがあったかを見て決めます。置いた枠の合計がこの時間を超えるなら、どれかは期日までに終わりません。この時点で、どれを先に回すか、どれの期日を相談するかを決めます。期日の 3 日前ではなく、週の初めに分かることが大事です。

5. 毎日の終わりに、枠を引き直す

予定表の枠が予定どおりに終わるとは限りません。終業前に、今日の枠が終わったかを一覧と突き合わせ、終わらなかった分は翌日以降の空きに移します。移せる空きが自分の締切までに無ければ、それが調整の合図です。

あわせて、終わった仕事の実際の時間を一覧に書いておきます。次に同じような仕事を見積もるときの材料になります。

6. ずれが見えたら、期日の前に伝える

間に合わないと分かった時点で、相手に伝えます。期日を過ぎてから伝えるのと、前に伝えるのとでは、相手が取れる手の数が違います。

10 月 9 日 15 時提出の資料の件です。 現在、全 5 章のうち 3 章まで終わっています。残りの 2 章に想定より時間がかかっており、このままでは週明けにずれ込む見込みです。 ① 9 日 15 時に 4 章までをお送りし、5 章は 13 日(火)10 時にお送りする ② 期限を 13 日(火)10 時に延ばしていただく どちらがよろしいでしょうか。

進み具合を数字で示し、選べる案を添えると、相手はその場で決められます。

7. 人待ちの仕事にも、日付を付ける

「先方の回答待ち」「経理の確認待ち」のような仕事は、自分の手を離れているため、一覧から消えがちです。待ちの仕事にも、催促する日を期日として付けます。その日が来たら確かめ、返事が無ければ一言送ります。

実行するときの落とし穴

予定表を枠で埋め尽くす

空きを残さずに枠を置くと、1件の割り込みで週の予定がすべてずれます。手順 4 の「割り込みに備える空き」は削らないでください。空きが余った週は、前倒しで次の枠を進めればよいだけです。

作業の枠が、会議で上書きされる

予定表をほかの人に公開していると、作業の枠が「空き」に見えて会議を入れられることがあります。枠を「予定あり」として表示する、打ち合わせを受ける時間帯を決めて周りに伝える、といった方法があります。予定表の公開のしかたと周りとのルールの決め方はリモートワークの予定管理ルールで扱っています。

同じことを2か所に書いて、食い違う

一覧にも予定表にも期日を書くと、片方だけ直して食い違うことがあります。期日の正本は一覧、時間の正本は予定表と役割を分けます。ツール同士をつなぐ機能があれば使って構いませんが、無くてもこの分担で足ります。

そもそも量が多すぎる

手順 4 で毎週はみ出すなら、段取りの問題ではなく、持っている仕事の量の問題です。個人の工夫で詰め込み続けると、どこかで大きく落とします。作業に使える時間と枠の合計を数字で示して、上司と優先順位を相談してください。担当の範囲が曖昧なまま仕事が集まってくる場合の整理の仕方は業務範囲が曖昧な職場でタスクの肥大化を防ぐにまとめています。時間外の労働が続いて体調に影響が出ているときは、社内の相談窓口や、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。


期日管理で大事なのは、期日を覚えておくことではなく、期日までの作業の時間を予定表の上に置いてみることです。置いてみると、間に合うかどうかが週の初めに分かります。まずは今週の一覧から期日の近い3件を選び、かかる時間を書いて、予定表に枠を置いてみてください。週の締めくくりに一覧と予定表を片づけて、仕事を週末に持ち越さない方法は仕事を週末に持ち越さない締め方で扱っています。

ほかの仕事の進め方の記事は、ビジネス基礎の一覧から探せます。