男女の賃金の差は、縮まりながらも残っています。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査で、フルタイムで働く人の月の賃金(所定内給与)は、男性が37万3,400円、女性が28万5,900円でした。男性を100とすると女性は76.6で、比べられる1976年以降で差が最も小さくなっています。

一方、会社が自ら公表している「男女の賃金の差異」は、中央値が72.8と国の統計より差が大きく出ます。数え方が違うためで、賞与や残業代を含むかどうかが主な理由です。この記事では、国の統計で差の大きさと中身を確かめ、会社の公表の数字を読むときの注意を整理します。

国の統計で見る男女の賃金の差

賃金構造基本統計調査は、常用労働者10人以上の民営事業所を対象に、厚生労働省が毎年6月分の賃金を調べる調査です。ここでの「賃金」は、6月分の所定内給与(残業代などを除いた、決まって支払われる給与)の平均です。

差は少しずつ縮まっている

年男性女性男女の差(男性=100)
1976年15万1,500円8万9,100円58.8
2005年33万7,800円22万2,500円65.9
2015年33万5,100円24万2,000円72.2
2023年35万900円26万2,600円74.8
2024年36万3,100円27万5,300円75.8
2025年37万3,400円28万5,900円76.6

2020年から推計の方法が変わっているため、前後の年の比較は目安です。50年近くで差は大きく縮まりましたが、女性の賃金は今も男性の4分の3ほどです。

年齢が上がるほど差が開く

年齢男性女性男女の差(男性=100)
20〜24歳24万5,700円23万9,600円97.5
25〜29歳28万8,000円26万8,800円93.3
30〜34歳33万400円28万3,200円85.7
35〜39歳36万6,200円29万2,400円79.8
40〜44歳39万8,200円30万3,600円76.2
45〜49歳42万700円30万5,700円72.7
50〜54歳43万7,500円30万5,400円69.8
55〜59歳44万5,600円30万5,700円68.6

20代前半ではほとんど差がありませんが、30代から開き始めます。男性の賃金は50代後半まで上がり続けるのに対し、女性の賃金は40代でほぼ横ばいになるためです。大学卒に絞っても、20〜24歳は97.4ですが、年齢計では76.2でした。

役職ごと・雇用形態ごとに分けると差は小さくなる

区分男性女性男女の差(男性=100)
部長級64万2,400円57万8,300円90.0
課長級54万1,400円47万300円86.9
係長級41万900円36万5,700円89.0
役職についていない人33万2,100円28万100円84.3
正社員・正職員38万7,400円30万4,900円78.7
正社員・正職員以外26万8,100円21万8,400円81.5

同じ役職どうしで比べると、差は全体の76.6より小さくなります。全体の差が大きいのは、賃金の高い役職や正社員に男性が多いことが大きく影響しているためです。ただし、同じ役職どうしでも差は残っています。

会社が公表している男女の賃金の差異

女性活躍推進法にもとづき、会社は「男女の賃金の差異」を公表します。男性の賃金の平均に対する女性の賃金の平均の割合で、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」に分けて公表することになっています。

Mixum の会社名鑑で、女性の活躍推進企業データベースなどに会社が公表している数字を集計しました(2026年9月18日に取り込んだ公表値を、2026年10月2日に集計)。

区分公表している社数4分の1の会社中央値4分の3の会社
全労働者25,616社63.272.881.9
正規雇用労働者25,406社70.077.284.5

全労働者で見ると、60未満の会社が18.6%、90以上の会社が12.2%でした。女性の賃金の平均が男性と同じか上回る(100以上の)会社も5.4%あります。

業種ごとの中央値

公表している会社が50社以上ある業種の、全労働者の中央値です。

業種公表している社数中央値
医療・福祉3,631社80.3
情報通信1,697社78.9
教育・学習支援547社75.4
その他のサービス3,568社74.9
学術研究・専門・技術サービス523社74.8
製造5,953社72.4
農林59社71.6
複合サービス280社71.3
電気・ガス・熱供給・水道113社70.3
宿泊・飲食サービス1,000社70.3
運輸・郵便1,415社70.0
不動産・物品賃貸497社69.9
建設1,252社68.3
生活関連サービス・娯楽395社67.3
卸売・小売3,781社67.1
金融・保険605社65.2

医療・福祉や情報通信は差が小さく、金融・保険、卸売・小売、建設は差が大きい側です。金融・保険の数字の背景は、金融業界の女性管理職比率で扱っています。

これは数字を公表している会社だけの値で、業種全体の平均ではありません。

国の統計より差が大きく出る理由

  • 賞与と残業代を含む:会社の公表は1年間の賃金で比べるのが一般的で、賞与や残業代も入ります。国の統計の76.6は、これらを含まない月の所定内給与の比較です
  • パートを含む:「全労働者」には、短い時間で働く人も入ります。パートで働く女性が多い会社では、平均が下がります。正規雇用労働者だけの中央値は77.2でした
  • 公表している会社が違う:公表しているのは主に規模の大きい会社です。従業員の規模の区分ごとの中央値は、101〜300人の会社が74.3、301〜1,000人が72.0、1,001人以上が70.3と、規模が大きいほど差が大きく出ています

応募先の数字を読むときの注意

3つの区分を並べる

全労働者の数字だけでは、正社員の差なのか、パートの多さによる差なのかが分かりません。正規雇用労働者の数字と並べて見ます。全労働者の差が大きく、正規雇用労働者の差が小さい会社は、パートで働く女性が多いことが主な理由と考えられます。

女性管理職比率と並べる

役職の高い人に男性が多いと、賃金の平均の差は大きくなります。管理職に占める女性の割合とあわせて見ると、差の理由の見当がつきます。2026年4月1日からは、常時雇用する労働者が101人以上の会社に、女性管理職比率の公表も義務づけられました。

説明欄を読む

公表の数字には、対象の期間、対象の人の範囲、賃金に含めたものなどの注記が付きます。女性の活躍推進企業データベースには説明欄があり、差の理由や取り組みを書いている会社もあります。

応募先の男女の賃金の差異を確かめる手順

  1. 国の統計の目安を知る:フルタイムの人の月の賃金で76.6、正社員どうしで78.7
  2. 業種の目安を知る:上の表で、応募先の業種の中央値を確かめる
  3. 応募先の数字を探す:女性の活躍推進企業データベースで、全労働者と正規雇用労働者の差異を見る。会社名鑑の会社ページでも、公表されている会社の数字を見られる
  4. 管理職の割合と並べる:会社名鑑の女性管理職比率が高い会社の一覧で、業種ごとの位置を確かめる
  5. 面接で聞く:同じ職種・等級での賃金の決め方や、昇格の基準を尋ねる

女性が働きやすい会社を数字で確かめる全体の流れは、女性が働きやすい会社の探し方にまとめています。

読み違えやすい点

  • 同じ仕事の賃金差と思う:役職・職種・雇用形態の構成の違いを含んだ、平均どうしの比較です
  • 国の統計と会社の数字を直接比べる:国の統計は月の所定内給与、会社の公表は賞与なども含む1年間の賃金が一般的です
  • 全労働者の数字だけを見る:正規雇用労働者の数字と並べます
  • 数字の大小だけで決める:女性の少ない会社では、数人の違いで数字が大きく動きます

まとめ

  • 令和7年賃金構造基本統計調査で、男性を100とした女性の賃金は76.6。比べられる1976年以降で差が最も小さい
  • 20代前半ではほぼ差がなく、年齢が上がるほど差が開く
  • 同じ役職どうしで比べると差は84〜90ほどに縮まり、役職の構成の違いが差の大きな理由
  • 会社が公表している男女の賃金の差異の中央値は全労働者で72.8、正規雇用労働者で77.2
  • 応募先の数字は、3つの区分、女性管理職比率、説明欄とあわせて読む

参考資料