安全衛生優良企業は、労働者の安全や健康を確保する対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業を、厚生労働省の制度として都道府県労働局長が認定し、公表するものです。2015年6月に申請の受付が始まりました。

会社選びで役に立つのは、認定の必須の項目に、過去3年間に重大な法違反がないこと、休業1日以上の労働災害の発生率が3年間すべての年で業種の平均を下回っていること、直近の事業年度で1人あたりの残業と休日労働が毎月45時間未満であることが入っている点です。認定の有効期間は3年です。基準の中身と、認定を見るときの注意を順に説明します。

制度の骨組み

項目内容
認定する者都道府県労働局長(本社を管轄する労働局に申請)
対象すべての業種の企業
認定の単位企業(法人など)単位。子会社や構内の協力会社は含まない。建築現場や支店だけの認定はできない
有効期間3年間。続けるには改めて申請する
申請の流れ自己診断サイトで取り組みの水準を確かめ、基準を満たしていれば確認の書類を付けて申請
認定の印認定企業だけが使えるシンボルマークがあり、広告や求人、ウェブサイトなどに使える

2017年7月1日からは、長時間労働が常態化している企業は認定しない、という新しい基準で運用されています。

認定の基準は「必須の項目」と「点数」の2段

必ず満たす項目

基準の第1と第2は、1つでも欠ければ認定されない必須の項目です。主なものを働く人の目線で並べます。

必須の項目(主なもの)働く人にとっての意味
過去3年間に、労働基準関係法令違反の送検や、重大な違反による企業名の公表がない法令を守る体制が保たれている
過去3年間に、法違反による死亡災害などが2件以上起きていない重い災害を繰り返していない
過去3年間のすべての年で、休業1日以上の労働災害の発生率(度数率)が同じ業種の平均を下回る災害の起きにくさが業種の中で平均より良い
特殊健康診断の有所見率が全国平均を下回り、作業環境測定の結果に改善されないままの問題がない(該当する業務がある場合)有害な物質を扱う職場の健康管理ができている
直近事業年度に、1人あたりの時間外・休日労働が毎月すべて45時間未満で、月平均60時間以上の人がいない長時間労働が常態化していない
過去2年度の労働保険料の滞納がない保険の手続きが適正

特に3つ目の労働災害の基準は、災害の起きにくさを数字で業種の平均と比べる点で、働く人にとって分かりやすい物差しです。比べる相手は、厚生労働省の労働災害動向調査が業種ごとに公表している度数率で、年度ではなく暦年で比べます。特定元方事業者(元請など)の場合は、現場で働く協力会社の災害も含めて計算します。

点数で見る取り組み

第3の評価項目では、安全衛生の取り組みを点数で評価します。分野ごとに総計の6割以上(一部の分野は分野ごとの基準なし)、全体で総計の8割以上が必要です。

分野製造業等製造業等以外
安全衛生活動を推進するための取り組み対象対象
健康管理の取り組み対象対象
メンタルヘルス対策の取り組み対象対象
過重労働防止対策の取り組み対象対象
受動喫煙防止対策の実施対象対象
安全でリスクの少ない職場環境の整備対象対象外
満点/総合点の基準55点/44点42点/34点

ここでいう製造業等は、労働安全衛生法施行令第2条第1号・第2号の業種で、林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業などが含まれます。現場の仕事が多い業種では、機械や作業のリスクを減らす取り組みまで点数に入る作りです。

会社はどう申請するのか

認定がどのくらい確かなものかは、申請の流れを知ると見当がつきます。会社は次の順で手続きを進めます。

  1. 厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」にある自己診断で、自社の取り組みの水準を確かめる
  2. 必須の項目と点数の基準を満たしていれば、各項目を満たしていることを示す書類をそろえる
  3. 本社を管轄する都道府県労働局の健康安全を担当する課に申請する
  4. 労働局の審査を経て認定され、認定企業として公表される
  5. 3年の有効期間が終わる前に、続ける場合は改めて申請する

自己申告だけで名乗れるものではなく、送検の有無や労働災害の発生率、残業の時間などを書類で示して審査を受ける仕組みです。求人や会社の案内でマークを見たときは、一覧に載っているか、いつ認定されたかを確かめると確実です。

比べる相手の「度数率」はどのくらいか

労働災害の基準で比べる度数率は、100万延べ実労働時間あたりの労働災害による死傷者数で、災害の起きる頻度を表します。令和7年の労働災害動向調査(事業所規模100人以上)では、次のとおりでした。

業種度数率(令和7年)
調査産業計2.01
製造業1.33
運輸業、郵便業3.65
卸売業、小売業2.10
総合工事業(工事現場を対象にした別の調査)1.89

同じ調査では、事業所の規模が小さいほど度数率が高い傾向があり、1,000人以上は0.63、100〜299人は2.69でした。認定企業は、自社の業種の平均を3年続けて下回っている会社ということになります。業種ごとの死亡災害や死傷者数の違いは、労働災害の統計で見る業種ごとのリスクで詳しく扱っています。

認定企業の探し方

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に、安全衛生優良企業の一覧が載っています。2026年10月1日に確かめた時点で、一覧に載っている企業は44社でした(一覧の更新日は2026年9月24日)。

数は多くありません。認定は申請した企業だけが対象で、手続きの負担もあるため、認定がないことは、その会社の安全対策が不十分であることを意味しません。認定のない会社を見るときの確かめ方は、安全な職場の見分け方にまとめています。

認定を見るときの注意

  • 認定は企業単位:自分が働く現場や工場の状況は、別に確かめます。構内の協力会社として働く場合、認定は雇う会社について見ます
  • 有効期間を確かめる:3年で切れます。一覧や会社の案内で、いつ認定されたかを見ます
  • 基準を満たさなくなったら返上する仕組み:厚生労働省のQ&Aでは、基準を満たさなくなったときは労働局に相談して認定を返上することとされ、返上しない場合は認定が取り消され、2年間は申請できません。マークの不正使用も同じく2年間申請できなくなります
  • 過去の実績の評価:3年間の実績と取り組みの評価で、これからの災害がないことを約束するものではありません

面接や見学では、認定の有無に関係なく、配属先の現場の安全の取り組みを尋ねることができます。現場の仕事の会社選びに使える記事は、製造・建設・物流の会社選びにまとめています。

まとめ

  • 安全衛生優良企業は、安全と健康の取り組みで高い水準を保つ企業を、都道府県労働局長が認定する厚生労働省の制度
  • 必須の項目に、過去3年の重大な法違反なし、度数率が3年すべて業種平均未満、時間外・休日労働が毎月45時間未満などがある
  • 取り組みは点数で評価。製造業等は55点中44点以上、それ以外は42点中34点以上
  • 認定は企業単位で、有効期間は3年。子会社や構内の協力会社は含まない
  • 一覧は職場のあんぜんサイト。認定企業は44社(2026年10月1日確認)と少なく、認定がないことだけで判断しない

参考資料