安全な職場を見分けるには、3つの段階で材料を集めるのが確実です。1つ目は、業種で多い労働災害を国の統計で知ること。2つ目は、会社の認定と、残業・休みの数字を公開データで確かめること。3つ目は、応募先の現場が、その業種で多い災害にどう備えているかを尋ねることです。
令和7年の労働災害は、確定値で死亡者700人、休業4日以上の死傷者13万5,333人でした。建設業は墜落・転落、製造業ははさまれ・巻き込まれ、陸上貨物運送事業は交通事故が、死亡災害で最も多い型です。業種ごとの危険を知っておけば、会社に何を聞けばよいかが決まります。この記事は、現場の仕事の会社選びの入り口として、全体の流れをまとめたものです。
安全な職場を形づくる3つの要素
「安全な職場」は、災害が起きにくいことだけを指すわけではありません。公開されている情報から確かめられるのは、次の3つです。
| 要素 | なぜ大事か | 何で確かめるか |
|---|---|---|
| 災害の起きにくさ | その業種・会社で、けがや事故がどのくらい起きているか | 労働災害の統計(業種)、安全衛生優良企業の認定(会社) |
| 長時間労働の少なさ | 疲れがたまると注意力が落ちる。国の認定も長時間労働を基準に入れている | しょくばらぼの残業の数字、安全衛生優良企業の認定 |
| 休みの取りやすさ | 休めない職場では疲れが抜けにくい | しょくばらぼの有給休暇の取得率・取得日数 |
安全衛生優良企業の認定基準に、労働災害の発生率だけでなく「1人あたりの時間外・休日労働が毎月45時間未満」という労働時間の条件が入っているのは、この3つがつながっているからです。
公開データで分かること
業種の傾向:労働災害の統計
厚生労働省は毎年、業種ごとの死亡者数、休業4日以上の死傷者数、働く人1,000人あたりの死傷者数(千人率)を公表しています。令和7年の千人率は、全産業2.3に対して、建設業4.0、製造業2.7、陸上貨物運送事業8.7、林業17.7でした。人数で見るか率で見るかで順位が変わる点や、業種ごとに多い事故の型は、労働災害の統計で見る業種ごとのリスクで詳しく説明しています。
会社の認定:安全衛生優良企業
会社単位で安全への取り組みを国が確かめる仕組みが、安全衛生優良企業の認定です。過去3年間に重大な法違反がないこと、休業1日以上の労働災害の発生率が3年すべての年で業種の平均を下回ることなどが必須で、有効期間は3年です。認定企業は、2026年10月1日に確かめた時点で一覧に44社と多くありません。基準の中身と探し方は安全衛生優良企業の認定の基準にまとめています。
会社の働き方の数字:しょくばらぼ
厚生労働省の「しょくばらぼ」には、会社が公表した残業や有給休暇の数字が載っています。Mixum の会社名鑑に載せている会社のうち、数字を公表している会社の中央値は次のとおりでした(厚生労働省「しょくばらぼ」の公表値、2026年10月1日の集計)。
| 業種 | 月平均の残業時間(法定時間外・休日労働)の中央値 | 年次有給休暇の取得率の中央値 |
|---|---|---|
| 建設業 | 12.9時間(1,400社) | 66.0%(1,221社) |
| 製造業 | 13.6時間(3,341社) | 74.9%(3,572社) |
| 運輸業、郵便業 | 21.9時間(440社) | 68.3%(608社) |
| 全業種 | 11.0時間(14,702社) | 71.7%(14,249社) |
(かっこ内は、その数字を公表している会社の数)
これは数字を公表している会社だけの値で、業種全体の平均ではありません。公表しているのは比較的規模の大きい会社や、開示に積極的な会社に偏っている可能性があります。それでも、応募先の数字が同じ業種の中でどのあたりにあるかを知る目安になります。
業種ごとに変わった働き方のルール
現場の仕事では、ここ数年で労働時間のルールが大きく変わりました。会社を比べるときの前提になるので、要点だけ押さえておきます。詳しい中身は、今後このカテゴリで順に取り上げます。
- 建設業の時間外労働の上限:2024年4月から、時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間です。災害時の復旧・復興の事業に限り、月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の規制は適用されません
- トラックなど自動車運転の業務:2024年4月から、特別条項付きの36協定を結ぶ場合の時間外労働の上限が年960時間になりました。いわゆる物流の「2024年問題」と呼ばれる変化です
- 交替制の勤務:工場や物流センターでは、夜勤を含む交替制で働く職場が多く、勤務の組み方が休みやすさに直結します
- 資格取得の支援:フォークリフトやクレーン、施工管理など、現場の仕事は資格と結びつくものが多く、支援の有無が働きながら力をつける条件になります
- 勤続年数:令和7年の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の平均勤続年数は製造業15.3年、建設業13.7年、運輸業・郵便業12.9年でした
見分ける手順
- 業種で多い災害を知る:統計で、就く予定の業種の千人率と、多い事故の型を確かめる
- 認定を確かめる:応募先が安全衛生優良企業の認定を受けているか、職場のあんぜんサイトの一覧で見る
- 働き方の数字を見る:しょくばらぼで、残業(法定時間外・休日労働)と有給休暇の取得の数字を見て、上の中央値と比べる
- 現場の対策を尋ねる:業種で多い災害の型を挙げて、その対策を具体的に聞く
- 見学で確かめる:できれば職場を見て、下のチェックリストで確かめる
架空の例で流れをたどります。工場の製造の仕事を考えているDさんは、まず統計で、製造業の死亡災害ではさまれ・巻き込まれが最も多いことを知りました。応募先は安全衛生優良企業の一覧には載っていませんでしたが、しょくばらぼでは法定時間外・休日労働の月平均が製造業の中央値を下回っていました。そこで面接では「機械の詰まりを直すときや清掃のときは、どの手順で機械を止めますか」と尋ねることにしました。認定の有無だけで決めず、統計と数字と質問を組み合わせるのがこの手順の考え方です。
見学・面接で確かめるチェックリスト
- 通路や作業場所に物が置かれたままになっていないか(転倒は全産業の死傷で最も多い型です)
- ヘルメット・安全靴・手袋などの保護具を、作業している人が身につけているか
- 高い場所の作業に、手すりや墜落を防ぐ器具が使われているか(建設・物流)
- 機械の点検や掃除のときに機械を止める手順が決まっているか(製造)
- 新しく入った人への安全の教育は、いつ、誰が、どのくらいの時間行うか
- 繁忙期の残業と、交替制の場合の勤務の組み方
落とし穴
- 認定がないことを、危ない会社の印と読む:認定は申請した会社だけが対象です。認定がない会社は、数字と現場の対策で判断します
- 会社全体の数字を、配属先の数字と思い込む:残業も災害も、現場や部署で大きく違うことがあります
- 人数の多さだけで業種を避ける:死傷者数は働く人の多さに比例します。業種を比べるなら千人率で見ます
現場の仕事の会社選びに使える記事は、製造・建設・物流の会社選びの一覧にまとめています。
まとめ
- 安全な職場は、災害の起きにくさ・長時間労働の少なさ・休みの取りやすさの3つで見る
- 業種の傾向は労働災害の統計、会社の取り組みは安全衛生優良企業の認定、働き方はしょくばらぼの数字で確かめる
- 令和7年の千人率は全産業2.3、建設業4.0、製造業2.7、陸上貨物運送事業8.7
- 建設業と自動車運転の業務には、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されている
- 最後は、業種で多い災害の型を挙げて、応募先の現場の対策を具体的に尋ねる
参考資料
- 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」(2026年5月27日)
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「業種別死傷年千人率(休業4日以上)の推移 平成24年〜令和7年」
- 厚生労働省「安全衛生優良企業公表制度 解説書」(令和7年3月版)
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生優良企業 認定企業一覧」(2026年10月1日確認)
- 厚生労働省「職場情報総合サイト(しょくばらぼ)」(会社名鑑の集計に使った公表値は2026年9月18日時点)
- 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」(働き方改革特設サイト)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2026年3月24日)