令和7年の労働災害は、確定値で死亡者700人(前年より46人少なく、過去最少)、休業4日以上の死傷者13万5,333人(前年より385人少ない)でした。厚生労働省が2026年5月27日に公表した数字です。

業種ごとのリスクは、どの物差しで見るかで見え方が変わります。人数で見ると、死亡者は建設業、死傷者は製造業が最も多くなります。一方、働く人1,000人あたりの千人率で見ると、林業(17.7)や陸上貨物運送事業(8.7)が高く、製造業(2.7)は全産業(2.3)に近い水準です。さらに業種ごとに、多い事故の型もはっきり違います。この記事では数字の読み方と、会社選びでの使い方を説明します。

3つの物差しの違い

物差し何を表すか使いどころ
死亡者数・死傷者数1年間に起きた災害の人数業種として対策が必要な規模。働く人が多い業種ほど大きく出る
死傷年千人率労働者1,000人あたり1年間の死傷者数(休業4日以上)働く1人にとっての起きやすさを業種どうしで比べる
度数率100万延べ実労働時間あたりの死傷者数(休業1日以上)労働時間の違いも含めて頻度を比べる。安全衛生優良企業の基準に使われる

死傷者数と千人率が数えるのは、仕事を4日以上休んだ災害です。休みが3日以内のけがや、休まずに済んだけがは入っていません。度数率は休業1日以上を数えるので、同じ業種でも統計によって対象の範囲が違います。

製造業は働く人が多いので、人数では大きく出ます。1人あたりで比べるなら千人率を見ます。度数率と、それを使う認定の基準は安全衛生優良企業の認定の基準で扱っています。

業種別の数字(令和7年・確定値)

業種死亡者数(前年)休業4日以上の死傷者数(前年)死傷年千人率
全産業700人(746人)135,333人(135,718人)2.3
建設業214人(232人)13,437人(13,849人)4.0
製造業115人(142人)26,371人(26,676人)2.7
陸上貨物運送事業80人(108人)15,632人(16,292人)8.7
林業25人(31人)1,063人(1,167人)17.7
商業61人(55人)23,128人(22,039人)2.3
保健衛生業18人(11人)19,291人(18,867人)2.2

死亡・死傷者数は労働者死傷病報告と死亡災害報告、千人率は労働者死傷病報告の死傷者数を総務省の労働力調査の雇用者数(役員を除く)で割って求めています。2つの統計の業種の分け方は細部が違うので、千人率は目安として見ます。

製造業の中でも、食料品製造業の千人率は5.8、木材・木製品製造業は10.2と、全体の2.7を大きく上回る業種があります。運輸業全体の千人率は6.8でした。

前の年からの変化

死亡者数は製造業で19.0%、陸上貨物運送事業で25.9%、建設業で7.8%減りました。一方、死傷者数は商業(4.9%増)や保健衛生業(2.2%増)で増えています。現場の業種だけでなく、第三次産業でも休業4日以上の災害は多く、小売業は16,464人、社会福祉施設は13,743人と、建設業(13,437人)を上回っています。現場の仕事に限らず、どの職場にも労働災害の危険があることが数字に表れています。

業種ごとに多い事故の型

同じ「現場の仕事」でも、多い事故の型は業種で違います。死亡者数と死傷者数で、上位の型を並べます。

業種死亡で多い型休業4日以上の死傷で多い型
建設業墜落・転落 91人(死亡214人のうち)墜落・転落 4,343人、転倒 1,579人、はさまれ・巻き込まれ 1,496人
製造業はさまれ・巻き込まれ 47人(115人のうち)はさまれ・巻き込まれ 5,992人、転倒 5,732人、動作の反動・無理な動作 3,144人
陸上貨物運送事業交通事故(道路)43人(80人のうち)墜落・転落 4,126人、転倒 2,972人、動作の反動・無理な動作 2,738人
林業激突され 16人(25人のうち)—

建設業の死亡の4割余りは墜落・転落、製造業の死亡の4割余りははさまれ・巻き込まれ、陸上貨物運送事業の死亡の5割余りは道路での交通事故です。陸上貨物運送事業では、死傷者で見ると運転中の事故より、墜落・転落や転倒のほうが多くなっています。

全産業の死傷者で最も多いのは転倒(37,195人、全体の27.5%)で、前年より2.2%増えました。次いで、重い物を持ったときなどの動作の反動・無理な動作(22,166人)です。どの業種でも、足もとの安全と体への負担は共通の課題です。

国が重点を置いている業種

国の第14次労働災害防止計画(令和5〜9年度)は、2022年と比べた2027年までの目標として、建設業と林業の死亡者数を15%以上減らすこと、製造業の機械によるはさまれ・巻き込まれの死傷者数を5%以上減らすこと、陸上貨物運送事業の死傷者数を5%以上減らすこと、などを掲げています。上の表の事故の型と、国の重点がほぼ重なっていることが分かります。

会社選びでの使い方

統計は業種全体の傾向で、個々の会社の安全を示すものではありません。使い道は、その業種で多い災害に対して、応募先がどんな対策をとっているかを尋ねることです。

業種統計から見える重点面接・見学で尋ねること
建設業墜落・転落高所作業の手順、足場や安全帯の扱い、新しく入った人への教育
製造業はさまれ・巻き込まれ機械の安全装置、点検や清掃のときに機械を止める手順
陸上貨物運送事業交通事故、荷役中の墜落・転落や転倒運行の計画と休憩、荷の積み下ろしの手順と設備
業種を問わず転倒、動作の反動通路や床の整理、重い物を扱うときの補助の道具

架空の例で考えます。物流センターでの仕事を考えているCさんは、統計から陸上貨物運送事業では死傷者の型の上位が墜落・転落、転倒、動作の反動・無理な動作だと知りました。そこで面接では「トラックの荷台やプラットホームでの作業で、転落を防ぐためにどんな決まりがありますか」「重い荷を扱うときに使う道具や、2人で運ぶ決まりはありますか」と尋ねることにしました。業種の統計を、自分が就く作業の場面に置き換えて聞くのがコツです。

「安全教育はありますか」と聞くより、統計で多い型を挙げて「◯◯の対策はどうされていますか」と聞くほうが、具体的な答えが返ってきやすくなります。安全な職場を見分ける全体の流れは、安全な職場の見分け方にまとめています。

まとめ

  • 令和7年の労働災害(確定値)は、死亡者700人で過去最少、休業4日以上の死傷者は13万5,333人
  • 人数では建設業(死亡214人)と製造業(死傷2万6,371人)が多く、千人率では林業17.7、陸上貨物運送事業8.7が高い
  • 多い事故の型は、建設業が墜落・転落、製造業がはさまれ・巻き込まれ、陸上貨物運送事業が交通事故(死亡)
  • 全産業の死傷で最も多いのは転倒(27.5%)
  • 統計は業種の傾向。会社選びでは、その業種で多い災害への対策を具体的に尋ねる

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参考資料