事務職の職務経歴書は、売上や契約件数のような「成果の数字」がなくても書けます。代わりに使うのは、仕事の大きさを示す数字です。1 日に処理した件数、毎月の締めの回数、支えた社員の人数、守った期限、使ったソフトを書けば、読み手はあなたがどのくらいの量と責任を任されていたかを思い描けます。
この記事では、厚生労働省とハローワークがまとめた「職務経歴書の作り方」が挙げる振り返りの 8 項目を土台に、一般事務・営業事務・経理事務などで使える書き方と記載例を整理します。
事務の仕事が「書くことがない」と感じる理由
事務の仕事は、うまくいっているときほど目立ちません。請求書が期限どおりに出る、書類に誤りがない、来客や電話が滞りなく回る。こうした状態は「当たり前」として扱われ、本人も実績だと思わないまま毎日が過ぎます。
ただ、採用する側が知りたいのは「この人に任せたら、どのくらいの量を、どの正確さで回してくれるか」です。成果の大小より、任されていた範囲と量のほうが判断の材料になります。だから、事務の職務経歴書で大事なのは、仕事を細かく分けて、範囲と量を言葉と数字に直すことです。
振り返りの 8 項目で書き出す
ハローワークの「職務経歴書の作り方」は、職務経歴書を書く前に、次の 8 項目で自分の経歴を振り返るよう勧めています。事務職に当てはめると、書く中身は次のようになります。
| 項目 | 事務職で書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| ①時期 | 年月まで | 2019年4月〜2026年3月 |
| ②入社・配属・異動・昇格・退社の別 | 部署の移り変わり | 総務課に配属、2022年に経理課へ異動 |
| ③勤務先 | 会社の正式名称 | 「(株)」と略さない |
| ④会社概要 | 事業内容と従業員数 | 建築資材の卸売(従業員120人) |
| ⑤所属 | 部署と人数 | 営業部 営業事務チーム(5人) |
| ⑥役職 | 役職と部下の人数 | リーダー(後輩2人の指導) |
| ⑦職務内容 | 仕事の内容・処理の方法・責任の範囲 | 受注入力、納期調整、請求書発行 |
| ⑧実績 | どんな経過で、どんな成果が出たか | 手順書を作り、引き継ぎの質問を減らした |
事務職で特に厚く書くのは ⑦ の職務内容です。同じ資料は、職務内容には仕事の具体的な内容と処理の方法、責任の範囲を書き、顧客や取り扱う商品の種類、使った機器などを付け加えてもよいとしています。
数字にしにくい仕事を数字に直す
成果の数字が無い仕事でも、次の 5 つの物差しなら、たいてい数字か具体的な言葉にできます。
1. 量(件数・頻度)
「受注の入力」ではなく「受注の入力(1日あたり約50件)」と書きます。毎日でなくても、「月末締めの請求書発行(月約200件)」「年1回の棚卸しの集計」のように、頻度と件数を添えます。
2. 対象(誰のための仕事か)
事務の仕事の多くは、誰かを支える仕事です。「営業担当8人の見積書作成と納期調整を担当」「本社と3営業所の勤怠データの取りまとめ」のように、支えた相手の人数や拠点の数は、仕事の広さをそのまま伝えます。
3. 期限(何を、いつまでに)
「毎月第3営業日までに月次の売上集計を部長へ提出」のように、守っていた期限を書くと、時間の管理を任されていたことが伝わります。
4. 正確さを保つ工夫
ミスの少なさを数字で示せる人は多くありません。数字が無いときは、何をして正確さを保っていたかを書きます。「入力後に伝票と突き合わせる確認の手順を担当」「請求額の二重確認の担当者」のように、役割として書けば十分伝わります。ミスの率などを書くなら、記録で裏づけられるものだけにします。
5. 変えたこと
手順書を作った、紙の申請を表計算ソフトの様式に置き換えた、問い合わせの多い項目を一覧にした、といった小さな改善は、立派な ⑧ の実績です。「経過」と「結果」を 1 行ずつ書きます。結果が数字にならないなら、「新人が手順書だけで入力を担当できるようになった」のように、起きた変化を書きます。
職種ごとの書き分け
事務といっても、職種で読み手が気にする点は違います。
| 職種 | 職務内容の中心 | 添えると伝わること |
|---|---|---|
| 一般事務・総務 | 書類作成、備品・郵便、来客・電話、社内の手続き | 対応した社員数、扱った手続きの種類 |
| 営業事務 | 受注入力、見積書・請求書、納期調整 | 支えた営業担当の人数、取引先の数、1日の件数 |
| 経理事務 | 伝票の入力、支払い・入金の確認、月次の締め | 担当した範囲(日々の記帳〜月次〜決算補助)、使った会計ソフト |
| 人事・労務の事務 | 勤怠集計、入退社の手続き、給与計算の補助 | 対象の社員数、担当した手続きの種類 |
| 医療・介護の事務 | 受付、請求の事務 | 1日の受付の人数、扱った請求の種類 |
経理や人事の事務では、「どこからどこまでを担当したか」で評価が大きく変わります。決算の補助なのか決算書の作成までなのか、給与計算の入力なのか計算の確認までなのかを、はっきり書き分けます。
パソコンのスキルは「何ができるか」まで書く
「職務経歴書の作り方」は、事務系の職種では、パソコンのスキルをできるだけ資格名や操作できるソフト名で示し、どの程度使えるかも書くよう勧めています。
- 悪い例: Excel・Word が使えます
- 伝わる例: Excel(関数での集計、ピボットテーブルでの月次集計表の作成)/Word(社外向け文書・社内規程の作成)/会計ソフト(日々の仕訳の入力、月次の試算表の出力)
ソフトの名前に「何を作っていたか」を添えると、水準が伝わります。資格は正式名称と取得年月で書きます。
記載例
架空の会社名は使わず、職種と状況だけで例を示します。ハローワークの資料にならい、職務経歴は「〜を担当」「〜に従事」のような体言止めで書きます。
営業事務(2019年4月〜現在) 建築資材の卸売(従業員120人)/営業部 営業事務チーム(5人)
- 営業担当8人の受注入力・見積書作成・納期調整を担当(受注入力は1日約50件)
- 月末締めの請求書発行(月約200件)と入金確認を担当
- 取引先からの電話・メールでの納期の問い合わせに対応
- 受注入力の手順書を作成し、新人2人の指導を担当。手順書だけで入力業務を任せられる体制に変更
- 使用ソフト: 社内の受発注システム(注文の入力と出荷指示を行うもの)、Excel(関数での集計、月次の売上表の作成)
1 行目に職種と期間、2 行目に会社概要と所属、そのあとに職務内容と実績を並べています。数字は記録や手元の控えで説明できるものだけにしてください。
読み違えやすい点
「ミス0件」「業務効率○%改善」を無理に作らない。根拠の無い数字は、面接で「どうやって測りましたか」と聞かれたときに説明できません。ハローワークの資料も、面接では職務経歴書の内容に基づいて質問されることが多いとして、コピーを取って面接前に見直すよう勧めています。
社内の言葉のまま書かない。部署の略称や社内システムの愛称は、外の人には通じません。専門用語には( )で説明を添えます。
すべての応募先に同じものを出さない。同じ資料は、同じ内容の使い回しは適当でないとし、経歴をすべて書いたマスターシートを作って、応募先ごとに必要な部分を選ぶ方法を勧めています。経理の求人なら経理の仕事を、総務の求人なら社内手続きの仕事を前に出します。
自己PRとの役割を分ける。職務経歴の欄には事実を、自己PRには「その事実から言える自分の強み」を書きます。自己PRの組み立て方は職務経歴書の自己PRの書き方、実績が少ないと感じるときの材料の探し方は第二新卒で実績がないときの職務経歴書で整理しています。生成 AI で下書きを作った場合は、AIで書いた職務経歴書の直し方の手順で事実と数字を確かめてください。
書き方に迷うときは、ハローワークの窓口で応募書類の作り方の相談ができます。応募先の会社の働き方を公開データで調べたいときは、Mixum の会社名鑑で、会社が公表している残業時間や有給休暇の取得率を見られます。
職務経歴書と面接に関するほかの記事は、キャリア・転職の一覧から探せます。
まとめ
- 事務職の職務経歴書は、成果の数字の代わりに「件数・頻度・対象の人数・期限」で仕事の大きさを示す
- ハローワークの振り返りの 8 項目(時期・異動・勤務先・会社概要・所属・役職・職務内容・実績)で書き出す
- 正確さは率で示せなくても、確認の手順や担当していた役割として書ける
- パソコンのスキルはソフト名と「何を作っていたか」まで書く
- 数字は記録で説明できるものだけにし、面接の前に控えを見直す



