第二新卒で「実績がない」と感じても、職務経歴書に書ける材料はあります。厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査」では、若い正社員を中途で採用する企業が選考で重く見る点は、職業意識・意欲(72.7%)、コミュニケーション能力(66.9%)、マナー・社会常識(58.1%)の順で、職業経験(42.3%)はその下でした。売上や表彰がなくても、研修で身につけたこと、日々の仕事の量と正確さ、独り立ちまでの早さ、小さな改善を事実で書けば、企業が見たい点に答えられます。以下、材料の探し方と書き方を順に整理します。
「書くことがない」と感じる理由
実績が書けないと感じる原因の多くは、実績を「売上の数字」や「表彰」のような目立つ成果だけだと考えていることにあります。社会人になって1〜3年では、大きな案件を任される機会そのものが少なく、目立つ成果がないのは珍しいことではありません。
一方で、採用する側が第二新卒に見ている点は、中堅の中途採用とは違います。厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(2024年9月公表)の事業所調査から、若年(15〜34歳)の正社員を採用した事業所が選考で重視した点(複数回答)を抜き出すと、次のとおりです。
| 選考で重視した点 | 中途採用者 | 新規学卒者 |
|---|---|---|
| 職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神 | 72.7% | 79.3% |
| コミュニケーション能力 | 66.9% | 74.8% |
| マナー・社会常識 | 58.1% | 58.6% |
| 組織への適応性 | 51.8% | — |
| 業務に役立つ職業経験・訓練経験 | 42.3% | 14.7% |
| 業務に役立つ専門知識や技能 | 34.8% | — |
(— は省略。出典:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」事業所調査)
中途採用では新卒より職業経験が見られていますが、それでも上位は意欲・コミュニケーション・マナー・組織への適応です。つまり第二新卒の職務経歴書で問われているのは、「社会人としての基本ができているか」「新しい職場に早くなじみ、伸びていけるか」を、事実で示せるかどうかです。大きな成果がないことより、書ける事実を探していないことのほうが問題になります。
判断材料:職務経歴書に書ける材料の一覧
厚生労働省職業安定局・都道府県労働局・ハローワークの「応募書類の作り方」(2024年5月発行)は、経験が少なくてもアピールできる点として、応募職種に関係するアルバイト経験、訓練・研修の経験、いま勉強中の分野、性格や行動特性、仕事への姿勢・意欲、将来の目標を挙げています。厚生労働省などの「職務経歴書の作り方」(2020年5月発行)も、職歴が短い場合はビジネスマナーや基礎的な実務能力を身につけたこと、意欲や姿勢を書くよう案内しています。
これを、在籍1〜3年の人が手元の記録から拾える形に並べ直すと、次のようになります。
| 材料 | 何を書くか | 裏づけになる事実の例 |
|---|---|---|
| 研修・OJTで身につけたこと | 業務知識、ツール、社内の資格 | 研修の名前と期間、修了した日、使えるようになったツール |
| 日々の仕事の量 | 1日・1か月あたりの件数 | 対応件数、処理した伝票の枚数、担当した顧客数 |
| 仕事の正確さ | ミスの少なさ、期限の守り方 | 差し戻しの件数、締め切りに遅れなかった期間 |
| 独り立ちまでの早さ | 1人で任されるまでの期間 | 配属から担当を持つまでの月数、任された順番 |
| 任された範囲の広がり | 担当が増えた、後輩を教えた | 担当業務が増えた時期、新人の指導を任された人数 |
| 小さな改善 | 手順やひな形を変えた | 作った手順書やひな形、変えたあとの手間の変化 |
| 仕事への姿勢 | 自分から学んだこと | 業務のために受けた検定、読んで実務に使った資料 |
| 応募職種に近い経験 | 学生時代やアルバイト | 接客、販売、指導など、応募先の仕事と重なる経験 |
いずれも、目立つ成果ではなく確かめられる事実で書くのがポイントです。「覚えるのが早い」と書くより、「配属3か月で担当顧客を持った」と書くほうが、読む側は判断しやすくなります。
打ち手:材料を集めて職務経歴書にする手順
1. 直近1か月の仕事を、記録から書き出す
記憶だけで考えると「毎日同じことをしていただけ」になりがちです。カレンダー、業務日報、送信済みメール、チャットの履歴、社内のシステムの処理件数など、記録に残っているものを見ながら、1か月分の仕事を全部書き出します。
2. 1つずつに数字を付ける
書き出した仕事に、件数・頻度・期間・人数のどれかを付けます。「電話対応」なら「1日平均20件」、「請求書の作成」なら「月120枚」のように、記録で確かめられる数字だけを使います。数字にしにくい仕事は、「誰から任されたか」「いつから1人で担当しているか」を書きます。
3. 「変化」を探す
入社したときと今を比べて、変わったところに印を付けます。担当が増えた、1人で任されるようになった、後輩に教える側になった、手順を変えた、といった変化は、成長の速さと適応の力を示す材料になります。
4. 求人票の言葉と照らして、2〜3つに絞る
応募先の求人票の「仕事の内容」「求める人材」を読み、手順1〜3で集めた材料のうち、関係の深いものを2〜3つ選びます。全部を書くと、何を伝えたいのかがぼやけます。
5. 職務経歴の欄は「担当+取り組み+身につけたこと」で書く
たとえば、事務の仕事なら次のように書けます。
営業事務(2024年4月〜現在)
- 受注データの入力と請求書の作成(月約120件)
- 配属4か月目から、取引先10社の請求業務を1人で担当
- 入力の手順書を作成し、2025年度の新入社員2名の指導に使用
- 業務で使う表計算ソフトの関数を学び、集計の手作業を減らした
「実績」と見出しを付けられるような成果がなくても、量・独り立ち・改善・学びが1社分の中に収まっています。これをもとにした自己PR欄の組み立て方は、職務経歴書の自己PRの書き方で扱っています。
実行時の落とし穴
- 数字を盛る。 実績がないと焦るほど、記録で確かめられない数字を書きたくなります。面接で聞かれて説明できない数字は、書類全体の信用を下げます。
- 「学ばせていただきたい」だけで終える。 「応募書類の作り方」も、「貴社で学びたい」のような言葉だけでは伝わりにくいとしています。学ぶ意欲は、いま実際に学んでいることと並べて書きます。
- 前の職場への不満を書く。 退職の理由は、事実と次の職場に求める条件で短く書きます。在籍が短いときの退職理由の書き方は、短期離職の職務経歴書にまとめています。
- 新卒のときの自己PRをそのまま使う。 学生時代の話だけでは、社会人として何を身につけたかが伝わりません。学生時代の経験を使うなら、今の仕事で同じ力をどう使っているかまでつなげます。
- 書類を整える前に、辞めるかどうかが決まっていない。 辞める判断そのものに迷っているなら、先に「3年は辞めるな」は本当かを扱った記事で、辞める前に確かめることを整理してください。
応募書類や転職の判断に関するほかの記事は、キャリア・転職の一覧から探せます。
出典
- 厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(2024年9月公表)
- 厚生労働省職業安定局・都道府県労働局・ハローワーク「応募書類の作り方」(2024年5月発行)
- 厚生労働省など「職務経歴書の作り方」(2020年5月発行)



