半年かけて作ってきた仕組みが、思ったほど使われていない。ここまで予算をかけた企画だから、いまさらやめられない。こうして、うまくいっていない仕事を続けてしまうことがあります。

その背景にあるのが、サンクコスト(取り戻せない費用)へのこだわりです。この記事では、サンクコストの考え方と、仕事の「やめどき」を先に決める方法を整理します。

サンクコストとは

サンクコストとは、すでに使ってしまい、この先どう判断しても取り戻せない費用や時間のことです。

続けるかやめるかを判断するとき、基本になるのは次の比較です。

比べるもの中身
これから先にかかるもの追加の費用、時間、人手
これから先に得られるもの売上、削減できる時間、得られる経験

すでに使った費用や時間は、続けてもやめても戻ってきません。それなのに「ここまでかけたのだから」と判断に入れてしまうと、損が大きくなる道を選びやすくなります。

とらわれているかを見分ける

次のような考えが出てきたら、サンクコストにとらわれていないかを疑います。

  • 「ここまでかけたのだから、もったいない」
  • 「いまやめたら、これまでの努力が無駄になる」
  • 「あと少し続ければ、取り返せるはず」
  • 「やめると、始めた自分(や上司)の判断が間違っていたことになる」

確かめる問いは1つです。

「もし今日、ゼロから始めるかどうかを決めるとしたら、始めるか」

ゼロから始めるなら選ばない、という答えなら、続ける理由はこれまでにかけたものだけかもしれません。

始める前に、やめる基準を決める

サンクコストにとらわれないいちばんの方法は、始める前に、どうなったらやめるかを決めておくことです。始めてからだと、かけた時間や費用が判断を曇らせます。

基準例
期限3か月たったら、続けるかを判断する
数字の目標問い合わせが月に〇件に届かなければ見直す
上限追加の費用は〇〇円まで、作業時間は月〇時間まで

基準は、だれが見ても当たったかどうかが分かる形にします。「様子を見て判断する」では、いつまでも続けてしまいます。

見直しの日を予定に入れる

決めた期限の日を、関係者の予定表に入れておきます。その日に、基準に当たったかどうかを確かめ、続ける・やり方を変える・やめるのどれかを決めます。

途中で迷ったときの判断のしかた

基準を決めずに始めてしまった仕事は、次の順で考えます。

  1. これまでの費用と時間を、判断の表から外す
  2. これから先にかかるものを書き出す:あと何か月、いくら、何人
  3. これから先に得られるものを書き出す:見込みの根拠も書く
  4. ほかの使い道と比べる:同じ費用と時間を別の仕事に使ったら、何が得られるか
  5. 期限と基準を決めて、続けるならそこで再び判断する

一人で考えると、どうしても「もったいない」が先に立ちます。関係のない同僚に、これまでの経緯を伏せて「この先の費用と見込みだけを見たら、続けるか」と聞いてみるのも1つの方法です。事実と解釈を分けて考える方法は事実と解釈を分ける考え方にまとめています。

上司にやめる提案をするとき

自分の判断だけではやめられない仕事は、上司に提案します。

  • これまでの経緯を責めない:「始めた判断が間違っていた」ではなく、「状況が変わった」「見込みと違った」と事実で伝える
  • 数字で示す:これから先にかかるものと、得られる見込みを並べる
  • 代わりの案を添える:やめた後、その時間と費用を何に使うか
  • やめ方も示す:途中までの成果をどう残すか、関係者にどう伝えるか

「〇〇の仕組みは、3か月で利用が〇件にとどまっています。続けると、あと〇か月で〇〇円かかる見込みです。ここで止めて、浮いた時間を△△に回したいと考えています。」

手段が目的になって続いている仕事の見直し方は、手段の目的化の見直し方にもまとめています。

読み違えやすい点

  • やめることを失敗と考える:損が広がる前にやめるのは、判断の1つです
  • これまでの費用を判断に入れる:続けてもやめても戻らない費用です
  • 「あと少し」を繰り返す:期限と基準を決めないと、いつまでも続きます
  • 始めた人を責める:責める空気があると、だれもやめる提案をしなくなります

まとめ

  • サンクコストは、すでに使って取り戻せない費用や時間。判断はこれから先にかかるものと得られるもので行う
  • 「今日ゼロから始めるなら始めるか」と問う
  • 始める前に、期限・数字の目標・上限でやめる基準を決め、見直しの日を予定に入れる
  • やめる提案は、経緯を責めず、数字と代わりの案を添えて伝える