打ち合わせで決まった ToDo が抜け落ちるのは、注意力が足りないからではありません。ToDo が「メモの中」にとどまり、期限の日に思い出すきっかけがどこにもないことが原因です。

直し方は、決まったその場で、担当者 1 人・日付の期限・終わったと言える形をそろえた「チケット」にして、全員が見ている画面で確かめることです。チケットは期限が来れば通知が届き、週に 1 回の見直しで未完了が目に入ります。思い出す役目を、人の記憶から仕組みに移すわけです。ここでは、その手順と、運用でつまずきやすい点を整理します。

ToDo が抜け落ちる仕組み

ToDo は、生まれてから閉じるまでに、次の 4 つの段を通ります。抜け落ちるのは、たいていこのどこかの継ぎ目です。

段起きること抜け落ちる原因
1. 生まれる会話の中で「〜しておきます」「〜お願いします」が出る口約束のまま、誰も書き留めない
2. 置かれるメモ帳・議事録・チャットに書かれる書いた場所がばらばらで、後から見に行かない
3. 思い出される期限の前に、担当者が気づく気づくきっかけが無い。期限が日付になっていない
4. 閉じる終わったことが依頼者に伝わる終わりの形が決まっておらず、終わったか分からない

特に効いているのが 3 つ目です。「あとでやる」ことを、やるべきときに思い出す力は、きっかけに大きく左右されます。会議のメモは、書いたノートを開かないかぎり目に入りません。期限の日に予定表や通知が知らせてくれる仕組みでなければ、思い出せるかどうかは、その日の忙しさ次第になります。

もう 1 つの原因は、ToDo の中身が「やること」になっていないことです。「見積もりの件」「A 社対応」のような書き方では、いつ、何をすれば終わるのかが決まっていません。

心理学では、「いつ・どこで・何をするか」を具体的に決めておく計画(実行意図)が、目標だけを持つ場合より実行されやすいことが繰り返し調べられています。Gollwitzer と Sheeran が 2006 年に 94 の検証をまとめた分析(メタ分析)では、目標の達成に中程度から大きな効果が見られました。チケットに担当・期限・終わりの形を書くことは、この「具体的に決めておく」を打ち合わせの場でやることにあたります。

チケットに書く項目

チケットは、タスク管理の道具でも、チャットのタスク機能でも、共有の表計算でも作れます。大事なのは道具より項目です。次の 6 つをそろえます。

項目書き方悪い例 → よい例
件名動詞で終える「見積もりの件」→「A 社に改訂版の見積もりを送る」
担当個人名を 1 人だけ「営業部」→「田中」
期限日付(必要なら時刻)「なる早」→「10 月 3 日 17 時」
終わりの形何ができたら終わりか「確認する」→「確認結果をチャットのスレッドに書く」
生まれた場所会議名と日付「10 月 1 日 週次定例」
依頼した人終わったら知らせる相手「鈴木課長」

件名を動詞で終えるのは、読んだ瞬間に着手できるようにするためです。担当を 1 人に絞るのは、2 人以上にすると互いに相手がやると思って止まるためです。手伝う人がいるなら、担当は 1 人にして、協力者は本文に書きます。

その場でチケットにする手順

  1. 会議の最初に起票する人を決める。 記録係と兼ねても、分けても構いません。決めずに始めると、全員が「誰かが書くだろう」と思います。
  2. 「〜します」「〜お願いします」が出たら、その場で起票する。 会議の最後にまとめて起票しようとすると、話の途中で出た小さな依頼から抜けていきます。
  3. 起票した画面を映し、担当者本人に期限を言ってもらう。 依頼した側が期限を決めて書き込むより、担当者が自分の口で「3 日までにやります」と言うほうが、見積もりが現実に近くなります。無理な期限なら、その場で調整できます。
  4. 会議の最後の 3 分で読み上げる。 起票したチケットを上から読み、担当と期限に異論がないかを確かめます。ここで漏れていた ToDo が 1 つ 2 つ見つかることがよくあります。
  5. 通知は担当者に、期限の前日と当日だけ届くようにする。 依頼者や出席者全員に通知が届く設定にすると、通知の数が増えて誰も見なくなります。
  6. 週に 1 回、15 分で棚卸しをする。 見るのは「期限切れ」「担当者がいない」「期限が無い」の 3 つだけです。期限切れのものは、やるか、期限を引き直すか、やめるかを決めます。
  7. 終わったら、終わりの形を添えて閉じる。 送ったメールや作った資料へのリンクを付けて閉じ、依頼者に 1 行で知らせます。

会議の中で次の行動をどう言葉にするかは、議事録と発言録の違いで整理した「決定事項・次の行動・保留」の型がそのまま使えます。議事録の「次の行動」の欄がチケットの一覧を指していれば、記録と実行が 1 か所にまとまります。

チームに共有の置き場が無い場合

職場にタスク管理の仕組みが無くても、自分の分だけなら同じことができます。自分の ToDo は自分の一覧に起票し、会議の直後に、相手に関わる ToDo を「担当・期限・内容」の 3 行でチャットに送ります。相手が引き受けた ToDo も、「この日に確かめる」という自分のチケットにしておけば抜けません。口頭の依頼を文字で送り返すときの書き方は口頭の指示を文字で返す方法で扱っています。

つまずきやすいところ

何でもチケットにする。 5 分で終わることまで起票すると、一覧が長くなり、見るのが面倒になります。会議の中で片づくものは、その場でやって終わらせます。起票するのは、会議の後に誰かが手を動かすものだけにします。

期限の無いチケットを許す。 「いつかやる」チケットは、棚卸しのたびに先送りされ、一覧を埋めていきます。期限を決められないものは、ToDo ではなく保留です。「いつ決めるか」を期限にして起票し直します。

会議の外で生まれた依頼を別扱いにする。 立ち話やチャットで頼まれたことも、会議の ToDo と同じ置き場に入れます。入口が 2 つあると、片方を見なくなります。

相手の ToDo を、確かめずに起票して押し付ける。 相手の名前で起票するのは、本人がその場で引き受けたものだけです。会議の後に「これもあなたの担当で」と書き足すと、仕組みそのものが信用されなくなります。

遅れを知らせずに期限を過ぎる。 期限に間に合わないと分かった時点で、担当者が期限を引き直し、依頼者に知らせます。遅れを知らせる時期の決め方は報連相が遅れる原因で扱っています。期限切れが放置されたチケットは、仕組みが回っていない合図です。

通知を増やしすぎる。 通知は、担当者が期限前に動けるだけあれば十分です。コメントのたびに全員へ通知が届く設定だと、大事な通知が埋もれます。


打ち合わせの ToDo は、会議が終わった瞬間から抜け落ち始めます。次の打ち合わせでは、最初に起票する人を決め、最後の 3 分で読み上げるところから始めてみてください。この 2 つだけでも、会議の後に「あれ、誰がやるんでしたっけ」と聞き直す回数は減ります。関連する記事はビジネス基礎の記事一覧にあります。