上司の話が長いとき、話し方そのものを変えてもらうのは難しくても、話の始まりと終わりの時刻はこちらから置けます。長話の多くは、終わりの時刻が決まっていない会話で起きるからです。

やることは5つです。始める前に終わりの時刻を示す、最初の1分で用件を確かめる、途中で論点を短く返す、最後に決まったことを読み上げて締める、日々の立ち話を週1回の短い定例にまとめる。話を遮る話術ではなく、会話に始まりと終わりを作る仕組みとして整えます。あわせて、終業時刻を過ぎてから上司に呼ばれて業務の話を聞いている時間は、原則として労働時間に当たるという考え方も押さえておきます。

上司の話が長くなる仕組み

話しながら考えている

上司が話し始める時点で、結論がまだ決まっていないことがあります。話しながら考えを整理しているので、背景から順に話し、途中で別の論点に移り、また戻ってきます。これは話す側にとっては必要な過程でも、聞く側には終わりが見えません。

終わりの時刻が決まっていない

会議には終了時刻がありますが、席に呼ばれたときや立ち話には、終わりの時刻がありません。終わりが決まっていない会話は、話題が尽きるまで続きます。

用件と雑談と指導が混ざる

用件を伝えるつもりで始まった話に、昔の経験談や別件の注意が加わります。どれが今日の用件で、何を決めれば終わるのかが、話している本人にも分からなくなっていきます。

相づちが「続けてよい」の合図になる

聞く側が相づちを打ち続けると、話す側は「興味を持って聞いてくれている」と受け取ります。聞く側が区切らない限り、話す側に止める理由は生まれません。

長さの種類を見分ける

長話には種類があり、効く手が違います。まず自分の上司の話がどれに近いかを見ます。

長くなり方よくある様子効く打ち手
背景から話す経緯の説明が長く、用件が最後に出てくる最初に用件を確かめる
考えながら話す論点が行ったり来たりする途中で論点を短く返す
同じ話を繰り返す前回と同じ注意や説明が毎回出る決まったことを文字にして締める
雑談や経験談が続く用件は数分で済むのに、30分かかる終わりの時刻を先に置く、定例にまとめる
叱責が長時間続く同じ問いで何度も責められる時間の区切り方ではなく、記録と相談の問題

最後の行は別の問題です。厚生労働省のパワーハラスメントの指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うことを、「精神的な攻撃」に該当すると考えられる例に挙げています。叱責が長く続く場合の返し方と記録の仕方は、上司に詰められるときの対処にまとめています。

1週間、会話の時間を記録してみる

どこに手を打つかを決めるために、1週間だけ上司との会話を記録します。

  • 始まった時刻と長さ(例:14:10〜14:45、35分)
  • どちらから話しかけたか
  • 用件(1行で)
  • 決まったこと(なければ「なし」)

「決まったこと:なし」の会話が多いなら、用件の確かめ方と締め方に手を打ちます。上司から話しかけられる回数が多いなら、定例にまとめる手が効きます。

時間を区切る手順

1. 始める前に、終わりの時刻を置く

話を途中で切るのは難しくても、始める前なら自然に終わりを示せます。

11時から打ち合わせがあるので、10時50分まででもよろしいですか。

「何分くらいですか」と聞くより、終わりの時刻を先に言うほうが効きます。使う予定は、実際の予定にしてください。予定がなくても、「11時までに見積もりを仕上げたいので、15分でお伺いできますか」と作業の予定を示せば足ります。

2. 最初の1分で用件を確かめる

話が背景から始まったら、早めに用件を確かめます。

今日決めたいのは、A社の納期の件でよろしいですか。

用件が分かれば、背景の話を聞きながらも、どこに向かっているかが見えます。上司にとっても、何を決めればよいかが先に定まります。

3. 途中で、論点を短く返す

話が行ったり来たりし始めたら、それまでの内容を一文で返します。

つまり、納期は変えずに、確認の工程を1回減らす方向で、ということですね。

考えながら話している上司にとって、この一文は考えの整理になります。「そう、それで」と話が前に進むか、「いや、そうではなく」と論点がはっきりするか、どちらでも会話は終わりに近づきます。

4. 最後に、決まったことを読み上げて締める

終わりの時刻が近づいたら、決まったことを読み上げます。

確認です。確認の工程を1回減らし、金曜の15時までに私から先方に連絡します。ほかに、今日決めておくことはありますか。

「ほかにありますか」と聞くのは、上司に終わりの合図を渡すためです。決まったことは、その場で自分の作業の一覧に入れておくと抜けません。やり方は打ち合わせのToDoをその場でチケットにする手順にまとめています。あとで指示が変わりやすい上司なら、決まったことをチャットで送って残しておきます(指示が二転三転するときの確認と記録)。

5. 立ち話を、週1回の短い定例にまとめる

上司から1日に何度も話しかけられる場合は、急ぎでない話をまとめる場を提案します。

ご相談ごとが何件かたまることが多いので、毎週火曜の10時に15分、まとめてお話しする時間をいただけませんか。急ぎのものはその都度ご連絡します。

議題は前日までに箇条書きで共有しておきます。上司も「火曜に話せばよい」と分かれば、思いついたときに呼び止める回数が減ります。チャットの確認時間を決める考え方は、通知疲れを減らすタイムボックスの手順と共通です。

6. 自分から話しかけるときも、枠を示す

こちらから相談するときも、同じ形にします。

3分だけご相談です。AとBのどちらで進めるかを決めていただきたいです。

自分が枠を守る姿を見せておくと、上司から話しかけられるときにも、枠を示しやすくなります。

7. 終業後の長話は、労働時間として扱う

定時の直前に呼ばれ、業務の話が終業時刻を過ぎて続くことがあります。厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月策定)は、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間に当たるとしています。上司に呼ばれて業務の話を聞いている時間は、終業時刻の後でも、原則として労働時間として扱われるものです。

勤怠の記録は、実際に話が終わった時刻でつけてください。毎回のように続くなら、次のように区切ります。

定時を過ぎますので、続きは明日の9時半からでもよろしいですか。

実行するときの落とし穴

架空の予定で切る

「この後に打ち合わせが」と言って実際には予定がないと、いずれ分かります。終わりの時刻の理由には、実際の予定か、作業の予定を使います。

途中で時計を何度も見る

話の途中で時計やスマートフォンに目をやると、「聞いていない」という印象だけが残ります。終わりの時刻は、始める前に一度示しておけば、途中で見る必要はありません。

雑談をすべて削る

雑談には、互いの状況や考え方を知る役割もあります。全部を削ると、かえって用件の話が通りにくくなります。削るのは「終わりが見えない時間」であって、会話そのものではありません。

自分の報告も長くなっている

上司の話が長いと感じる職場では、自分の報告も背景から話していないかを見直します。用件と結論を先に言う形にすると、上司の側の質問や補足も短くなります。

一人で抱え込む

区切り方を工夫しても長話が続き、作業時間が大きく削られているなら、会話の記録を持って、さらに上の役職者か人事部門に業務の問題として相談してください。残業代や勤怠の記録について迷うときは、各都道府県労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーで無料で相談できます。

上司との関わり方全体は、対人関係・調整の記事の一覧から探せます。