転職エージェントから希望と違う求人ばかり届くのは、担当者の好みの問題というより、紹介の手数料を払うのが採用する企業であることと、希望条件が言葉のままで絞り込めていないことが重なって起きます。職業安定法第2条は職業を自由に選べると定めており、応募するかどうかを決めるのは求職者本人です。条件を数字にして書面で渡し、合わない求人は条件を理由に短く断れば足ります。以下、起きる理由、求人を見極める点検表、断り方の手順、法令に反する疑いがあるときの相談先の順に整理します。

希望と違う求人が届く理由

手数料を払うのは、採用する企業

有料の職業紹介について、職業安定法第32条の3第2項は、原則として求職者から手数料を取ってはならないと定めています(例外は省令で定める一部の場合に限られます)。そのため、紹介事業者の収入は主に、紹介した人を採用した企業から受け取る手数料です。

これ自体は法律に沿った仕組みで、不誠実なものではありません。ただ、紹介が採用に結びついたときに収入が生まれる以上、「応募してもらえそうな求人」を幅広く出す動きが生まれやすいことは知っておくと、提案を冷静に受け止められます。求職者が費用を払わない相談先の使い方は、職場に相談できる人がいないときでも触れています。

希望条件が、絞り込める形になっていない

「年収を上げたい」「残業が少なめ」「成長できる会社」のような希望は、担当者の側で絞り込みようがありません。絞り込めない希望に対しては、候補を広めに出すしかなく、それが「押し付け」に感じられます。

職業安定法に基づく指針(「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…がその責務等に関して適切に対処するための指針」、1999年労働省告示第141号)は、職業紹介事業者に対し、求職者の能力を的確に把握し、可能な限り幅広い求人の確保に努めるよう求めています。担当者が求職者の希望を把握しようとするのは、この指針に沿った動きです。だからこそ、把握してもらう材料を求職者の側から渡すことが、いちばん効く手になります。

判断材料:紹介された求人を見極める点検表

求人が届いたら、次の表の左の項目ごとに、自分の条件と求人の中身を並べます。1つでも「必須」の条件を満たさなければ、その時点で断る候補です。

項目自分の条件(数字で書く)求人で確かめる箇所
年収下限〇〇万円(残業代を除く)月給の内訳、固定残業代の有無と時間数
残業月〇時間まで所定外労働の有無、平均の時間
勤務地・通勤片道〇分以内、転勤の可否就業の場所、転勤の有無
仕事の中身担当したい業務、避けたい業務従事する業務の内容と範囲
雇用の形正社員に限る、など契約期間の有無、試用期間の長さと条件
休日年間〇日以上、土日休み、など休日の数と曜日

右の列の項目は、紹介事業者が求職者に示すべきものと重なっています。厚生労働省・都道府県労働局のパンフレット「職業紹介事業を行う際の主なポイント」(2021年)によれば、職業紹介事業者は原則として求職者と最初に接触する時点までに、業務の内容、契約期間、試用期間、就業の場所、労働時間と休日、賃金、社会保険の適用、雇い主の名称などを、書面や電子メールなどで明示しなければなりません。求人の説明が口頭だけで、これらが分からないときは、書面で受け取ってから判断します。

紹介事業者そのものについては、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」で、許可番号のほか、紹介で就職した人の数、そのうち無期雇用で就職して6か月以内に辞めた人の数、手数料の実績、返戻金の制度などを確かめられます(厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業者の上手な探し方」2025年)。

打ち手:条件を渡し、断り、立て直す手順

1. 条件を「必須・できれば・こだわらない」に分けて数字で書く

条件を全部「必須」にすると、紹介できる求人がなくなります。上の点検表の項目を3つに分け、必須は2〜3個に絞ります。転職の軸そのものの決め方は、20代の転職の軸の決め方で扱っています。

2. 口頭ではなく、メールで渡す

面談で話しただけの条件は、担当者の記録から抜け落ちることがあります。面談のあとに、次のような形でメールを送ります。

本日はありがとうございました。求人をご紹介いただく際の条件を、あらためてお送りします。 【必須】年収〇〇万円以上(固定残業代を除く)/勤務地は〇〇市内/転勤なし 【できれば】残業は月20時間まで/土日休み 【こだわらない】会社の規模、業界 必須の条件を満たさない求人は、今回は見送らせてください。

3. 合わない求人は、条件を理由に短く断る

断るときは、感情ではなく条件を理由にします。理由が具体的なほど、次に届く求人が絞られます。

ご紹介ありがとうございます。こちらの求人は、転勤があるため今回は見送らせてください。転勤のない求人があれば、引き続きお願いします。

4. 急かされたら、返事の期限を自分から示す

「人気の求人なので今日中に」と言われても、その場で決める必要はありません。「〇日の〇時までにお返事します」と期限を自分から示し、その間に点検表で確かめます。期限を示さずに黙ると、催促の連絡が増えます。

5. 変わらなければ、担当の変更か利用の見直しを伝える

条件を書面で渡しても外れた求人が続くときは、担当者の変更を頼むか、利用をやめることを考えます。公的な窓口としては、無料で使えるハローワークもあり、民間の紹介と並べて使うこともできます。

6. 法令に反する疑いがあるときは、都道府県労働局へ

次のようなことがあれば、紹介事業者の事業所がある都道府県の労働局(需給調整事業課・室)に相談できます。

  • 求職者なのに手数料を求められた
  • 求人の労働条件を、書面などで示してもらえない
  • 紹介で入社したあと、2年以内に同じ事業者から転職を勧められた(指針で禁じられています)
  • 求職の申込みを勧めるために、社会通念を超える金銭を示された

「職業紹介事業を行う際の主なポイント」は、指針に違反した場合は行政指導の対象となりうるとしています。

実行時の落とし穴

  • 断りにくくて応募し、内定のあとに辞退する。 応募先の企業の時間も使うことになり、担当者との関係も悪くなります。迷う求人は、応募の前に断るほうが早く済みます。
  • 言われるままに条件を下げる。 条件を見直すこと自体は悪くありませんが、理由は「求人が少ないと言われたから」ではなく、自分で調べた相場に置きます。
  • 条件を口頭だけで伝える。 担当が替わったときに引き継がれず、同じ説明を繰り返すことになります。
  • 担当者の説明だけで決める。 労働条件は書面で受け取り、雇用契約の前に、会社から示される条件と食い違いがないかを自分で確かめます。

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出典

  • 職業安定法(第2条、第32条の3、第32条の16)(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(1999年労働省告示第141号)
  • 厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業を行う際の主なポイント」(2021年)
  • 厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業者の上手な探し方」(2025年)
  • 厚生労働省「人材サービス総合サイト」