週末に仕事が頭から離れないのは、仕事が残っているからというより、残った仕事について「次に何を、いつやるか」が決まっていないからです。終わっていない用件は、決着がつくまで頭の中で浮かび続けます。けれども、決着は「完了」でなくても構いません。次の一手と日時が決まっていれば、頭はそれを手放しやすくなります。

そのために、金曜の最後の 30 分を締めの時間にします。受け皿を空にし、残る仕事ごとに次の一手を書き、待たせている相手に一言送り、月曜の最初の作業の枠を予定表に置く。ここまで済めば、仕事が残っていても週末に持ち越すものはありません。

ただし、週末にも連絡や対応が当たり前のように求められる職場では、個人の段取りだけでは解決しません。その場合の考え方と相談先も、最後に整理します。

週末に仕事を考えてしまう仕組み

終わっていない用件は、頭の中に残り続ける

中断した作業や終わっていない用件が、終わった用件より思い出されやすいことは、心理学では古くから報告されています(1927 年に報告した研究者の名前から「ツァイガルニク効果」と呼ばれています)。

これを確かめ直した研究に、E. J. Masicampo と Roy Baumeister による 2011 年の論文(Journal of Personality and Social Psychology 誌 第 101 巻「Consider It Done!」)があります。終わっていない目標を思い浮かべた人は、関係のない文章を読んでいる間にもその目標のことが頭に浮かび、関係のない課題の成績も下がりました。

同じ論文の大事な点は、その先です。終わっていない目標について、具体的な計画を立ててもらうと、こうした影響が見られなくなりました。目標はまだ達成されていないのに、です。さらに、立てた計画を実際に実行した人ほど、頭に浮かぶことが減っていました。

仕事に置き換えると、週末に頭から離れないのは「月曜にやる」とぼんやり思っているだけの仕事で、月曜の何時に、何から始めるかまで決めた仕事は離れやすいということです。

金曜の夕方に残りやすい「開いたままのもの」

週末まで頭に残るのは、次の3種類です。

  1. 受け皿に入ったままのもの:読んだが返していないメール、メモに書いたが振り分けていない用件
  2. 次の一手が決まっていない仕事:途中まで進めたが、どこから再開するか分からない作業
  3. 相手とのあいだで止まっているもの:返事を待たせている相手、返事を待っている相手

金曜の夕方は疲れていて、これを1件ずつ考えて片づける余力が残っていません。だからこそ、締めは毎週同じ手順にして、考えることを減らしておきます。

金曜の夕方の点検表

締めの前に、次の項目を確かめてください。すべてに印が付けば、週末に持ち越すものはありません。

  • メモやノートの受け皿が空になっている
  • メールとチャットのうち、返事が要るものに返したか、返す日時を決めた
  • 残っている仕事のすべてに、次の一手が書いてある
  • 途中のファイルの場所と、どこまで進んだかが書いてある
  • 月曜の最初の作業の枠が、予定表に入っている
  • 待たせている相手に、次にいつ何を送るかを伝えた
  • 返事を待っている用件に、催促する日が付いている
  • 週末に対応が要りそうな用件は、上司と取り扱いを決めた

残った仕事は、種類ごとに金曜にすることが違います。

残った仕事金曜にすること
自分の作業の途中次の一手を動詞で書き、月曜の枠を置く
相手を待たせている今週の進み具合と、次に送る日時を一言で送る
相手の返事を待っている催促する日を決めて一覧に書く。週末は待つ
月曜の朝が期日金曜のうちに上司と相談し、期日か範囲を調整する
週末に何か起きるかもしれない起きたときに誰が対応するかを、金曜のうちに決めておく

金曜の最後 30 分の締めの手順

1. 締めの枠を、毎週の予定として入れる

金曜の終業前 30 分を、繰り返しの予定として予定表に入れます。会議を入れられないよう、ほかの予定と同じ扱いにします。締めを「時間が余ったらやる」にすると、忙しい週ほど飛ばされます。

2. 受け皿を空にする

メモの受け皿、メール、チャットを順に見て、返事が要るもの・やることになったものを振り分けます。数分で返せるものはこの場で返し、時間がかかるものは一覧に入れて月曜以降の日時を付けます。受け皿を1つにして毎日空にする仕組みはメモで記憶を外に出すで説明しています。金曜はその週の最後の1回として、いつもより丁寧に行います。

3. 残る仕事に、次の一手を書く

途中の仕事には、月曜の自分がすぐ再開できるように書き残します。

✕ 提案資料の作成

○ 提案資料:3章の比較表を、先月の実績の数字で埋めるところから。ファイルは共有フォルダの「A社提案/第2版」。2章まで上司の確認済み

「作成」「対応」「検討」のような語は、次に何をするかを示しません。手を動かす動詞で、どのファイルのどこからかまで書きます。これが、研究で言う「具体的な計画」にあたります。

4. 月曜の最初の枠を置く

月曜の午前は、週の初めの打ち合わせやメールの確認で埋まりやすい時間です。予定表の月曜の朝に、手順 3 で書いた仕事の枠を 60〜90 分置きます。

どの仕事を月曜の最初に回すか、週の後半の枠をどう組むかは、期日と作業の量で決めます。期日から逆算して作業の枠を置く手順は期日管理のやり方にまとめています。金曜の締めでは、週全体を組み直す必要はありません。月曜の最初の1枠が決まっていれば十分です。

5. 待たせている相手に、一言送る

相手を待たせたまま週末に入ると、「月曜に何か言われるかもしれない」という気がかりが残ります。金曜のうちに一言送ります。

〇〇の件、今週は全 5 項目のうち 3 項目まで進みました。残りは来週水曜の 12 時までにお送りします。

進み具合と次の日時を伝えておけば、相手も週末に気にせずに済みます。

6. 終わりの合図を決める

最後に、仕事を閉じる動作を決めておきます。業務用のチャットとメールの通知を切る、業務用のアプリからログアウトする、パソコンを閉じて鞄にしまう。毎週同じ動作で終えると、そこで区切りがつきます。

個人の段取りで済まないとき

週末の対応が求められているなら、それは業務の問題

締めを整えても、週末にメールやチャットで指示が届き、返さないと月曜に叱られるなら、段取りで解決できる話ではありません。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017 年策定)は、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間は労働時間にあたるとしています。週末の対応が実際に求められているかどうかは個別に判断されますが、自分だけの問題として抱え込まず、いつ・誰から・どんな連絡が来て、どれだけ対応したかを記録しておきます。

また、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021 年 3 月改定)は、長時間労働を防ぐ方法として、時間外や休日にメールを送ることの自粛を命じることや、休日などは事前の許可なく社内システムにアクセスできないようにすることなどを挙げています。これらは会社がルールとして決めることです。休日の連絡の扱いがはっきりしない職場なら、「急ぎの連絡は電話、それ以外は月曜に見る」のような決めごとを、上司やチームに提案する材料になります。チャットをいつ確認するかを決める方法はチャットの通知疲れ対策でも扱っています。

週末の対応が常態になっていて、社内で相談しても変わらない場合は、各都道府県労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーで相談できます。

休んでも頭から離れないときは、体の側を見る

締めの手順を続けても、休みの間ずっと仕事のことが頭を離れず、眠れない・食欲が落ちる・休み明けに体が動かないといった状態が2週間ほど続くなら、段取りより先に、産業医やかかりつけ医への相談を考えてください。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」には、電話や SNS で相談できる窓口がまとめられています。

続けるときの落とし穴

金曜に全部終わらせようとして残業する

持ち越しをなくそうとして、金曜に残業で片づけるのは逆効果です。疲れた状態で仕上げたものは、月曜に手直しが要ることがよくあります。持ち越すこと自体は問題ではありません。次の一手と日時が決まったまま持ち越すのが、この記事の締め方です。

締めが長くなる

丁寧にやろうとすると、30 分が1時間になり、続かなくなります。締めでやるのは、振り分けと書き残しと一言の連絡だけです。資料を直し始めたら、それは月曜の枠に回します。

週末に「少しだけ」確認する

気になってメールを開くと、新しい未読を見つけ、それが新しい「開いたままのもの」になります。確認するなら、見るだけで返さない、と決めても、見た内容は頭に残ります。確認しないと決めたなら、通知ごと切っておくほうが確実です。

月曜の枠を守らない

月曜の最初の枠に別の用事を入れてしまうと、金曜に立てた計画は「どうせ守られないもの」になります。計画を守らない経験が重なると、次に計画を立てても頭は手放してくれません。月曜の最初の枠は、できるだけ動かさないでください。


週末に仕事を持ち越さないために必要なのは、金曜に仕事を終わらせることではなく、残った仕事の次の一手と日時を決めてから帰ることです。今週の金曜、終業の 30 分前に予定表を開き、月曜の朝に 60 分の枠を1つ置くところから始めてください。

ほかの仕事の進め方の記事は、ビジネス基礎の一覧から探せます。