「この会社は生産性が低い」という感覚は、多くの場合その通りです。ただし、感覚のままでは辞めるかどうかの判断には使えません。移った先が同じ形かどうかを確かめる基準にならないからです。

この記事では、その感覚を判断材料に変える手順を3段階で扱います。不満を分類語に置き換える、それが職場を変えれば解消するものか切り分ける、そのうえで賃金の変わり方を確かめる、という順番です。

なお、厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によれば、令和6年1年間の離職率は14.2%、入職率は14.8%で、前年と比べて離職率は1.2ポイント低下しています。辞めること自体は例外的な出来事ではありません。 そのうえで、辞める理由の中身を詰めていきます。

自分の不満を、統計の分類語に置き換える

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」は、転職した人が前職を辞めた理由を次の分類で集計しています。仕事の内容に興味を持てなかった/能力・個性・資格を生かせなかった/職場の人間関係が好ましくなかった/会社の将来が不安だった/給料等収入が少なかった/労働時間、休日等の労働条件が悪かった、などです。

全体では、男性は「その他の個人的理由」20.2%と「その他の理由(出向等を含む)」13.5%を除くと「定年・契約期間の満了」14.1%が最も多く、次いで「給料等収入が少なかった」10.1%となっています。女性は「その他の個人的理由」24.3%を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%です。

若手の層に絞ると、内訳の並びが変わります。

区分上位に並ぶ理由
男性 20〜24歳給料等収入が少なかった 12.5%/労働時間、休日等の労働条件が悪かった 11.3%
男性 25〜29歳給料等収入が少なかった 16.9%/職場の人間関係が好ましくなかった 11.5%
男性 30〜34歳会社の将来が不安だった 14.9%/給料等収入が少なかった 11.7%
女性 25〜29歳労働時間、休日等の労働条件が悪かった 15.2%/職場の人間関係が好ましくなかった 14.0%

(いずれも「その他の個人的理由」を除いた並び)

自分の「生産性が低い」という感覚が、この表のどれに近いのかを決めてください。ここが決まらないうちは、転職先を探しても比べる軸がありません。

なお前年と比べて上昇幅が最も大きかったのは、男性では「会社の将来が不安だった」の2.2ポイント、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」の1.7ポイントでした。

1週間の時間を、4つに分けて数える

分類語が決まったら、次は自分の時間の使い先を数えます。会社全体の生産性は測れませんが、自分の1週間なら数えられます

区分中身
本来の作業成果物そのものを作っている時間
やり直し指示の変更、確認漏れ、様式違いによる作り直し
待ち時間前工程・回答・素材の到着を待っている時間
承認待ち決裁・確認の順番待ち

1週間分をざっくり数えるだけで、どこに時間が吸われているかが出ます。そのうえで、職場を変えれば減るものと、自分の進め方で減らせるものを分けます。

  • 承認の段数、決裁の様式、システムの古さ → 職場側の設計。個人ではほぼ動きません
  • 確認のタイミング、着手前のすり合わせ、記録の残し方 → 自分の側で減らせる余地があります

自分の側で減らせる部分を先に試すと、2つの利点があります。ひとつは、実際に減れば残る理由が増えること。もうひとつは、試しても減らなかった場合に、職場側の制約だと自信を持って言えることです。動かせる範囲の試し方は仕事にやりがいがないとき|作り替える手順と見極め方で扱っています。

賃金の変わり方は、年齢帯で違う

同じ調査では、転職入職者の賃金変動について次の結果が出ています。

区分増加変わらない減少
全体40.5%28.4%29.4%
20〜24歳50.5%31.5%16.8%
25〜29歳46.3%23.1%29.2%
30〜34歳46.1%29.1%24.2%
55〜59歳27.4%33.6%36.6%

全体では「1割以上の増加」が29.4%、「1割以上の減少」が21.7%で、前年と比べて「増加」した割合は3.3ポイント上昇しています。

読み取れるのは、若い層ほど増加側に寄り、年齢が上がるほど減少側に寄るという傾向です。「いつか条件が良くなってから動く」と考えている場合は、この傾向を前提に置いたうえで時期を決める必要があります。

ただし、これは転職した人全体の分布です。個々の結果を保証するものではありません。自分の場合にどうなるかは、応募先の提示条件で確かめる以外にありません。

出る前に、材料をそろえる

辞めると決めた場合でも、先にやっておくと選択肢が増えるものがあります。

  1. やってきた仕事を3行で書き出す(最初の状態/自分が判断したこと/結果)
  2. 社内の固有名詞を外して読み直す(外すと成り立たない部分は、社内の手続きの知識です)
  3. 減らしたい時間の種類を1つに絞る(やり直しなのか、承認待ちなのか)
  4. 面接で、その工程の直近1か月の実例を聞く(制度の有無ではなく、実際の運用を聞きます)

1と2の具体的な進め方は成長できない焦りの正体|社内でしか効かない力の見分け方、教育の仕組みが弱い職場での進め方はOJTで放置されるとき|下積みで力がつく職場との違いで扱っています。

つまずきやすいところ

  • 「生産性が低い」のまま比べる:分類語に置き換えないと、移った先を評価できません
  • 会社全体を測ろうとする:測れるのは自分の1週間です
  • 条件だけで移る:条件は比べやすいぶん、進め方の違いが見えなくなります
  • 時期を先送りする:賃金の変わり方は年齢帯で傾向が違います

退職の手続きや条件について個別の判断が必要な場合は、勤務先の就業規則を確認したうえで、労働基準監督署や弁護士などの相談先に確かめてください。

出典

  • 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」(入職と離職の推移、転職入職者の状況)