「だいたい終わりました」と報告したのに、翌日「終わってないじゃないか」と言われる。「なるはやでお願いします」と頼まれたので翌日に出したら、「今日中のつもりだった」と言われる。

こういう食い違いは、誰かが手を抜いた結果ではありません。同じ言葉を聞いて、お互いが別々の数字を思い浮かべただけです。この記事では、曖昧な言葉が守ってくれない理由、よく使う言い方を数字に直す対応表、数字にしにくい仕事の書き方、そして周りが変わらないときの進め方を整理します。

曖昧に言っても、自分は守られない

はっきり言わないのは、多くの場合、自分を守るためです。「明日の15時に出せます」と言い切って遅れたら責められる。「だいたい明日くらいには」と言っておけば、遅れても逃げ道がある。そう考えるのは自然なことです。

ただ、守られているのは報告した瞬間だけです。あとで食い違いが表に出たとき、どうなるかを考えてみてください。

  • 相手は「明日の午前と理解した」と言う
  • こちらは「明日中のつもりだった」と言う
  • 記録には「だいたい明日くらい」としか残っていない

このとき不利になるのは、曖昧に伝えた側です。相手の理解が間違っていたことを示す材料が、どこにもないからです。言い切らないことは、証拠を残さないことと同じです。

逆に「明日15時に一次版を出します」と書いて送ってあれば、遅れたときも「15時に出す予定だったが、Aの理由で17時になる」と話が進みます。責められる範囲も、遅れた2時間ぶんに限定されます。

よく使う言葉を、数字に直す

直し方は決まっています。次の対応表を手元に置いてください。

よく使う言い方直した形
だいたい終わりました5項目のうち4項目が完了、残り1項目は明日の午前に終わります
もうすぐできます本日17時に出します
なるはやでお願いします本日18時までにお願いします(難しければ明日10時でも可)
けっこう重いです想定より3時間多くかかりそうです
少し問題があります1件、先方の確認が取れておらず、納品日に影響します
順調です予定どおり、今週金曜に完了見込みです
何回か確認しました火曜と木曜の2回、メールで確認しました
大丈夫だと思います動作は確認済みです。未確認なのは◯◯の環境だけです

右の列は、長くなっているわけではありません。文字数はほとんど同じです。違うのは、読んだ人が同じ絵を思い浮かべられるかだけです。

始め方としては、直近1週間で自分が使った「だいたい」「ほぼ」「なるはや」「重い」を思い出して、上のように置き換えてみてください。置き換えられないものが出てきたら、そこは自分も把握できていなかった箇所です。把握していないことが分かるのも収穫です。

言い換えと同時に、報告の順番も整えると効きます。順番の整え方は結論から話せない原因と直し方で整理しています。

数字にしにくい仕事は、状態で書く

すべての仕事に進捗率が付けられるわけではありません。企画を考える、関係者と調整する、原因を調べる。こうした仕事に「40%完了」と書いても、意味のある数字にはなりません。

無理に数字を作ると、かえって実態から離れます。この場合は状態で書いてください。書くのは3つです。

  1. 終わったこと(例:関係3部署のうち、2部署の合意が取れた)
  2. 残っていること(例:経理部の合意。争点は費用の負担先)
  3. 次にやること/待っていること(例:明日10時に経理部と打ち合わせ。先方の回答待ち)

この3つがあれば、数字がなくても相手は判断できます。「あと何が残っているか」と「いま止まっているのか動いているのか」が分かるためです。

特に3つ目の「待っている」は、必ず書いてください。自分が動いていない理由が相手の返事待ちなら、それは書かないと伝わりません。書かないと、手が止まっていること自体が問題に見えます。

「数字を出すと詰められる」と感じるとき

数字を出すのをためらう理由に、「細かく突っ込まれるのが嫌だ」があります。これは実感として分かります。ただ、詰められる場面をよく見ると、数字を出したときではなく、数字が急に悪くなったときであることがほとんどです。

「順調です」を3週間続けたあと、4週目に「間に合いません」と言えば、相手は驚きます。驚いたぶんだけ、質問は細かくなります。

一方、1週目から「今週は予定の7割」「今週も7割」と同じ形で出していれば、悪化は途中で見えます。見えていれば、相手は驚きません。質問は「どこで詰まっている?」の1つで済みます。

つまり、数字は詰められる原因ではなく、驚かせないための道具です。出す形を毎回同じにしておくことが要点で、週によって項目を変えると比較できなくなります。

もう1つ、数字を出すときは「良い数字だけ出す」ことをしないでください。良いときだけ具体的で、悪いときだけ曖昧になると、曖昧な報告そのものが悪い知らせの合図として読まれるようになります。そうなると、曖昧に書いた時点で詰められます。

周りが曖昧なままでも、自分から変えられる

職場全体の言葉づかいを変えるのは、一人では難しいことです。ただ、自分の側だけで実行できて、食い違いを減らせるやり方があります。受け取った曖昧な依頼を、数字にして返すことです。

上司:「この資料、なるはやでまとめておいて」 自分:「承知しました。本日18時までに一次版をお出しする、という理解で進めます。急ぎであれば15時までに要点だけ先にお出しできます」

相手を変えようとはしていません。自分の理解を数字にして、確認しているだけです。それでも、この一言で「今日中のつもりだった」という食い違いは起きなくなります。

相手が「もっと早く」と言えば、その場で調整できます。何も言わなければ、18時が合意になります。どちらに転んでも、こちらは損をしません。

この返し方は、テキストでやると記録も残るので、特に有効です。口頭で頼まれた場合も、後からチャットで一言「先ほどの件、本日18時までに一次版で進めます」と送っておくと、同じ効果が得られます。

返事を早くもらう書き方

相手からの返信が遅いとき、原因は相手の忙しさだけではありません。こちらが投げた質問が、考えないと答えられない形になっていることがあります。

✕ ◯◯社の件、どうしましょうか。

○ ◯◯社の件、次のどちらかで進めたいです。本日17時までにどちらかお選びください。

  1. 納期を1週間延ばす(品質はそのまま)
  2. 納期は変えず、確認工程を1回減らす(私としては1を推します)

下は、相手が番号を1つ返せば終わります。上は、相手が状況を思い出し、選択肢を自分で考え、文章にする必要があります。同じ用件でも、相手の手間がまったく違います。

選択肢を出すときは、自分の推しも添えてください。丸投げに見えなくなりますし、相手が同意するだけで済む場合もあります。

つまずきやすいところ

数字を盛る

「9割できています」と言って実際は6割だと、次からその数字は信用されません。悪い数字をそのまま出せることのほうが、長い目では評価されます。

細かすぎる数字を出す

「進捗率63.5%」のような数字は、根拠を聞かれると困ります。「5項目中3項目完了」のように、数えられる単位で出すほうが、後で説明できます。

曖昧な言葉を全部禁止しようとする

雑談や、まだ見通しが立たない段階の話まで数字にする必要はありません。直すのは、相手が何かを判断する材料になる場面だけで十分です。

相手の曖昧さを指摘しにいく

「なるはやって、いつまでですか」と正面から聞くと、角が立つことがあります。自分の理解を述べて確認する形にすると、同じ情報が取れて、しかも摩擦が起きません。


曖昧な表現をやめるのは、丁寧に話すためではなく、後から自分が困らないためです。次に報告するとき、「だいたい」と書きそうになったら、そこだけ数字か日時に置き換えてみてください。