「あの人は仕事ができない」と言われている人の話を聞いていると、内容が間違っているわけではないことに気付きます。話している中身ではなく、出す順番が違うだけであることがほとんどです。
そして、同じ癖は自分にもあります。忙しい時期ほど出ます。この記事では、低く見られやすい話し方の型と、その直し方を整理します。あわせて、周りの「できるアピール」に消耗しているときの扱い方も書きます。
経過から話すと、進み具合が伝わらない
いちばん多い型は、時間の順に話すことです。
月曜に先方へ連絡したんですが返事がなくて、火曜にもう一度送って、水曜に電話したら担当が変わっていて、それで改めて資料を送り直すことになって……
聞いている側は、この間ずっと「で、いまどうなっているのか」を待っています。待っているあいだは判断ができません。判断できない時間が長いほど、話は重く感じられます。
同じ内容を、順番だけ変えるとこうなります。
納品は来週火曜にずれます。先方の担当が交代し、資料の再提出が必要になったためです。再提出は本日中に済ませます。
内容は減っていません。減ったのは、相手が待つ時間です。この並べ替えの手順は結論から話せない原因と直し方にまとめています。
苦労の量は、成果の代わりにならない
もう1つの型が、苦労を成果と同じ重さで話すことです。
かなり大変でしたが、なんとか形にしました
言いたくなる気持ちには理由があります。使った時間と労力は自分にしか見えないので、言わないと消えてしまうように感じるからです。
しかし、聞いた側が知りたいのは、いま何がどこまで終わっていて、次に何が必要かです。苦労の話は、その質問のどれにも答えていません。 さらに、苦労の話には「動いている」印象があるので、実際には止まっている作業が、進んでいるように伝わります。
これが、経過報告ばかりになることの実害です。進み具合が実際より良く見えて、手当てが遅れます。遅れた分だけ、取れる選択肢は減ります。
苦労を伝えたいなら、量ではなく事実で伝えてください。
| 言いたいこと | 言い方 |
|---|---|
| 大変だった | 想定より3日多くかかりました。原因は先方の担当交代です |
| 手が足りない | 今週は4件を並行しています。1件を来週に回してよいでしょうか |
| 難しかった | 手順が決まっていない工程が1つあり、そこで止まりました |
右の列は、聞いた人が次の手を打てます。左の列は、「大変だったね」で会話が終わります。評価が動くのは、相手が動けたときです。
先に出す3つ
報告の型は、この順番で固定してしまうのがいちばん簡単です。
- 現在地(5件中3件完了、など)
- 判断がいること(あれば。無ければ「相談事項はありません」)
- 経過(聞かれたら、または必要な分だけ)
3を先に話さないと決めるだけで、話し方は変わります。経過を捨てるわけではありません。置く場所を後ろにするだけです。
数字が出しにくい仕事でも、状態は書けます。「確認待ち」「着手済み」「手順未定」。どれも、聞いた人が次の段取りを組める言葉です。曖昧な言葉を具体的な形に直す手立ては報告の曖昧な表現をやめるに一覧があります。
事実と感想が混ざると、全部が感想に見える
もう1つ、低く見られる原因になるのが、事実と自分の見立てが混ざることです。
たぶん先方は乗り気じゃないと思うので、この案件は厳しいかもしれません
この文には、確認できることが1つも入っていません。聞いた側は、確認から始めることになります。確認から始まる報告が続くと、報告そのものが信用されなくなります。
分け方は、「同じ場にいた別の人が見ても、同じ言葉になるか」で判別できます。詳しくは事実と解釈を分けるに整理しました。
道具に出しておけば、話す量が減る
話し方を直す前に、そもそも話す必要を減らせます。
共有の管理表、チャットの進捗チャンネル、課題の一覧。どれでも構いませんが、進み具合が誰でも見られる場所に出ていれば、口頭では差分だけを話せばよくなります。
- 出ていない場合:「何がどこまで進んだか」を毎回ゼロから説明する
- 出ている場合:「昨日から変わった点はここです」で済む
説明の量が減ると、経過から話す癖も出にくくなります。話し方の問題に見えていたものが、記録の問題だったということは珍しくありません。
まだ職場に共有の場が無いなら、自分の担当分だけでも始められます。チャットに自分用のスレッドを作り、1日1行、終わったことと詰まっていることを書く。それだけで、聞かれる回数が減ります。
周りの「アピール」がうざいと感じるとき
ここまでは自分の話し方でしたが、逆の悩みもあります。会議のたびに自分の苦労を長く話す人がいて、聞く時間を取られる、という状況です。
うざいと感じる理由は、たいてい内容ではなく時間の使われ方です。こちらの時間を使って行われるので、反応が起きます。内容が正しいかどうかは、あまり関係ありません。
そして、放っておくと実害も出ます。誰が何をどこまでやっているかが見えにくくなり、負荷の偏りが把握されないまま進みます。困っている人が困っていると分かるのが遅れます。
とはいえ、他人の話し方を変えることはできません。 できるのは、巻き込まれずに済ませることです。
| 状況 | できること |
|---|---|
| 会議で話が長い | 自分の分は先に記録に出しておき、口頭では読み上げない |
| 実績の見え方が偏る | 担当範囲と結果を、記録に残る形(議事録、管理表)に置く |
| 自分も競いたくなる | 競うのをやめて、事実を書く。書かれた記録のほうが後から効く |
| 負荷の偏りが放置される | 自分の稼働を数字で出す。「今週は4件並行」と書く |
記録に残る形で出しておくことが、いちばん角が立ちません。 口頭の場で張り合うと、聞いている人にはどちらも同じに見えます。書いたものは、後から読み返されます。
自分がそう見られていないか気になるとき
最後に、確かめ方を1つ。直近の報告を3つ思い出して、次を見てください。
- 最初の1文で、現在地が分かるか
- 相手に判断してほしいことが、はっきり書いてあるか
- 経過の説明が、全体の半分を超えていないか
3つとも満たしていれば、話し方の問題ではありません。満たしていない項目があれば、そこだけ直せば足ります。全部を変える必要はありません。
つまずきやすいところ
- 経過を話すのをやめてしまう。 必要な経過はあります。順番を変えるだけで、捨てるわけではありません。
- 短くしようとして、判断材料まで削る。 相手が聞き返す回数が増え、結局は長くなります。短さより、聞き返しの少なさを目安にしてください。
- 数字が出せない仕事だからと、曖昧なまま出す。 状態を表す言葉(確認待ち、着手済み、手順未定)で十分に具体的になります。
- 周りのアピールに対抗して、自分も長く話す。 聞いている人からは区別が付きません。記録に書いたほうが残ります。
- 1回で直そうとする。 順番を変えるのは癖の問題なので、次の報告1回から試すくらいでちょうどよいです。



